『マッハ!』を生んだタイアクションチームが怒涛の格闘アクションをみせるアクションコメディ作品。

タイに旅行にやってきたダン、マイク、ジョン、コナンのお気楽な4人組。
夜のタイの街を満喫し、羽目をはずして楽しんでいたが、さらに所持金を儲けようと闇カジノに入り、結果大敗して1000万バーツの借金を作ってしまう。

カジノの元締めであるタイマフィアのボスの前に連れ出され、借金のかたとして命を取られそうになるが、ジョンたちの弁明で、借金を返すまでに1週間の猶予を与えられる。

何とか借金を返そうとマイクはテコンドー道場の師範に、コナンは賭博プロレスラーの選手、ジョンとダンはストリップダンサー、さらにダンはスリをすることで金を作ろうとするのだが、とてもじゃないが1週間で返すのは不可能に近かった。

そこでマイクは大企業の社長令嬢を誘拐して多額の身代金を要求し、それを借金の返済にあてようと提案する。
命がかかっているジョンは即座にのり、何も分かっていないコナンも協力させられる。
ひとりダンは気乗りしない感じではあったが、スリだけでは足りない現状もあり、マイクの計画に加担することとなる。

街中で獲物を物色するマイクはボディーガードを引き連れて買い物をしている女性を見つける。
金持ちだとふんだマイクは彼女を誘拐することに決定。その彼女はタイでも有数の巨大企業の社長ドーソンの娘アイリーンであった。

早速4人はアイリーン誘拐のための準備を開始。その作戦とは屋敷内に睡眠ガスをまき、皆が寝落ちしている間に、連れ出すという大胆なものであった。
ガスの効果でドーソン以下皆が気絶しているうちに彼女を拉致することに成功。
しばらくして目が覚めたドーソンは彼女のボディガード二人をはじめとしてアイリーンを奪還するように叱責する。

一方、誘拐した4人ではあったが、勝ち気でワガママなアイリーンの行動に手を焼いていた。当初は目隠しをさせていたが、こうした犯罪においては素人丸出しな彼らはアイリーンにその顔を見せてしまったり、ドーソンとの身代金交渉で簡単に値下げに応じたりするなど間抜けさを露呈。
ドーソンは身代金の引き渡しの際に彼らを一網打尽にしようとアイリーンのボディガードであるレックとハンクを筆頭に大勢の部下たちをけしかける。

身代金引き渡しの現場にきたダンとマイクは多勢の敵に囲まれ、危機に陥るが、卓越した格闘術を駆使して何とか脱出に成功する。

留守をまかされていたジョンとコナンは帰ってきた二人から身代金は奪えず、受け取りの条件を守らなかったことでアイリーンを殺すとドーソンを脅迫するのだが、なんとドーソンはアイリーンを見捨てる発言をする。
さらにドーソンは近くにアイリーンがいることも知らず、彼女をどさくさに紛れて暗殺しようとしていたことを暴露する。

ドーソンの企みを知り、激昂して問い詰めようとするアイリーンだが、ドーソンは開き直り、密かに逃げる間際にダンにつけられていたGPSをもとにレックとハンクを待機させて、直属の暗殺者たちを彼らが隠れているアジトに襲撃させる。

奇襲を受け散り散りとなったメンバーたち。
ダンは暗殺者に追われバンコクの街を奔走。コナンは奮闘するも多勢に動きを封じられ、アイリーンはレックたちの目の前で強引に車の中に連れ去られていく。
マイクはアイリーンが命を狙われていることをレックたちに訴えるが空しくも捕まるのだった。

ひとり難を逃れていたジョンは皆を助けるため、フランス傭兵仲間に協力を依頼。アイリーンを助けた際の莫大な謝礼金をエサに協力を得ることに成功する。

一方、捕らえられたアイリーンはドーソンが資産の相続人である自分を始末することで莫大な相続資産を独占しようと企んでいたことを知る。
彼女から助けを求められていたレックとハンクはアイリーンがドーソンに命を狙われていることを仲間を拷問して聞き出すと、一緒に囚われていたコナンとマイクを檻から解放し、アイリーン救出に向かう。
そして暗殺者たちを返り討ちしたダンも彼らに合流し、アイリーンを救うため一致団結してドーソンのアジトへと乗り込んでいく。

