次世代アクションスターのドラゴン・チェンがワンマン製作したクライムアクション作品。

元特殊部隊兵出身の警備員ハンは、敏腕の警備員として有名な存在であったが、各国VIPが集う博覧会会場で要人をテロリストの襲撃で殺され、自らも被弾して重傷をおってしまう。
ハンはこの仕事を最後に妻と息子と共にアフリカへの旅行を計画していた。

数日の昏睡状態から目覚めた彼の耳に届いたのは先にアフリカに旅立った家族が旅先で行方不明になったという航空会社からの知らせであった。

その頃アフリカでは世界の情勢すら揺るがすレアメタル鉱石が発見される。
その発掘特権の申請で二人の研究員たちはアフリカ東部の都市に向けて車を走らせていた。
しかし、その情報はたちまち闇社会の広がるとことなり、二人を追って世界のテロリストや砂漠を暗躍するギャングたちがその行方を追い狙い始める。

テロリスト傭兵部隊のリーダー、ショーンが率いる一団も二人を探して砂漠を巡っており、情報を得るためポツンとあるガソリンスタンドを襲う。

その頃行方不明となった妻と息子を探しにアフリカを旅していたハンは偶然にも立ち寄った友人のガソリンスタンドでショーンたちテロリスト集団に遭遇。否応なしに二人の研究員を探すように脅迫される。
友人を人質に取られたハンは渋々探索を開始する。

一方で砂漠地帯を牛耳るマフィアのボスは彼らの拉致を部下たちに命じる。
砂漠地帯の至るところに監視カメラを設置していた彼は途中で車のトラブルにあい立ち往生している二人を発見し、誘拐することで多額の身代金を得ようと画策していたのだった。
立ち往生している研究員は女性研究員を残して、冷却水の確保にオアシスを探しに行っていた。
そこにボスの命を受けた部下たちがやってきて残っていた女性を拉致しようとする。
しかしそれを観察していたハンは奇襲して彼女を助け、自身の車に乗せる。

彼女はハンと生き別れた妻にそっくりであった。思わず助けてしまったハンであったが、彼女の名前はレンと言い、全くの別人であった。
そうと気づき、車から降りるよういい放つハンであったが、直後に彼女はショーンたちの部下に連れ去られてしまう。

予期せぬことで巻き込まれてしまったハンは呵責から再度彼女を救いだそうとする。

ショーンたちはレンを連れ、砂漠地帯のマフィアのボスを強襲し、これを制圧。レンは屋敷の奥の部屋に監禁されてしまう。

彼女が連れ去られた時にGPSを忍ばせていたハンはその情報から彼女の監禁位置を特定すると潜入。見張り番を瞬殺するとカメラの位置を密かに変えたマフィアのボスの間接的な手助けもあって彼女の救出に成功する。

だが程なくしてショーンに気づかれ、追われる二人。
ボスは傭兵軍団が一枚岩でないことを感づき、その買収を仕掛けようと画策する。

レンたちが追われる理由をきいたハンは、はぐれた仲間の研究員をレンと共に探すのだが、途中でショーンに追い付かれてしまう。
奮闘するハンだったが、力及ばず二人は捕まりアジトへと連れ戻されるのだった。

テロリストたちを操り、レアメタル鉱石を狙っていたのはヤマモトという闇実業家であったが、彼は半年前に博覧会で宝石を強奪した犯人であり、銃撃をして自身に重傷を負わせた張本人であった。
ヤマモトの命令でハンを痛めつけるショーン。
しかしショーンたちは鉱石の価値に気づき、ヤマモトを裏切って殺害。彼の部下を仲間に率いれ、レンに鉱石の在処を喋るように迫る。

ショーンたちが裏切っている最中、ハンはその混乱に乗じて反撃を開始。
ショーンたちの部下を次々と倒していく。
更にマフィアの勢力にレンと共に向かっていた仲間が集まり、激しい銃撃戦が展開される。

鉱石をハンの車の中に隠していたレンは、同士討ちと仲間が銃撃のなかで倒れていくなかで、ハンと共に脱出。
都市を目指して車を走らせるのだが、生き残ったショーンたちが行く手を阻むのだった。

ハンはレンを先に街へと向かわせ、自らはテロリストと決着をつけるため単身、彼らに挑む。
果たしてハンの運命は…

新たな中華系アクションスター、ドラゴン・チェンプロデュースによるアクション作品。

ブルース・リーが逝去してからもうすぐ60年。アジアではいまだにブルース・リーの後継者と名乗る新進系のアクションスターが生まれている。
本作で主演を務めるドラゴン・チェンもそのひとりである。

かつて2000年代にファンに総スカンをくらった偽物ブルース・リー、石天龍(セキ・テンリュウ)がいたが、今回紹介するドラゴン・チェンもまたジークンドーをマスターといわれている逸材。

本国ではそれなりに名前は知られているようで、それこそリーの継承者らしく、リーの『ドラゴン怒りの鉄拳』や『死亡遊戯』をリブートさせた風の作品をだしているようであるが、その面構え的にはとてもリーに似ているとは言い難く、どちらかというとお笑いの『ずん』の飯尾和樹をシリアス風にした感じである。

本作のストーリーとしてはレアメタル鉱石をめぐって主人公たちとテロリストが捕まって、逃げて、戦ってをひたすら繰り返す単調な感じ。
共同監督を務め、脚本や製作などもワンマンで手掛けたドラゴン・チェンがニヒルに活躍する姿を描きたかったらしいが、単調な一騎討ちアクションの連続で正直胸焼けするくらい。

アクション自体は売りにするだけあって、それなりのレベルであるが、クライマックスの敵ボスとの一騎討ちでみせる、回転スピンキックとかのアクロバティックな技は本人でなく、カメラの構図アングルからしてスタントマンを使っている様である。

砂漠での格闘戦はなかなかアイデアとして面白いが、敵も味方もキャラ立ちがしっかりしていないボンヤリさが作品全体の無法な雰囲気に拍車をかけてしまっているあたり、色々と惜しい作品である。

評価…★★★
(砂漠でGジャンの飯尾…もといドラゴン・チェン。彼は偽物から羽ばたける日がくるのか)