ハリウッドでブレイクしたアクションスター、ジャッキー・チェンがアメリカナイズされたファミリー向け作品にチャレンジしたアクションコメディ。

三人の子供を育てるシングルマザー、ジリアンと恋仲である冴えないペンの販売人のボブ。
しかし彼の裏の顔はCIAが誇る凄腕のエージェントであった。
そんな彼はジリアンとの結婚を夢見て、危険なエージェント業からの引退を決意。
彼女とのディナーで自らの秘密を打ち明け、プロポーズしようとするが、そこでCIA本部からの連絡が入り、プロポーズはお預けとなってしまう。

CIAに駆けつけたボブにくだされた指令はロシアの国際テロリストボルダークの逮捕。
彼は小さな石油化学工場に侵入し、何かを企んでいた。同僚のコルトンたちと共に現場に駆けつけたボブは一人潜入し、格闘の末にボルダーク一味を逮捕することに成功する。
テロ行為を未然に防いだことで歓喜にわく司令部。上司であるクレイグは祖国中国に戻すにはもったいないとボブを讃えるのだが、ボブは今回の仕事を最後にエージェント業から引退すると仲間内に伝え、コルトンたちに惜しまれながらCIAをあとにする。

翌日。
デートが途中で終わったことの謝罪に隣のジリアンを訪ねたボブは、『もう困らせることは起きない』と彼女に告げ、プロポーズをする。
だがまだ自分がCIAのエージェントであったことは告白できずにいた。
折しも反抗期の長女ファレン、頭脳明晰だが嘘つきの問題児イアン、お転婆で暴れん坊な末娘ノーラのジリアンの子供たち三人は、冴えない風貌で地味なペンの販売員であるボブとの再婚に猛反対。
幸せになりたいジリアンの気持ちをよそに何とかボブとの結婚を諦めさせるよう画策する。

その頃、投獄されたはずのボルダークが護送車から逃亡。
隠れアジトに戻ってきた彼は何かの実験を始める。

ジリアンの子供たちの尊敬を勝ち取りたいボブは電波の悪いテレビアンテナの調整などを買ってでて屋根の上で作業をしていると、窓の上からファレンが友達と電話で話している所を聞いてしまう。
ファレンがボブを嫌う理由、それは実の父親が帰ってくることを信じているからであった。

それを聞いたボブは次の日、子供たちをピクニックに誘い仲良くなる計画をたてる。
弁当を手掛け、準備を進める最中にコルトンから電話がかかってくる。
コルトンはボブにボルダークが逃げ出したことを伝え、逮捕の際にアジトにあった彼らの極秘ファイルを送ったので、解析してほしいという依頼してくる。
更にコルトンはCIAに彼と内通しているものがいることも告げ、注意するように告げる。

ファイルを受け取ったボブは、暗号解読のためパソコンのなかにインストールしていくが、その時ジリアン達がボブを訪ねてくる。
実はジリアンの父親が腰を怪我して手術することとなりその看護をしなければならないため急遽病院へ行くこととなったのである。
ボブは子供たちと仲良くなるチャンスと思い、子供たちの世話をひきうけることにする。

ジリアンの話している間にファレンたちはボブの家の中を探索。するとイアンはボブのパソコンを発見。弄っていると『GBHファイル』という見たことのないファイルをみつけ、レアな音楽ファイルと思った彼は嬉々としてそのダウンロードを開始する。
しかし同じ頃、ボルダークは入手していた何者かがその極秘ファイルにアクセスしたことを発見。部下に命令してその相手を殺すよう指令を出す。

三人の子供たちとの共同生活を始めるボブ。
しかし勝手が違うのか、朝食を大失敗。仕方なくファレンとイアンを学校へ送り出す。
ボブのパソコンからファイルをダウンロードしたイアンはレアな音源だと悪友たちに自慢するが、雑音ばかりで何も聞こえず、彼らに嘘つき呼ばわりされいじめられてしまう。

一人残ったノーラはボブと一緒にハロウィン衣装の買い物へ。
しかし片時もじっとしていない彼女にボブは翻弄されついアクロバティックな動きで彼女を制してしまう。
そんな時ボブの携帯に学校から連絡が入る。
それはイアンが職員室に呼び出しをうけたという内容であった。

