北ヨーロッパにあるフランクフルト動物園。
閉園後の動物たちの取材のために訪れた記者のローラは恋人で獣医のルパート、通称リップと共に迫力ある肉食動物の姿を撮ろうとカメラを向けるのだが、被写体であるトラはなぜか気がたっており、ローラたちを激しく威嚇する。
リップがなだめ、麻酔でトラを眠らせていくと
トラは痙攣するような行動をとり、眠ってしまう。
辺りはエサの時間であり、動物たちは水飲み場から大量の水をがぶ飲みしていた。

ローラを送ったリップはデートの約束をかわすのだが、彼女ははぐらかすようにその返事を返す。
そのローラにはシングルマザーで思春期の娘スージーがいるが、仕事と恋路に優先の彼女に対してスージーは反抗期真っ只中であり、彼女の頭を悩ませていた。

動物たちの異常行動が確認されたその夜。
市街地の道路上で車の中にいたカップルが大量のドブネズミに貪り食われ惨殺されるという時間が発生。
勤務が終わり家路についていたリップは事件を担当したウォルター警部に呼び出される。

事件現場についたリップはその凄惨な遺体の様子と大量に蠢いているドブネズミの群れに困惑。駆除隊が駆けつけ、火炎放射でネズミたちを焼き払う中、凶暴化した原因を探るため生き残ったネズミを捕獲し、調査のため研究施設へと送る。

その頃、動物園内では何者かの振動によって電気制御されている動物たちの檻に異常信号が発生。
夜勤の警備員たちが監視をしているとなんと壁と門を象が破壊し、脱走。
その象の破壊した壁が檻を制御している電気経路を破壊してしまい、猛獣たちが入っていた檻のロックが解除されてしまう。

状況確認のため夜勤の警備員たちは現場へと駆けつけるのだが、そこには檻の中から解き離れたトラやライオンたちが蠢いており、血に飢えた彼らは次々と警備員たちに襲いかかると彼らを惨殺し、その肉を喰らいつくす。

現場検証から動物園に戻ってきたリップは門が破壊され、メチャクチャになった動物園の姿をみて呆然とする。
そして園内で四肢を食いちぎられ死んでいる警備員、さらに事務所で爪のようなもので切り裂かれ絶命していた仲間をみ、危険な猛獣たちが園外へ脱走してしまったことを確信。急ぎウォルター警部に連絡をいれる。

たちまち署内で、緊急警備がしかれ、署内でなは脱走した動物たちの目撃情報でパニック状態となり始める
そんな中、脱走した動物たちによる被害も増え始め、明らかに殺戮の意思をもった猛獣たちによって街中では犠牲者が増え始めていた。

一方、先に街中へと脱走し、人々を殺戮、蹂躙してきた象の群れは空港に侵入。
滑走路へと入ってくると着陸体勢に入っていた航空機を妨害する。
不時着に失敗した航空機は滑走路を超えて発電施設に激突炎上。これにより街中の大半が大停電に見舞われてしまう。

ウォルターと行動を共にしたリップは重なる大惨事にひたすら脱走した動物たちの行方を追っていた。
リップはローラの無事を確認しようとするが、彼女は娘のスージーを迎えにいく途中の地下鉄で大停電にあい、車内で足止めをくらっていた。

ひたすら復旧をまつローラだったが、その暗闇の向こうで猛獣の唸り声が聞こえ始める。
やがて窓ガラスを叩き壊し、乗客の一人に大型のトラが襲いかかる。
たちまちパニックと化す車内。
将棋倒しになりながら別の窓ガラスを破って次々と車外へと逃げ出す乗客たち。
ローラも逃げ出すのだが、1人取り残された子どもを救うため戻ると、犠牲者の肉を平らげたトラが彼女たちを見つけ追いかけ始める。

地下鉄の足場の悪い線路上を必死で逃げるローラたち。
しかしついに追い詰められ万事休すと思われたときリップが駆けつけ、トラの捕獲に成功する。荒れ狂っていたトラはまるで別人のように大人しくなっていた。

ローラは娘を助けるためバレエ教室が行われている学校へリップらと共に向かう。
その中で動物たちが凶暴化した恐るべき原因が判明する。
実は街中の水道管の中に強力な麻薬物質が混入し、それが飲み水として入ってしまい水を飲んだ動物たちは麻薬の影響で凶暴化していたのだった。

停電が始まった同じ頃、スージーたちは他の生徒や先生たちと教室内で待機していたが、ここでも獣の咆哮が聞こえ始める。
皆が不安にくれるなか、遂にドアを破って大きなシロクマが教室内に乱入。
スージーたちは教室から逃げ出すが、逃げ遅れた先生がシロクマの犠牲になってしまう。
なおも追ってくるシロクマにスージーたちはナイフなどの刃物を携え、階段途中にある倉庫室に避難する。

学校にたどり着いたローラは娘を探しに校内へ。
辺りを探っていたリップは中庭で大人しくなっていたシロクマを発見して確保する。
新たに汚染された水道水を飲ませないことによって動物たちは麻薬の効果がなくなり、大人しくなっていた。

校内でスージーを探すローラはようやく避難していた部屋を突き止め、何とか再会を果たすのだが、そこには更なる悪夢が待ち構えていた…

80年代を席巻したアニマルパニックホラーの金字塔。

80年代、ホラージャンルとして一時代を築いた動物もの。普段自然界に何気なくいる生物たちが突如人類たちを襲い出すというシチュエーションはその設定のセンセーショナルさがウケて様々な動物たちが人間に対してその牙をむけた。

それはかわいいペットから、小さな昆虫たちに至るまで多くの作品を産み出している。

本作はそうした動物パニックホラーの総決算かといえるもので、トラやライオンといった有名どころからヒョウやチーター、クロヒョウなど肉食動物たちが大挙出演し、恐怖映像を盛り上げてくれている。

そして動物ホラーにはありがちな環境問題を風刺した作りだか、物語冒頭から何やら工業排水的な水が流れ、動物園の動物たちが喉をならせて水をがぶ飲みするところから、何となく薄気味悪さを感じさせる。

ここに登場している動物たちは当然CGのない時代なので全て本物であり、人間に襲いかかるトラやライオンなどの動きは全て専門の調教師による指導の賜物である。
慣れているとはいえ、襲われるシーンは本物の動物たちが覆い被さってくるため演者の方もその恐怖の表情にはリアリティが溢れている。

また残酷描写においてもCGではなく、普段のエサに内臓っぽいペーストをつけただけのチープなものだとは思うが、そのチープながらビビッドな鮮血の色など安そうが故にかえって気持ち悪さと怖さが増している。
前半のドブネズミの集団に食いちぎられた死体や脱走した猛獣たちによって食い殺される警備員たちのシーンなどは今見てもかなり戦慄なシーンである。

そしてこの80年代だからこそ許されていたシーンも多く、作品の冒頭に断り文句があるが、リアルに牛の頭をエサ用に真っ二つに割ったり、十歳くらいの幼女のセミヌードシーンがあったりと今ならば完全に放送不可能な場面があり、長らくソフトとしての復刻がなかったことも頷ける。

当時は筆者が幼少の頃にテレビのゴールデンタイムで鑑賞した記憶があったが、今見てもなかなかにエグい描写があり、今回動画配信で復活したのはある意味奇跡的といえる。
もちろんマニアならソフトも欲しいところだが、かなり希少なためまずは動画で当時の戦慄な内容を確認していただきたいところである。

残酷度…★★★★

評価…★★★★
(動物ホラーとしては残酷描写も社会風刺も利いていてなかなかの傑作か。)