富士山麓の樹海付近に煙をあげて迷走していたUFOが墜落。異常な磁気をともなった衝撃波が樹海全体に走っていった。

陸上自衛官のユリを含む自衛隊小隊は富士の樹海で行方不明となった人々の捜索と死体の搬送の任務についていた。
途中首をつった女性の自殺体を見つけ、確保する時に例の衝撃波が駆け抜ける。
すると腐乱していた死体が動き出し、隊員の喉に噛みつき食い千切って殺害。死体は大矢隊長の命令で銃撃され動きを止めるが、想定外の出来事に隊に不穏な空気が漂い始める。
一行は隊員らの死体を一時的に置くことのできる場所を求めて道なき道を進む。

別の場所ではヤクザ同士の小競り合いから相手の射殺。チンピラのヒロシはその死体の処理を任されるが例の衝撃波のあとにその死体が起き上がり兄貴に襲いかかる。ヒロシは拳銃を手に助けようとするが、彼らがこれまでに埋めたという所から次々死体が起き上がり、兄貴は彼らに囲まれて食い殺されてしまう。
ヒロシはそのようすにビビりながらも必死でその場から逃げ出すのだった。

別の場所ではグラビアアイドルのひとみと写真集の撮影隊クルーが樹海の森内で撮影をしていた。ワガママ放題のひとみのご機嫌をとりつつ撮影を進めていると後方からフラフラと向かってくる者が。撮影の邪魔になると立ち退くように迫るがその瞬間プロデューサーは喉を食い千切られる。それを合図するかのように辺りから死体の群れが現れ、クルーに襲いかかる。ひとみはメイクやカメラマンを盾にして彼らが餌食となっている隙にその場を逃げ出す。
さまよった先で彼女は同じく逃げてきたヒロシと合流する。

山麓付近にあるペンション。
脱サラしてペンション経営するヤマダの所に不倫相手の女が詰め寄ってきていた。
ヤマダとの子どもを身ごもっている女は、奥さんと別れないと不倫の証拠を全て会社に持って公開させると脅していた。
揉み合いになるなかで偶然にも女は足を滑らせ、テーブルの角に後頭部を打ち付けて死亡する。
ヤマダは女の死体を隠そうと適当な場所を探るが、いつの間にか女の死体は復活し、ヤマダに襲いかかる。
猟銃を持っていた彼は女の頭を撃ち、女の動きは止まる。

ゾンビたちに追われたヒロシとひとみは森の中を行軍するユリたち自衛隊を見つけると事の次第を話し、合流することに。
しかしこの頃からユリには妙な悪夢がフラッシュバックし始める。
やがて隊列は麓にあるヤマダのペンションを発見する。
自衛隊がこちらに向かってくるのを見つけたヤマダは急ぎ浮気相手の死体を台所に隠して彼らを何とか泊まらないように訴えるが、強引に居座られてしまうことに。

運んできた遺体の置き場を探すユリたちはそこで台所で動かなくなっているヤマダの浮気相手を発見。するとにわかに彼女の腹が膨れ始めると臓物を飛び散らかせながら赤ん坊のゾンビが出てきて暴れだすと、ヤマダの両目をかじりとってしまうのだった。

素早い赤ん坊ゾンビの駆除に躍起になっている頃、ペンションの周りにはいつしか彼らを追ってきたゾンビの群れに囲まれていた。
ゾンビ化したヤマダや再び生き返った彼の浮気相手が暴れるなか、ひとみを守ろうとしたヒロシは赤ん坊ゾンビに腕をかじられてしまうが、ようやく赤ん坊ゾンビを捕獲し、ヤマダたちもろとも拘束することに成功する。

しかしそんな中、状況はさらに悪化しペンションの周りには数十人に上るゾンビの群れが生き残ったユリたちを餌食にしようと集まり、ガラスの窓の防御も限界に近づきつつあった。
大矢隊長含む三人は応援を呼ぶためペンションの庭先にある車に乗り込む突入作戦を遂行。
だが、ゾンビの猛攻に耐えきれず車に乗り込んだ早川はゾンビに捕まり、彼の誤射によって隊長が死亡。早川はゾンビに八つ裂きにされながら頻繁に起こっているユリの悪夢の秘密を激白する。

