ボリウッド映画界でも注目のアクションスター、タイガー・シュロフ主演のアクション作品。
インドのゴア市街の保育園の前で二人組のマスクを被った男たちに車に乗っていた女性が襲われ、車ごと盗まれてしまった。
重度のショックから抜け出せない彼女は2ヶ月ものあいだ探し回るも何も手がかりはなく、藁をも掴む思いで訪れた寺院にも絶望の気持ちを語る。
インド国境付近の特殊部隊兵に所属し、勤務するロニーは厳しい軍の戒律と特訓にも超人的な能力でこなしていたが、そんなある日4年ぶりに携帯電話に連絡が入る。
それは4年前に別れた恋人ネーハからであった。
大学時代に知り合った二人は、ロニーからの猛アタックもあって親密となり、日がなデートを重ねては将来を意識し合うまでに発展していた。
しかしネーハは父親が末期のガンということをロニーとの結婚当日に知らされ、父親のために彼が勧めた男性との結婚を選択、ロニーは理由も分からず突然の別れを告げられ、これまで何の連絡もなかったのである。
終わったと思いながらもどこかで諦めきれない自分があり、無理に休暇届を出すロニーは一週間だけ休日を取ることを許される。
その足で早速故郷のゴアへと戻ってきたロニーは喫茶店で懐かしの顔をみかけるのだった。
ネーハはロニーに今の状況を伝えた上で自分の娘リアが誘拐されたのでその行方をつかんでほしいと頼み込む。
複雑な想いが交錯するなかその依頼を引き受けたロニーはまず、警察にネーハと共に赴く。
彼女の話から警察は証拠もなにもない状態のため捜査は打ちきりを提案しているという。
話を受けた部長の男は高圧的な態度でネーハに打ちきりの署名を迫り、ネーハにセクハラを仕掛けてくる。それをみていたロニーは不遜な態度の部長を拳一閃、そして騒ぎを聞き付けやって来た警官達を一網打尽に返り討ちにする。
その暴力性からたちまちロニーは逮捕され投獄されてしまう。
軍部に報告が入ったことにより、副総監のシェルギルがやってきてロニーへの尋問が始まる。
シェルギルはロニーの上官と顔見知りであり、大事になるまえにロニーを緊急で軍へ戻すことで暴力沙汰を手打ちしようとする。上官からの命令にはロニーも逆らうわけにはいかなかった。
ネーハが心配で警察署に掛け合うもロニーは移送の最中にいた。居合わせた運転手に相談するロニー。心の赴くままにと勧められたロニーは迷いをたちきり、帰途を戻って再びゴアの街へ戻っていく。
ネーハと再会し当時の状況を聞き出そうとするのだが、ネーハは落ち着かない表情でロニーを追い出そうとする。
それは今のネーハの夫シェーカルの弟サニーがやってくるからであった。
粗暴でドラッグ中毒の彼は義理の姉のネーハにも手を出しかねない上にこれまでに何度も警察沙汰となっていた一族の鼻つまみものであった。
ネーハに追い出されたロニーはリアが通うはずだった幼稚園や周辺の住民に聞き込みを行うのだが、不思議なことにそのような女の子はみたことがないと言われる。
不審に思うロニーは事件現場を撮っていた防犯カメラのある警察関係者の自宅に警察を装って侵入し、警備員にカメラの映像を見せるようにいうと、肝心の事件当時の時間を含む数時間だけが抜けていることを発見。警備員に消えている部分を含めて復元させるよう言う。
数日かかるということで更なる情報を集めるためロニーはリアが行方不明であるということを写真と共に新聞に掲載して情報を求める。
すると新聞をみたという男がリアの父親であるとして現れ、仕事先から帰ってきたミーハの夫シェーカルも子供はいないという証言を得る。
シェーカルは『ネーハが強盗被害にあった時に強度のPTSDを患い、以来娘がいると思い込んでいる』と告げられる。
さらに調査を依頼していた監視カメラの映像にもミーハが襲われる瞬間に車に子供が乗っていないことが確認される。
こうした証拠からロニーはネーハにリアは存在しないと告げ、立ち去ろうとするのだがそこで壁にリアの身長を書いたあとがあるのを発見。確かめようとするのだが、絶望にうちひしがれた彼女はマンションから身を乗り出して転落死してしまう。
事件を担当することとなったローハ警視監は彼女の携帯記録からロニーを疑い始める。
一方、ネーハの自殺で喪失感に暮れるロニーのもとに最初に自動車を手配したウスマーンが現れ、リアの行方を知っているという情報を聞く。彼は麻薬の売人としてシェーカルの弟サニーと取引があり、その際にアジトでリアの姿をみかけたという。
