ジャッキー・チェンの代表作シリーズとなるアクション作品ナンバリング最新作。

2007年香港。
国際捜査官のリンは白血病で危篤状態の娘シーシーの手術のため病院へと向かっていたが、そこに機密指令として遺伝子学者であるジェームズ博士の警護を言い渡される。
断腸の思いで指令を優先させたリンは部下のスーたちと共にチームで彼の移送警護作戦を遂行していく。

すると突然の爆発と共にレーザー銃と高強度の防弾スーツに身を固めた一団が彼らを襲撃する。一団を率いる黒づくめのフードに身を固めた青白い男の合図で激しい銃撃戦を展開されるとその攻撃力と銃が効かないスーツの前にリンたちの警護隊は次々と敵の銃撃の前に倒れていく。

リンも奮闘するが圧倒的な攻撃力の前になすすべなく自らを囮にしてジェームズを逃がそうとするも、男に立ちはだかれ、ジェームズは銃撃をうけてしまう。
止めをさそうとする男にリンは決死の覚悟で車で特攻をかけ、自らの命を顧みず激突したオイルタンクを爆発させることで敵を撃退させるのだった。
横たわり動かぬリンの傍らでは病院からの連絡をうけた携帯がなり、リンたちの犠牲のもとに何とか助かったジェームズが彼の代わりに電話をとるのだった……

13年後。
SF小説家のリック・ロジャースのリンたちの事件を題材にした小説が出版されヒットしていた。
その彼から元ネタを盗みだそうとハッカーのリ・スンが潜入しデータを盗みだそうとするが、13年前の事件で細菌感染した青白い男の部下である女暗殺者たちとさらに謎の覆面男が現れる。

男と暗殺者が戦い争うなかで何とか逃げ延びたリ・スンはその盗み出したデータファイルの中から事件の鍵を握ると思われる女性をみつけ接触を開始する。
暗殺者との戦いで傷ついた覆面男はアジトで覆面を脱ぎ治療を始める。男の正体は死んだはずのリンであった。彼は事件以後生死不明にし、正体を隠していたのだった。

シドニーの大学に通うナンシーは勝ち気な性格で喧嘩っぱやい女子大生。そんな彼女は近年とある悪夢に悩まされ、ブロンクス街にある『魔女』と呼ばれる占い師のもとに夢についてのカウンセリングをうけていた。
ある日ひどい悪夢に襲われた彼女は、魔女のところでより深いカウンセリングを受けるがその際にこれまでにない強い反応がでてしまう。
手に負えないと察した魔女はとあるチケットを渡し、彼に診察してもらうよう助言してナンシーを帰す。

ナンシーは、その帰路で館回りのチンピラたちに絡まれるが、そのピンチを救ったのは彼女のあとをつけていたリ・スンであった。
何とか逃げ延びた彼女は口説こうとする彼をふってタクシーで帰るのだが、密かに彼への感謝の思いも目覚めていた。

数日後。魔女からの薦めでより強い催眠術師が公園をしているオペラハウスへと向かったナンシー。厳重な警備のなかで諦めかけた時、ナンシーを招いたのはあのリ・スンであった。
イベントスタッフとして潜入していた彼は、恋人と称してナンシーを館内へと誘い、彼女の目的の手伝いをする。
催眠術師に呼ばれた彼女はステージ上で悪夢の原因となる記憶を辿る催眠をかけられる。
しかしステージ内にあの女暗殺者たちが乱入。催眠術師を殺害するとナンシーを誘拐しようとする。

そこに覆面を被ったリンが再び現れ、女暗殺者たちと対峙。多勢に無勢のなかでコントロールパネル室にいたリ・スンの協力を経て何とかナンシーを救い出すと、リンは自らオペラハウスの頂上に女暗殺者を誘い込み、死闘を繰り広げる。
リ・スンによってナンシーが脱出したことを確認したリンは自分も脱出するためオペラハウスから決死のダイビングを敢行し、すんでのところでリ・スンが調達したモーターボートに飛び乗り難を逃れるのだった。

リンの隠れアジトにたどり着いた面々。ナンシーをベッドに休ませると、リンは得たいの知れぬリ・スンを地下に閉じ込める。
素性を聞き出そうとするリンであったが、ただナンシーと付き合いたいだけという彼に対して、自分が戻ってくるまで大人しくするようにと忠告し、閉じ込める。

