ジャッキー・チェンの後継世代によるジャッキー作品を意識したクライムアクション作品。

香港の繁華街で現金輸送車を襲った強盗事件が発生。犯人グループは爆弾を使って輸送車を爆破し、現金1億USドルを奪って逃走した。
爆弾の影響により多数の死傷者が発生し、結婚を控えていたチャン刑事の婚約者は結婚指輪を探している最中に事件に遭遇し、爆弾によってその命を奪われてしまう。

それから半年。
恋人を失ったチャン刑事は未だその喪失感から回復しておらず、命知らずな違法スレスレの捜査は警察内外でも問題となるほどであった。

一方、武闘派で知られるフォン警部補はヤクザの幹部を相手に大立ち回りし、逮捕する。
彼のチームはそんなフォンを尊敬すると同時に畏怖もしていた。

街の巡査であるワイは心優しき青年で、母親と二人暮らし。警察の正義を信じ、日夜市民の安全を守るため異臭漂うホームレスも救う模範的警察官であった。

そんなある日、チャンは上司である叔父の麻薬取締捜査に同行していた。
標的は大規模な麻薬の取引を計画している元締めのタイガー。しかし彼は潜伏していた捜査官の姿に気付き、逃走を図る。
その姿にいち早く気づいたチャンは危険をものともせず追跡し、タクシーに乗り込んだところで揉み合いの末に何とか逮捕する。

その夜、パトロールをしていたフォン警部補のチームは不審な黒づくめの車を発見し、職務質問をかけるが中から男が飛び出し、フォンの部下を刺すと凄まじい速さで面々を薙ぎ倒していく。異変に気づいたフォンが駆けつけるが、その男は圧倒的な格闘術でフォンを倒すと、フォンは彼に自分の銃の弾丸を飲まされてしまう。
フォンが引き止めた一団は半年前に現金輸送車を襲った強盗団であり、自分達を警察に売り、盗んだ現金をネコババした裏切り者に復讐するために戻ってきたのだった。

自分の銃の弾丸を飲まされるという屈辱を受けたフォンは犯人グループへの逮捕の執念を露にし、捜査を進める。

タイガーを逮捕したチャンたちは彼のアジトへと入り、麻薬の隠し場所を捜査し始める。
かくして隠し部屋から大量の麻薬と現金を見つけるのだが、その時フォン達を襲った4人組がタイガーのもとに現れる。
チャン達がいるのも構わず、タイガーを尋問し武器と金のありかを聞きだそうとするリーダーのヨンサン。爆発物を持ち出した彼らに対し、チャンは半年前の爆弾事件の記憶がよみがえってきていた。
尋問しているヨンサンに怒りを込めて聞きだそうとするチャン。その瞬間タイガーは逃げ出し、チャンはヨンサンに蹴られて吹き飛ばされる。

逃げるタイガーをおうヨンサン、そして恋人の仇を見つけたチャンはヨンサンを追走していく。壮絶な追走劇を繰り広げるのだか、追ってきたチャンをヨンサンは迎撃して高所から墜落させる。痛みとダメージで身動きがとれなくなった彼の目の前でタイガーを捕まえたヨンサンは見せしめのように殺害し消えるのだった。

ヨンサンらによる事件が発生するなか、ワイ巡査は警察署長であるローに呼び出される。
ローによるとワイの兄であるタツが犯人グループに関わっているというのだった。
タツは以前から潜入捜査官としてヨンサンらのグループに潜伏していたのだが、行方不明になっていた。
兄を尊敬するワイは彼の帰還を母と一緒に待ち、彼の消息を知るため兄と同じ警察官への道を選んでいた。
兄の潔白を証明するため独自に捜査を始めるワイであったが、そんな情報を手に入れたチャンとフォンがワイに接触してくる。

詰め寄ってくる二人に頑なに兄の無実を訴えるワイ。ワイはヨンサンたちの情報を仕入れるため裏社会に詳しい情報屋のいるクラブを訪ねるのだが、そこで挑発にあい、乱闘に巻き込まれる。なし崩し的にチャンとフォンも巻き込まれ挑発してきたボス格をしめあげるも、三人は傷だらけでワイの家に戻る。

