本格派アクションスター、ユン・ピョウ主演による社会派ドラマアクション作品。

列強が支配を強めていった辛亥革命前夜の中国上海。眠ることのないこの街に田舎からやってきたシウフーは圧倒されていた。

彼はイギリス租界で軍人として働いている兄ダイフーを頼りにやってきたのだが、全く土地勘のない彼は右往左往するばかり。そんな中唯一の案内地図を持っていってしまった男を追いかけ成り行きのままシウフーはトラックに乗り込んでしまう。

乗り合わせた男たちみな物々しい空気を漂わせていたが、実は彼らは上海随一のキャバレー『天宮』の襲撃計画を企てていた。

その頃天宮では支配人であるバッが革命党員であるチャンと会談。バッの引退からチャンへ多大な活動資金の寄与がなされようとしていた。

成り行きで来てしまったシウフーは何とか襲撃を阻止しようと列から離れ、助けを呼ぼうとする。そこで偶然出会った雑技団のアボウはシウフーから放火されようとしていることを聞き、座長へ相談しようとするが、その時火の手があがる。

彼らの狙いは混乱の最中で革命党への軍資金を奪うことであった。
争いに巻き込まれたシウフーはバッと軍資金の入ったバッグをもって逃げようとするが、敵のギャングたちに囲まれて一斉射撃を受けてしまう。銃弾の雨のなかでバッは殺され、逃げるシウフーにも銃口が向けられるのだが、持ち前の腕っぷしと機転で脱出。しかし資金の入ったバッグは敵に奪われてしまう。
取り返そうとするシウフーだがアボウに止められ、仕方なく諦め世話になった雑技団の仲間たちに別れを告げ兄ダイフーを探しにいくのだった。

将校であるダイフーは正義感の強い性格が仇となり、上司である将軍から睨まれていた。
そんな彼の心を癒すのは好奇心から作り上げる発明品の数々。
そんな中、租界基地にシウフーが侵入してきたことで大騒ぎとなっていた。
銃殺されかかるシウフーを見つけ必死で止めるダイフー。懐かしさのあまり嬉しがるシウフーは駆け寄ってくるのだが、そこはイギリス租界が仕掛けていた地雷源の真っ只中。
しかし強運なシウフーは奇跡的に全てをかわし、ダイフーとの再開を喜ぶ。

再開する二人を水差すように上司である将軍がダイフーに命じた任務はマリーという女性の護衛。ふてくされるダイフーだが、彼女は上海随一の富豪で黒社会の大物カムの養女であった。
駅前で待ち合わせる二人に現れたマリーの姿にダイフーは固唾を飲む、
彼女はダイフーのむかしの恋人であったのだ。
シウフーは兄に気を使い、一人単独行動を始める。

二人はカムの誕生会に招待されて会場にやってくるが、そこはカムの影響力を表すかのように政財界の大物たちが集まっていた。そんな中でマリーはかつての悪友であるティンティンと再会する。
ダイフーを巡って恋の鞘当てをしていた間柄ながら友人でもある彼女たち。上海イチの美人と称されるほど有名になったティンティンとマリーは再び友情を深めるのだった。

そんな中マリーはおもむろにベランダへ。
そこで合流したのは活動資金を奪われたチャンであった。マリーは諸国をわたり巡ったことによりこの国の危うさを知り、革命運動の仲間となったのである。
チャンは噂でカムの金庫の中に奪われた資金が隠されていることをきき、カムの養女でもあるマリーの協力を仰ぐ。しかしカムの金庫には資金は置いてはいなかった。

翌日。
ダイフーは発明品のテストを行っていた。
マリーとティンティンもよび、自作飛行機のテストでフライングするも失速し墜落。
派手に大破したもののダイフーは無傷で飛び降り事なきをえる。

一方、ダイフーと別れたシウフーはアボウのいる雑技団を見に行っていた。アボウたちが様々な芸を見せるなかで、クラブ『大世界』の支配人であるシャーとその取り巻きが雑技団のメンバーたちに因縁をつけ、暴力をふるいはじめる。
このシャーこそ『天宮』を襲い大金を奪ってギャングたちの元締めであった。