ナンシーが通っていた魔女の館を訪れたリンはそこで暗殺者に殺された魔女とその助手の死体を発見。現場にはリンのチームの一員であったスーが現れ、状況が説明される。
ナンシーを狙っていたのはあの黒フードの青白い男であり、ジェームズの作る人工心臓と人工血液の実験台とされた元兵士アンドレであった。

実はナンシーの身体にはジェームズが作り上げた人工心臓と人工血液が埋め込まれており、そのナンシーこそ亡くなったはずのシーシーの成長した姿であった。
13年前に銃撃を受けて致命傷をおったジェームズは最後の人類への貢献として命を失ったシーシーを人工心臓と血液で復活させると、行方不明のアンドレの復讐を警戒して、リンとシーシーは死んだこととし、ナンシーとして生活する彼女を遠くからリンは見守り続けてきたのである。

気がついたナンシーはリンのアジトを抜け出しフラッシュバックする記憶をたどり、とある廃墟アパートを訪ねると、まるで何もかもわかっているかのように机の引き出しの下を探り、古ぼけた鍵を見つけるのだが、その背後にはアンドレの配下の女暗殺者が迫っていた。


ナンシーがアジトを抜け出したことを知ったリンは急ぎ彼女のあとをおうのだが、すんでのところでリンは彼女をさらった敵の車とすれ違ってしまう。
激しいチェイスとリ・スンの助力で一台においつき、横転させることに成功するのだが、その車にはナンシーたちの姿はなかった。
リンはリ・スンが作り出したGPS追跡アプリを使い、彼女の行方をおう。

ナンシーをさらった女暗殺者はその足で強奪した鍵を用いて、とある銀行のVIPルームへと赴くと、鍵が記すナンバーのロッカーからある品物を取り出す。
それは一本のビデオカメラであった。
女暗殺者たちはそれを手に出ようとするが、これはスーたちが考えていたおとり捜査で、閉じ込められた暗殺者たちはガスによって眠らされ逮捕される。

その頃、捕らえられたナンシーの前には醜悪なアンドレが立っていた。
アンドレの目的はナンシーの完全な人工心臓と血液を手に入れ、バイオロイド(人造人間)として不死身の完全体となり、自分自身のバイオロイドを量産して不死身の兵士軍団を作り出すことであった。

超人的な治癒力をもつ人工血液をナンシーから輸血することで細菌に侵され弱っていたアンドレの身体には生気が戻り始め、血を抜かれていくナンシーは徐々に青白くなり弱っていく。
そんななかで女暗殺者と二人の部下が秘密基地へと帰還する。
だがそれはナンシーを助けるためリンたちが変装し乗り込んだ姿であった。

異変に気づき襲いかかってくるアンドレの部下たちに対して、彼らの武器を使って迎撃に出るリンたち。
そして更に力を取り戻したアンドレが三人の前に立ちはだかる。

レーザー銃も武器も効かない不死身の身体で、圧倒的な力を見せつけるかのように三人を次々と薙ぎ倒していくアンドレ。
そんな彼らの姿をみて瀕死だったナンシーが精神力で血液を逆流させて復活。
飛び込み一閃、傷をおわすことに成功するが、それでも圧倒的な力の差は歴然としていた。
果たしてリンたちは不死身のアンドレを倒し、愛娘を助け出すことができるのか……


ジャッキーのドル箱シリーズである。『ポリス・ストーリー』よりその通算10作目の記念碑的作品として作られたSFポリスアクション。

超人的なスタントと激しい格闘シーンの融合でジャッキー・チェンの代表作となった『ポリス・ストーリー香港国際警察』から約30年。シリーズはジャッキーのライフワークとして定番化され本作品でナンバリングの10作品めとなった。

しかし実際には本筋であるチェン刑事の活躍は『ファイナル・プロジェクト』である第4弾までとされており、その他のナンバリングに関してはスピンオフや外伝、または世界観を変えた流行りの『マルチユニバース』的扱いとされている。