ワイの無実を確信した二人は、共同戦線をはりヨンサンの行方を追う。
情報筋から強盗事件の際に居合わせていた元警備員のホーをヨンサンらが追っていることを知った三人は彼が密かに隠れているとされる精神病院へと向かう。
ホーは事件以来精神に異常をきたしたとして入院していたが、実はヨンサンらから身を守るためのフェイクであった。

三人が病院を訪れホーから話を聞こうとするのだが、既に彼はヨンサンから脅されており、三人の尋問から脱出をはかろうとする。
居合わせたヨンサンの車に乗り込み逃亡を図るホー。彼もまたヨンサンを裏切った人間として狙われており、ヨンサンは家族の命と引き換えに奪われた金の在処を聞きだそうとしていた。
しかし決死の追跡でフォンらにホーは捕まる。

ヨンサンは代わりに一人はぐれていたワイを人質にとり、二人に廃墟後にホーをつれてくるように脅す。
ヨンサンの要求を受け入れた二人は指示された廃墟にホーを連れてくると、そこには十数人の園児を乗せたスクールバスに園児たちと共にワイが繋がれていた。

ホーから裏切った仲間を聞いたヨンサンはホーを銃殺。
そしてチャンとフォンにワイと園児たちの人質の解放を条件に待ち合わせ先で盗まれた金を奪ってくるよう命じる。

バスの中に繋がれているワイ。ヨンサンの仲間であるヨンイーはそんな彼に兄のタツことを語り始める。
潜入捜査官であることがバレた彼を殺害したのは自分であること、そしてそんなタツの実直すぎる性格が好きでヨンイーは陰ながら友情を感じていたことを話すヨンイー。
兄の死に動揺と怒りをにじませるワイだったが、そんなヨンイーにワイは僅かながら正義に揺れ動く心を感じ始めていた。

その頃チャンとフォンは遊園地のメリーゴーランド前にやってくると、そこには彼らの先輩であるワンがやってくる。
警察関係がヨンサンらに関わっていることに気づいた二人にワンは地下のボイラー室まで連れていくと銃口を向ける。
しかしいち早く気づいていた二人は逆に返り討ちにする。

彼の残した携帯電話の履歴からこの指示を下した真の黒幕が警察上層部であることを推察したチャンたち。その返信先で出てきたのは他でもない警察署長のローであった。
しかしローの指示で包囲された二人は警察に逮捕されてしまう。

ヨンサンはその様子を見、ローへの復讐のため行動を開始。
ワイを乗せたバスには時限爆弾がヨンイーによって仕掛けられる。
ヨンイーに訴えかけるワイだが、置き去りにされる。必死で脱出を試みるワイであったが無情にもタイムリミットは過ぎてしまう。
が、爆発はせずワイと園児たちは命ながら得るのだった。
それは、ワイのタツを思う気持ちに正義の心を感じたヨンイーの良心であった。

夜になり取り調べを受ける二人はヨンサンたちが襲ってくることを必死で訴えるのだが、ローの指示のもと誰もそれを信用しようとはしない。
しかし既にヨンサンらは警察官に変装しローを
狙って暗躍し始めていた。次々と起こる爆発と銃撃の前に倒れていく警官たち。
ローを見つけたヨンサンらは逃亡を図る彼を捕まえると隠し場所へと案内させるが、そこにローの同士である警視正が通りがかり、ローを呼び止める。

彼はチャンたちの訴えとフォンの部下が持ってきた証拠により、ローが1億ドルを横領していたことを知っていた。
ヨンサンは彼を銃撃して負傷させると、逃げたローを追う。

一方でヨンサンたちの凶行を止めるため、チャンとフォンはヨンサンを追うが、そこに彼の部下たちが立ちはだかる。
そしてワイもバスで警察署に駆けつけるとヨンイーと鉢合わせ戦うことに。

部下を倒したチャンたちは奪った金を目の前で燃やし、ヨンサンを挑発。
そして燃え盛る金に動揺するヨンイーとワイは揉み合いながら警察に包囲される。
そして説得を試みたワイは誤って狙撃されてしまう。
それでも警察の正義とヨンイーの説得を諦めないワイにヨンイーは覚悟をきめ、自ら自決して果てる。