実はユリは政府が対戦争用として極秘開発されたサイボーグ、通称『サイバー自衛官』であった。奥歯のスイッチを噛むことでその超人的パワーが覚醒し、超人化するのである。
断末魔の早川の言葉を受けて覚醒したユリは屋内に避難。
するとそこにはゾンビ化したヒロシと彼とひとみをかけて争った彼女のファンの自衛官仲間がやはりゾンビ化し、ひとみの両足をかじっていた。
瀕死で助けを求めるひとみの首を一閃して切り落とすと押し掛けてきたゾンビたちをもそのパワーで瞬殺していく。

あらかたペンションを囲んでいたゾンビたちを倒したユリであったが、遺体を甦らせた衝撃波は樹海の奥深くの洞穴に眠る旧日本軍の将校の怨霊までも甦らせてしまっていた。
憤怒の形相で山をかけ降り、ユリのもとへとやってくる将校。

そしてユリも強大な力を感じ、途中で遭遇した宇宙人をバッサリと斬り捨てながら将校のもとへと駆けつける。
ついに対峙した二人。
強大な怨霊のパワーを使ってユリをたちまち劣勢に追い込む将校。
果たしてユリは彼を倒してゾンビ化した富士の樹海から脱出することができるのか……


ゾンビ映画のオマージュに溢れた低予算アクションホラー作品。

ハリウッドに限らず全世界で人気のジャンルであるゾンビ映画。
日本でもジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』のカルト的なヒットにより、低予算ながらもそのジャンル作品は製作されてきた。

心理的恐怖を得意とするホラーが席巻する邦画界においては、ゴリゴリのスプラッターホラーといわれる作品は意外に多くはないが、非常にコアなファンが多い。
本作の監督である友松直之は青春ゾンビホラー『STACY』を製作し、日本のゾンビ映画ファンのなかでは結構知られた存在である。

そんな彼がロメロ作品へのオマージュとして作り上げたのが本作である。
とはいえストーリーとしては早い段階で破綻していて、その仕上がり的にはまさに監督の脳内メーカーをみせられているかのよう。
要するに監督がロメロ作品の名シーンを再現してみたかったという節が強く、全体的なストーリー展開においては綿密なロメロ作品には遠く及ばない(笑)

またゾンビの赤ちゃんが暴れまくるくだりでは当初話題となっていたポール・ジャクソン監督の『ブレインデッド』のシークエンスも活用していて、とにかくごった煮でいろんなゾンビ作品の名シーンを注ぎ込んだ感じといえる。

そしてクライマックスでは突然のソードアクションに変わり、この中二病的感覚を貫いた作りは完成度云々は別にして評価したいところ。

何気に残酷描写は拘っていて、首チョンパはもちろんのことロメロ作品『死霊のえじき』でのハイライトとなったローズ大尉が上半身と下半身を真っ二つにされ貪り食われるシーンも完全再現。ゾンビのメイクこそ多少チープなところもあるが、喉笛を噛み千切ったり、爆裂して飛び出す臓物などは低予算とはいえ合格点をあげてもいいくらいの出来である。

個性的な出演陣では凛とした美しさの渡瀬未遊をはじめ、元プロレスラーの大矢剛功など演技はともかく印象的。
なかでも当時セクシー女優だった女優のみひろがあざといグラドルを演じて、パンチラ上等のアングルからとかく性悪女を好演。
他作品と比べるとエロ度は少なめではあるが、本作のなかで一番輝いていたかもしれない。

そもそも出回ってる所も少ないくらいのレア作品ではあるが、地雷好きやとにかくZ級のゾンビものも制覇しておきたいという人には結構はまるかもしれない作品。
万人におすすめこそしないが、マニアであればおさえておきたくなる代物である。

残酷度…★★★★

評価…★★★
(支離滅裂な物語はさておき、とにかくゾンビ映画好きならトリビア的に楽しめるかも)