校長先生からイアンが嘘ばかりつき、問題行動を起こすことを注意されるボブ。悪びれもせず軽口をたたく彼にボブもじっと校長先生のいうことを聞くしかなかった。

家に戻った二人。ボブはイアンの部屋を訪れる。
イアンは独学で化学を勉強するなど頭脳明晰であったが、それなのに嘘ばかりついて迷惑をかける理由を聞き出す。
実はイアンは女の子にモテたかったのだが、学校でモテるのは運動のできるタイプの人間ばかり。そんなタイプに劣等感を抱いていたイアンは少しでも女の子の気を引こうと問題行動をとっていたのだった。

ボブは今後嘘をつかないなら呼び出しの件はジリアンに秘密にしておくともちかけ、彼の信用を得る。

想像以上に大変な子育てにボブはコルトンの力を借りて、エージェント時代のスパイ道具を使って家の中を改造して子供たちの世話をコントロールする。
そんな中、長女のファレンは戦いを挑んできたとして反対にボブにいたずらをかけるなど反抗するのだが、そんな状況を子供たちは次第に楽しく思い始めてくる。

そんなある夜。屋根の上にいたファレンを見かけたボブはとなりに座り、ジリアンをママと呼ばない理由を問いかける。
実はジリアンは実の父の再婚相手であり、実の母はずっと前に亡くなっていることを打ち明ける。そして血は繋がっていない弟たちとも違和感を感じており、そんな疎外感から唯一屋根の上のこの場所が落ち着ける場所だと言う。
孤児であったボブはその気持ちを尊重し、安全のため過ごしやすいように手摺をつくってあげるとファレンに伝えると彼女もボブに対し気を許し始めるのだった。

その頃、ボルダークはファイルをダウンロードした場所がボブの家であったことを特定する。部下のタチアナらを派遣してデータを探すが見つからず、すると隣の家にいるボブを発見。ボブはノーラを守りながら戦い抜き、何とかその場から逃げることに成功する。

逃げる途中で下校中のファレンとイアンを乗り込ませ、ボブはCIAに助けを求める。
途中、腹ごしらえのため鉄板焼きレストランへ立ちよったボブたち。
ファレンはそこで話しかけられた大学生のラリーに気を引かれるが、実はこの男、ボルダークの部下のひとりで、正体を見破ったボブに襲いかかる。
ボブは落ち着いてこれを撃退するのだが、度重なる得たい知れない人間からの襲撃に業を煮やしたファレンたちはボブに何者かを問い詰める。

意を決したボブは、自分がCIAのエージェントであると説明するが、突拍子のない話に子供たちは信じようとしなかった。
しかし遅れてきたボブの上司であるクレイグがボブに銃を突きつけ、ファイルを渡せと迫る。
CIAの内通者はクレイグであった。
隙をついてボブはクレイグを殴り付けて気絶させるとその場を脱出。
自分の位置が分かったのが、クレイグからもらった腕時計だったことに気づいたボブは、岩山地帯にそれを捨てると郊外のホテルに泊まり、子供たちに詳細を話し始める。

その夜、ボブは父親の看護をしているジリアンに電話をし、プロポーズに言いそびれた自分の本当の正体、そして自分のせいで子供たちに危険な目に遭わせたことを告白する。
ジリアンが急ぎこちらに向かう間に、ボブはファレンと話をする。
ボブは家族のためにジリアンから身を引く決意を固めていた。
ファレンはそんなボブを励まそうとこんな迷惑な家族なら結婚しない方がマシだというのだが、ボブは孤児院育ちで両親がいないことを彼女に打ち明け、孤児院仲間がまるで兄弟のようだったと付け加え、血の繋がりよりも愛が家族の絆となるのだと語りかける。

翌朝、ボブのもとにたどり着いたジリアンは子供たちを危険な目に遭わせたボブに平手打ちし、子供たちを引き取る。
ファレンたちはボブとの別れを惜しむのだが、ジリアンにとっては何よりも嘘をつかれていたことが許せなかったのだった。

家に戻ったジリアン一家であったが、実はエージェントだったというボブに憧れるイアンは、彼のもとにいくために家出をし、屋根の上でファレンはその姿をみかける。

一方、ボブは敵との対決のため追跡装置のある腕時計を廃工場に持ってきて隠れていたが、そこにイアンの姿が。
慌てたボブはイアンと逃げようとするが、ボルダークたちに囲まれてしまう。
イアンがボブの位置を知り得たのは密かに彼に追跡装置を仕掛けていたからであった。
さらにイアンを追いかけてきたファレンまでも捕まり絶体絶命の危機に。
ボブはボルダークたちの狙いを聞きだすのだが、彼の目的は世界中の石油を特殊バクテリアによって壊滅状態にし、ロシアの石油のみを利用するように画策していた。
そしてクレイグによってコルトンは内通者ではないことも判明する。