屈強で腕のたつ暗殺者たちがひしめくなかで果たして彼らはアイリーンを救い出すことができるのか?
最後の戦いが幕を開ける…

アクション大国タイらしい破天荒スタントのハイレベルな格闘アクションが光るアクション作品。

『マッハ!』シリーズなどのヒットによって新しい格闘アクションの潮流を作り出したタイ映画界。まだまだ成熟しきっていない市場なだけにタイだけでなく広く世界各国からその実力を見せたいというアクションスターの卵たちがタイアクション映画にチャレンジしてきた。

本作の主演を務めるダニエル・オニールもこうした若手スタントマン出身のスターのひとり。
柔和なベビーフェイスと鍛えぬかれた鋼のような肉体美が印象的だが、過去にはジャッキー・チェンの『メダリオン』や『ダブル・ミッション』でも見事なスタントアクションを見せていた逸材で、本作においては格闘シーンの中心的役割となっている。

エクストリームマーシャルアーツにブレイクダンス的ムーブを取り入れた派手な格闘アクションを本作ではみせていて、マイク役の正統派テコンドー系のキッキングアクションとはまた違うファイトスタイルで魅せてくれている。

ストーリー的には誘拐した令嬢が実は被害者側から命を狙われてましたという変化球的な感じではあるものの、そこまで深掘りしていることはなく、基本アクションに味つけをする程度のもの。
途中中途半端な恋愛要素をみせたりと見せ方もブレブレなため、難しいことは考えずただ超人的なアクションを楽しむに徹した方が作品としては楽しめるだろう。

一応作品としては空気的にはコメディアクションを目指しているようではあるが、それに伴うキャラクター設定はまさにスタンダード過ぎていていて面白みにかける。
特に主役組の一人、コナンがマッチョな巨人という風体から分かりやすく頭まで筋肉なおバカキャラにされているのはスタンダード過ぎて面白くはない。
そのコメディ的なところもいわゆるタイのコメディはベタすぎるコントがいいのか、子ども向けな感じでセンス的なものには期待しない方がいいだろう。

反面アクションのレベルにおいては先のダニエル・オニールをはじめ、敵もマッハのスタントチームが中心なので、単に格闘シーンにしてもそのレベルは高い。
大男コナン役のコナン・スティーブンも元プロレスラーらしいパワフルな無双アクションでみせていて、ファイトスタイルの差別化がうまく機能している。

その上でハイライトとなるのは中盤におけるダニエル・オニールのバンコクの街中をパルクールアクションで疾走していくシーン。
繁雑な雑踏のなかを風のようにすり抜け、飛び越し、駆け抜けるオニールにはまさに『マッハ!』でのトニー・ジャーが見せた超絶アクションを彷彿させる。
その中で繰り広げられるタイスタントチーム出身のカズ・パトリックタンとのハイスピード格闘戦は要注目。

そして敵味方が入り乱れて戦う迫力のクライマックスでは、スコット・アドキンスとの戦いでも存在感を見せた、タイの最強の足技師ティム・マンとの一騎討ちが素晴らしい。
高所のコンテナの上で繰り広げる縦横無尽の蹴りあいは圧巻の仕上がり。

格闘アクションとしては文句無しの内容なのだが、反対にそこが終わってしまうとラストなんかは尻すぼみになってしまうためそこが惜しいところ。
ハイレベルな格闘アクションを披露したダニエル・オニールもその後活躍を聞かず、タイの破天荒アクションにも順応できるほどのポテンシャルだっただけに残念なところである。

ジージャーやトニー・ジャーだけではないハイレベルなタイアクション映画をみたいということであればオススメといえる作品である。


評価…★★★★
(アクションのレベルは間違いなく最高峰。ストーリーは考えなければ純粋に楽しめる(笑))









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