少林寺映画ではマスターとしてお馴染みのゴードン・リュウの人気シリーズ続編。

清朝支配下の中国。藍染工場に満州人の職人を入れることを決定した監督のもとにはそこで働く職人のシシェンらが駆けつけ抗議の声をあげていた。
粗悪な商品提供と突然の賃金の値下げの宣言に場は紛糾するが、監督側は暴力をもってこれを鎮圧に図る。

シシェンの弟であるチェンチェは実直な兄と違い、世間をひねくれた目でみている青年であった。彼は得たいの知れないものを薬と称して売ったり、坊主になりすましてお布施を騙しとったりと詐欺まがいのことをしてはその日の金を稼ぐような放蕩な生活を送っていた。

ある日監督の雇い人である満州人たちに痛めつけられケガを負ったシシェンたちを見たチェンチェは仲間たちに請われ、満州人や監督たちから理不尽な条件を撤廃してもらうよう協力を求められる。

チェンチェは少林寺の達人であるサンダ和尚を名乗り、演じることで彼らを屈服させることを考え、シシェンの同僚で友人であるチウたちと共に雇い人の一人を呼び出すとそのトリックを用いて彼を萎縮させる。
雇い人は監督にこれを相談。
チェンチェたちは調子づいて監督のもとに赴き、トリックで彼らを怖がらせ、賃金のアップと不平等な労働契約の撤廃を迫る。
最初は懐疑的だった彼らも練り込まれたチェンチェたちの演技とトリックに騙され、賃金値下げの条件を撤回させることに成功する

少林寺からサンダ和尚がやってきて干渉してきたと知らされた工場の親方はその話をきいて怪しむと彼を屋敷に呼ぶように部下たちに命じる。

仲間にほだされ、親方も納得させれば怖いものなしと意気込むチェンチェたちであったが、親方は冷静にチェンチェたちの仕草を見て、是非とも腕試しをしたいと言ってくる。
カンフーなど全くできないチェンチェに親方は和尚を名乗る偽者として痛めつけ、ウソがバレたチェンチェは袋叩きにあいながらも何とかその場から逃げ延びることに。

その夜、仲間を心配するチェンチェであったがシシェンに反対に説教され、家を飛び出してしまう。路地裏で落ち込む彼の姿にチウたちは何とか自分達の仇をとってほしいとチェンチェに頼み込む。
チェンチェは少林寺で修行し、カンフーの達人となってチウたちにカンフーを教えることで悪辣な親方たちに立ち向かうことを決意。そのためには本物の少林寺の英雄サンダ和尚に弟子入りすることが一番の早道と考え、はるか少林寺を目指す。

山を越え野を越え、次第に修行に励む僧たちの姿を見かけるようになったチェンチェは僧たちに紛れこんで少林寺に入ろうと画策。
チェンチェのことなど目もくれず一心不乱にカンフーの修行に明け暮れる弟子僧たちを畏敬の思いで眺めていると、寺の奥に読経を唱える僧たちの姿を見つける。

なに食わぬ顔で入っていくチェンチェは一人の僧に呼び止められる。
ここで修行したいと訴えるチェンチェに対してその僧はむげにそれを拒否し、帰るようにいい放つと寺から追い出されてしまう。
諦めきれないチェンチェは剃っていた頭にたわしをのせ、業者に化けて入り込もうとするのだがそれもまた同じ僧に見破られ、反省の意も込めて塗料で黒く染まった頭を岩に当たって弾ける水で手を使わずに塗料を落としてくるようにいわれてしまう。

文句をいいながらもチェンチェは僧の言われた通りにやり遂げ、再びまた寺の前までやってきてあの僧に少林寺への弟子入りを懇願する。
応対したその僧こそあのサンダ和尚であった。

自分の名を語って詐欺まがいなことをしていたことを知っていた彼はチェンチェが頑なに弟子入りを志願する理由を聞くと拳法を教える条件をチェンチェに課す。
それは古びてきた寺を修復していくために必要な広大で高い足場をひとりで組み立てて完成させること。それができたらカンフーを教えてやるという約束であった。