GBHのファイルについて聞かれたボブたちだあったが、その言葉に反応したイアンは自分がダウンロードしてiPodに入れてしまったと話してしまう。
タチアナたちを向かわせるボルダーク。
その隙を狙い、ボブはスパイ道具で縛られた縄を断ち切ると反撃し、急ぎジリアン電話を掛ける。

訳も分からぬままとにかく戦いの準備をさせられるジリアン。するとそこへタチアナたちが到着し、ジリアンの家をあらし始める。
同じ頃にたどりついボブは遭遇したボルダークの部下たちとキッチンなどで対決。ジリアンたちの助けもあってこれを撃退するのだが、そうこうしているうちにボルダークらもジリアンのところへやってくる。

度重なる危機が迫るなか、絆の深まったボブは果たしてボルダークを再逮捕できるのか…



ジャッキー・チェンがハリウッド資本をうけて、挑んだファミリー向けのスパイアクション作品。

『ラッシュアワー』のヒットによって遂にハリウッドでもその一目置かれるようになったジャッキー・チェン。やがてハリウッドアクション界はそんな彼をほっておくわけがなく、至って暴力的なスタローンやシュワルツェネッガー作品群とは違い、余り血が出ないこともあって血生臭く残虐性の高いアクションのない作品群のオファーが相次いでいた。

ジャッキー自身もいつかファミリー揃って楽しめるアクション映画を作りたいという目的があったのだが、この両サイドの思惑が一致し、製作されたのが本作である。

そんな本作はジャッキーがハリウッドに出演してから30周年の記念碑作品ということで、これまでの作品のオマージュも込めたものとなっている。
冒頭における過去のジャッキー作品の名場面集はその設定のもと編集された作りである。

全体的なストーリーとしては敏腕エージェントが正体を隠しながら、子育てに奮闘するというファミリーコメディものの王道的な感じ。
ハリウッドのコメディテイストが満載で、子供向けへの配慮のためか極端な暴力描写はなく、露骨な格闘シーンの凄みもない。

ジャッキーの格闘センスそのもののアクションというよりはスラプスティックな笑いのアクションがメインで、まるでトム&ジェリーのような物を使った間接的なダメージのアクションシーンがほとんど。
そのため技云々よりも、リアクションが重要視されていて、とにかくジャッキーも敵方もダメージを食らうと目を丸くして白黒させながら倒れるというアメリカンコメディのお手本のようなリアクションをみせる。

かつてジャッキーが尊敬する俳優のひとりにバスター・キートンを挙げていたが、彼の作品でみせるコメディアクションがまさに現代におけるジャッキーのアクションに結び付いていて、本作はまさにその継承したかのような感じである。

残念ながらハリウッドの規制によってジャッキーのアクションの売りのひとつである『デスウィッシュスタント』は鳴りを潜めてしまっているが、香港時代でもみせていた小気味いい小道具アクションがまだまだ本作では健在であることは嬉しいところ。

加えて微妙な父性をみせるジャッキーの演技にも注目したいところで、やんちゃな子供たちにみせる父親の顔はこれまでになかったジャッキーの新たな魅力といっていいだろう。

アクション自体は全体的にライトで注目すべき対決もないのだが、主軸はジャッキーがハリウッドの王道コメディでみせる陽性の魅力なので、あくまで格闘シーンはコメディシーンの延長上にあるものと解釈した方がいいだろう。
ある意味肩の力が抜けたジャッキーのコメディセンスで勝負した作品なので、格闘アクション目当てだと少し物足りなさを感じるかもしれない。


この頃は既に還暦を間近に控え、これまでのアクションレベルにも陰りが見え始めていた頃。ジャッキーがハリウッドで生き抜くためにアクション以外でのチャレンジの様子が垣間見えるようで、だからこそこうしたアニバーサリー的な企画がまいこんでくるのだろう。


評価…★★★
(悪ガキたちとの微笑ましいやり取りのなかでみせるコメディアクション。家族向けだから敵もそんな怖くないですよね(^^;)