ロニーは真実を突き止めるため、サニーを追い詰めるが駆けつけたローハに逮捕されてしまう。
ロニーは真実を訴えるが、サニーはシェルギルか取り調べの最中に銃を抜いたために射殺されてしまう。
そして同じ頃ウスマーンにも暗殺者が近づいていた。
ようやく釈放されたロニーが駆けつけるがウスマーンは間際に後悔の言葉を残して死んでしまう。彼を殺した暗殺者を返り討ちにし、ロニーが尋問すると彼らを雇ったのは何とシェルギルであった。
すべての黒幕がシェルギルであることを知ったロニーは森奥深くに構えているシェルギルの隠れアジトを単身強襲し、部下たちを殲滅させるとシェルギルに対峙するが、銃撃を受け負傷する。
重傷を負い満身創痍の彼にシェルギルはすべての真実を語り始める。
そこに隠されていた真実とは、そしてロニーの戦いの行方は…
ハリウッドでも注目されているボリウッドアクション界の雄、タイガー・シュロフ主演作品。
アクション映画界においても今後台風の目となりそうなインド=ボリウッド映画。
アジアでもここ10年くらいで注目度が高まり、ジャッキー・チェンも製作に果敢にチャレンジするなど話題沸騰となっている。
その大きな特徴となるのがストーリーの展開を完全無視するくらい導入される出演陣の大がかりなダンスシーンであるが、男優も女優もみんなこれが異常なまでにキレキレでそのシーンだけどうしても異彩を放っていた。
ジャッキーも『カンフーヨガ』で大団円のボリウッドダンスシーンをチャレンジしたものの、本場中国では散々な結果であったという。
日本ではウッチャンナンチャンの南原清隆が持ち込んだ『ムトゥ踊るマハラジャ』でインド映画初上陸だったせいか、とにかく荒唐無稽なストーリーと関連性がみいられないダンスシーンで違和感を抱いたまま、今日までふれることなくきていた部分がある。
現在では『バーフバリ』など骨太なアクションに屈強そうなスターが出演して暴れまわる感じではあるが、やはりダンスシーンをはずすことはできないようで、さらにその脚本ゆえに一つ一つの作品の時間がやたら長くなるのも致し方ないとこである。
本作の主演を務めるタイガー・シュロフは実は二世スターであるが、その幼少からのたぐいまれな身体能力とキリッとしたフェイスでボリウッド映画界でも要注目とされている。ダビデ像のような肉体美とエクストリームマーシャルアーツ、そして常人離れしたアクロバットアクションは次世代アクションスターの筆頭、スコット・アドキンスに勝るとも劣らないほど。
そして本作のヒロインを務めるのはジャッキーの『カンフーヨガ』にも主演した、ディシャ・パターニ。十頭身でスレンダーながら目の覚めるような美形フェイスは眩しいほど。そんな彼女も本作ではキレキレのダンスやちょっとしたアクションもみせていて、かなり体当たりに演じている。
アクションに至っては主演のタイガー・シュロフが八面六臂の活躍をみせているが、その真価をみせてくれているのがクライマックスの戦い。ここで見せるシュロフのアクロバティックでなおかつ鮮やかなマーシャルアーツアクションは一見の価値ありで特に空中回転しての開脚蹴りやムーンサルトしながらのガンアクションなどは圧巻。
本作は実はシリーズものの続編であるが、いわゆるサモハンの『デブゴン』シリーズ同様で名前と配役以外は別物の物語である。
ナンバリング上の続編というわけだが、本作実はインド映画『kshanam』のリメイク。
といってもほぼ分からず、ここに苛烈なアクションを盛り込んだ感じである。
前作である『Baaghi』が大ヒットしたため、そのコンセプトにあった『インド版ランボー』を再度取り入れたという。
クライマックスでの単身の戦いはまさにランボーを意識したものであることはここからもよく分かる。
そのためか本国インドでの評価は二番煎じだといまいちだったようだが、外国では作品のそのポテンシャルから評価は高く、更なる続編が製作された。
ボリウッド作品特有のキレキレのダンスシーンはもちろん入っているが、昔のように話の腰を折るほどの強引さはなく、その点からするとボリウッド映画にアレルギーを感じていた方々にもかなり観やすくなっている印象である。
ただ難をあげるとすれば無駄に多い伏線はりとその強引な回収、それにかける時間の長さだろうか(^^;
次のアクションの潮流を生むかもしれないボリウッド界のアクション入門編としてオススメといえる作品といえるだろう
評価…★★★★
(2時間半の長丁場でアクションはいいが、伏線はりが長い長い。)