その頃怒りに震えるヨンサンの鬼神のごとき強さにチャンとフォンは苦戦を強いられていた。
まさに命が奪われかけるその時、ワイがヨンサンに決死の突撃をかける。
最凶の敵を相手に三人は果たして正義を貫き、黒幕を倒すことができるのか…

香港アクション界を担う次世代若手アクションスターたちが挑んだハードなクライムアクション作品。

2000年代になり香港が中国に返還されたことでその当時第一線で活躍していたジャッキー・チェンらはハリウッドへ進出。
香港アクション界は人材流出の危機にあったという。
そしてハリウッドに進出していったジャッキー自身も自分が抜けた後のアクション界を危惧し、自身の後継となるアクションスターの発掘と育成に躍起になっていた。

そのなかで取りざたされたのが『ジェネックス世代』の呼ばれる次世代スターたちである。
これはジャッキー自身が製作も手掛けた『ジェネックス・コップ』のヒットにともない注目された若手スターたちで、ジャッキー自身も育成に加わったことから『次世代ジャッキー』の呼び声が高まった。

本作はその世代俳優たちによるジャッキーレベルのアクションへの挑戦ともいうべき作品である。

本作品の主演を務めたのは、ジェネックス世代の中心人物でリーダー的存在のニコラス・ツェー。そして同時期にアクションスターへの開眼を始めていたショーン・ユー、さらに文字通りジャッキーの次世代となる実子、ジェイシー・チャンの三人。
誰が突出というわけではなく、三人ほぼ公平に振り分けられているところにジャッキーの大きさを感じさせるところがある。

彼らに対抗する敵役にも、アンディ・オンやウー・ジンといった若手実力アクションスターを迎え、その世代のポテンシャルの推移を集めたまさに肝いりの作品となった。

ストーリーとしてはアクション重視を意識してか、シンプルで主人公それぞれに敵に対しての戦う理由をもち、それを軸に展開。
中でもジェイシーのパートはストーリー的にも比重が重くされており、敵方アンディ・オンとの敵対同士でありながらも友情すら芽生えさせるという複雑な人間模様を織り込んでいて、この辺りアクションでもドラマ演出に力を入れる監督ベニー・チャンの本領発揮といったところ。

そしてアクション面においては破天荒なジャッキーのアクションレベルを超えることを目標としているだけに、ハイレベルな格闘と危険すぎるスタントの目白押し。
通常は歌手として活動しているジャッキーの実子、ジェイシーも親譲りの切れ味鋭い格闘アクションをみせ、クラブでの乱闘シーンでは高所からの落下や鮮やかな回転蹴りなどその格闘イズムを見せてくれている。

主役三人のなかでもやはりアクションレベルにおいてはニコラス・ツェーが群を抜いているが、そんな彼をさらに凌駕し強烈なインパクトを与えているのが実質のラスボスとなるウー・ジンである。
武術大会4連覇の偉業をもつ彼はいわばジェット・リーの方の後継者だろうか。
アンディ・オンも霞むほどの切れ味とテクニックをみせ、温和な表情が狂気に歪んでいく冷酷非情のテロリストの姿は、三人がかりでもなかなか止められないほど。香港アクション史上に残る最凶悪役のひとりといっても過言ではないだろう。

キャラクター的に香港の刑事といえば一人暴走して強引に敵を打倒するものがテンプレートでもあるが、そのなかで品行方正真面目なジェイシー・チャン演じるワイが結果としては一番美味しい。
クライマックスでのジェイシーの演技には要注目である。

ジャッキーを超えようとあえての彼の代表作シリーズに挑んだ本作。
その莫大なスケール、危険なスタント、ハイレベルな格闘シーンなど本家に勝るとも劣らない所は数多くあるも、それだけにかえってジャッキー・チェンの偉大さスゴさが見え隠れしてしまう弊害も感じられる。

次世代の人材の豊富さは十分ではあるが、それが先駆者ジャッキーを越えられるのか?実子も含めてそのジェネックス世代の意気込みを感じさせる、香港の新世代アクション作品の金字塔ともいうべき作品といえるだろう

評価…★★★★
(若手のジェイシーが美味しいとこをみせるが、残るのは狂気の表情のウー・ジンの姿か)


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