苦労しながらも少しずつ足場を組み、そしてその奥で他の僧たちがカンフーの修行をする様を見よう見まねで真似をしながら、作り続ける。
そんなまるで気の遠くなるような日々はいつの間にか二年近くに渡っていた。

ようやく完成にこぎ着けたチェンチェはサンダに報告にするのだが、その完成した足場を見ていたサンダはすぐに足場を全て解体して寺を去るようにチェンチェに告げる。
約束を反故にされたと怒るチェンチェであったがサンダはそんな彼を冷たくあしらい強制的に寺から追い出してしまう。

失意のうちに故郷に帰ってきたチェンチェ。
迎えたチウらが期待の目でくるのだが、なにも教えてもらえなかった彼は会わせる顔もなかった。しかし親方の横暴で工房をクビにされていたチウたちの現状をきいたチェンチェは腹いせで監督らが我が物顔で仕切っている工場に殴り込みをかける。

襲いかかる監督らを驚くべきスピードと体術で動けなくしてしまったチェンチェ。
無駄に思えたサンダからのあの仕打ちは実はチェンチェの特技を活かしたオリジナルの拳法を知らぬ間に体得させていたのだった。

名付けて『塔棚カンフー』を修得したチェンチェは早速、工場へと乗り込み親方のもとへ。
カンフーの使い手である親方は長椅子を駆使した技でチェンチェに対抗する。
横暴な親方たちを屈服させるため、チェンチェは全てをかけた一騎打ちに挑むのだが…

リュウ・チャーフィの人気を不動のものにした人気カンフーアクションの続編。

反清の英雄だった少林寺のサンダ和尚の活躍を描いた前作の直接的な繋がりこそないもののキャストはほぼ同じくして作られた続編仕様の作品である。
おおむねシリアスだった前作に比べ、本作はそのスケールからしてミニマムなところを描いていて、しかも全体的にはコメディ調になっている。

少林寺ものにありがちな血生臭い復讐譚と違い、本作は今でいうブラック企業との労働争議にカンフーアクションをねじ込んだ感じのもの。不当解雇や理不尽な一方的なパワハラなどは不況が横行し、閉塞感漂う今観ると非常に芯を食ったかのようにこたえる内容といえる。

前作で英雄サンダを演じたリュウ・チャーフィは本作ではコミカルでお調子者な主人公を演じていて、そのサンダ和尚は別の役者が演じているのだが、前作とは全く違うキャラクターながらこれはこれで非常に魅力的な感じになっている。誠実なイメージのあるリュウがいい加減でひねくれ者なキャラというのはなかなかめずらしいのではないだろうか。
そのたぐいまれな演出を導いた義兄ラウ・カーリョンの手腕もさすがなところといえる。

シリーズのみそとなるアクションであるが、代名詞の特訓シーンは今回も非常にコミカルで見応えがある。
むちゃぶりなものが実はカンフーにつながるものであったというのはこの辺りの作品群ではよくみるが、本作の足場建設の内容がそのままカンフーアクションへと活かされるアイデアはほとんどないであろう。
それを踏まえての後半からのオリジナルの塔棚カンフーのアクションはまさに唯一無二の格闘シーンといっても過言ではない。

クライマックスのラスボス、王龍威が持ち出す変幻自在の長椅子のギミックも面白く、リュウとのスリリングなやり取りはまさに達人同士の極みというべき内容である。

また王龍威のほかにも見事な足技で強ザコながらインパクトを残す権永文などテコンドー系キッカーもいるので、総じてアクションのレベルも高い。

本作もショウブラザーズ系の格闘アクション作品群ではあるが、中でも政治的な側面がなく、人が死なない格闘アクション作品というのは珍しい。安易に復讐ものに染まるのではなく、現在の社会を見越したような舞台での内容はあまり凄惨なアクションは苦手という人にもオススメな作品である。
クセのつよめな見た目の作品ではあるが、なかなかこの時代としては珍しいポップさで前作とは別の面白さとアクションのスゴさが堪能できる傑作といえるだろう

評価…★★★★★
(アイデア勝利のコミカルカンフーアクションの傑作。前作とは違う味だけどこれもまた素晴らしい)

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