更にいうと本作に関しては原題名においてもポリス・ストーリーを意味付ける『英雄故事』の文字はなく、いわゆる日本公開の時に勝手に付けられたナンバリングである。
内容的にもシリーズと関連付けるには主人公が刑事であることとエンドロールの主題歌があの『英雄故事』の再録バージョンなくらいで、これまでのようなジャッキーの刑事アクションとは少し世界観も違ってくる。

大きな違和感の最たるところは、本作に近未来的なSF要素が入ったことだろう。
これまでシリーズの敵となっていたのは凶悪犯などであったが、いずれにしても犯罪アクションとしての人間性が感じられた。
ところが今回の敵は科学の随意を集めた人造人間である。そして使われる武器もレーザー銃やハイパー防護スーツなどまるで『スターウォーズ』的なハイスペックなものばかり。

冒頭でのド派手な銃撃戦は爆破スタントのスゴさも含め、光線が飛び交う派手な演出なのだが、ここが本作品における肝といっても過言ではない。
それは恒例となったエンドロールでのNGシーンできっちり確認できるくらいである。

これまでに肉体ひとつでやってきたジャッキーがハリウッドにわたって学んだのが優れたSF技術と自身の肉体アクションとの融合であった。
肉体的スタントはやはり寄る年波の中では限界があり、さすがに超人ジャッキーといえどその動きには陰りが出てきている。
それでも今回はオペラハウスの壁を命綱ひとつで渡ったりと相変わらずのムチャなアクションスタントをしているのだが(^^;

目新しいものとしてはSF技術を使い込んだアクションだろうか。これまでにもハリウッドでのジャッキー作品においてはVFXとの融合などが実験的に行われたりしたものの、あくまでそれはジャッキーの身体能力ありきで、彼の能力をカバーするための効果に過ぎなかった。
しかし本作ではレーザー銃や宇宙船などガジェットからしてどっぷりとSFアクションに使っていて、クライマックスにおける防護スーツに身をかため、レーザー銃を撃つジャッキーの姿に新鮮味を感じることだろう。

格闘アクションにおいても往年のスピードこそ衰えたものの中盤での垂れ幕を使った小道具カンフーなどジャッキーらしい格闘アクションは健在。しかし本作ではそんなジャッキーを上回る派手なアクションを見せたのが女優陣である。
まずは女暗殺者役として出演したテス・ハウブリック。大柄な体躯を活かしてのダイナミックな格闘アクションとパワーは一騎討ちしたジャッキーをも凌ぐ迫力。
そしてジャッキーの部下としてそのビューティーさをみせるエリカ・シアホウはテス以上の身体能力でクライマックスにおける格闘シーンの中心として活躍する他、冒頭でも過激なスタントにチャレンジするなどこれからを期待させる活躍をみせている。

ストーリー的にはおしなべてシリアスで暗く、ジャッキー自身もシリアス調なのだが、ここでアクセントとなるコミカルさをみせるのがリ・スン役のショウ・ルオの存在。彼は今回作品の重要な味となっていてシリーズの本流のコミカルさを一手に引き受けた感じとなっている。
それだけにかなりの重責だが、これな関してはハンサムながらお調子者な三枚目を上手く演じており、十分な合格ラインであるといえるだろう。
国際的なキャストが勢揃いするなかで貴重なジャッキーの娘役として日本から子役の美山加恋が出演しているのも注目である。

ただ惜しむらくは不死身のバイオロイドとの対決が淡白だったことだろうか。
人造人間相手とはいえ、あのジャッキーが格闘アクションを見せるシーンがないことはちょっと問題。存在感やキャラクターはいいだけに少なめな格闘シーンならばその質だけでも集約したものが見せられていれば、クライマックスシーンはまだ盛り上がりが違ったかもしれない。

そして全体的に漂うSF要素は、ファンのなかでも賛否が分かれそうなところ。シリーズの売りが『肉弾アクション』とイメージつけられているファンも多く、この作風はそういったファンにとっては好みが分かれそうである。
今でもチャレンジ精神をなくさず新たな分野へ挑戦するジャッキーには拍手だが、それをどう評価できるのかみる側にも試されそうな作品だといえる。

評価…★★★
(漂う近未来SF感がポリス・ストーリーらしくないと感じるか否か、そこで評価は根本から変わるかも)









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