目をつけられていたシウフーはアボウたちに逃げるように促し、その場から脱出を図るのだが、雑技団メンバーのウォンモウとマネージャーがいないことに気づく。

二人はシャーたちに捕まっていて、シャーによって殺し合いの試合を組まれていた。
そしてシャーはカムを呼び試合の賭けを依頼する。
シウフーらが行方を追ってたどり着くと二人は屈強な格闘家たちによって瀕死にまで追い込まれており止めをさされようとしていた。

シウフーの乱入によって混乱する会場。メンバーのホイとダッは、銃器奪い取ってギャング達に応戦。その中でシャーはアボウを人質にとるがシウフーの投げたナイフを利用したアボウの反撃にあって反対に殺される。

一連の騒動の顛末をみていたカムはシウフーの勇敢さと誰をも恐れない態度を気に入り、組織への勧誘をするのだが、シウフーは悪の道には入らないと拒否。
しかしカムは頂点にたてば世界は変えられると話し、シウフーは心を動かされる。

結果シウフーはカムのもとで働くこととなり、カムも彼の器量を評価して支配人が不在となった巨大クラブ『天宮』と『大世界』の支配人を任せる。
大きな仕事が決まったというシウフーの報告に喜ぶダイフー。

数日後、シウフーがきりもりする天宮にマリーが訪れる。すると彼女は奪われた革命運動の活動資金が隠されていることなどを明かし、彼女が革命党員であることを知る。
カムは自分たちのためにも革命党員には関わるなとシウフーに忠告するのだった。

一方、上司であるボッティンジャー将軍から郊外の染料工場内で革命党員達による集会が開かれるという情報を得たダイフーは副官と一緒に潜入捜査を始める。
中では仮面を被った女性が雄弁に革命について演説していたが、副官の拳銃の誤射により場内はパニックとなり、弾が当たった女性のマスクが壊れる。演説をしていたのは他でもないマリーであった。
彼女の姿をみて、マリーが革命党員であったことを知ったダイフーであったが、誤起動で電源が入り毒物の染料水に飲み込まれそうになった彼女を思わず助けてしまう。

数日後。ダイフーは将軍から呼ばれ、とある人物の逮捕の協力に駆り出される。
行き先は『天宮』。軍はこの店がアヘンの密輸に関わっているとして強制捜査をし、シウフーたちの逮捕に踏み込んだのである。
ダイフーはシウフーがそこで働いていることを初めて知り、しかも悪事に手を染めていると思い、出てきたシウフーを激しく問い詰めるのだが、シウフーたちにとっては寝耳に水の話。
アヘンには関わってないと証言するマネージャーに容赦なく発砲する将軍。
実はアヘンは軍が持ち込んだものでシウフーを嵌めようとしたものであった。
真実を知ったダイフーは怒りから将軍に銃口を向けシウフー達を逃がすと自らは投降して逮捕されてしまう。

夜、ダイフーの危機を知ったティンティンとチャンは彼を助けるため軍の屋敷へと忍び込み、ダイフーを助けだすも将軍たちに見つかり激しい追跡を受ける。
その時目に入ったのはダイフーが発明していた振り子式発射の飛行機。チャンが劣りになることでダイフーとティンティンは辛くも脱出し。シウフーたちのもとへいそぐ。

その頃、カムが革命活動の資金を奪い取ったことを知ったマリーは直接カムに返還を要求するが、カムは革命のために金を使うつもりはないとして拒否し、彼女にアメリカに帰るよう忠告する。
それでも退かないマリーの前に屈強なカムの部下たちが立ちはだかる。

その場をあとにしようとするカムに対して、嵌められ怒りに燃えるシウフーたちが乱入し、シウフーはカムに絶縁を告げる。
己のプライドをかけて一騎討ちを始めるシウフーとカム。そして揺るぎない心とカンフーでカムの部下たちと戦い渡り合うマリー。
場が混沌とするなかでカムの援護のために将軍が率いるイギリス軍が雪崩れ込みシウフーらを包囲する。

絶体絶命の危機の中で飛び込んできたのは武器を片手に飛行機で突入してきたダイフーたちであった。
壮絶な銃撃戦が繰り広げられるなかで果たしてダイフーとシウフーたちの運命は…


豪華客演による群像劇とアクションで話題をよんだアクション大作。

作品的に何となく既視感のある本作だが、それは同時期にジャッキー・チェンによって『奇蹟』が当時公開されていたため。
舞台も香港と上海の違いこそあれ、主人公が黒社会でのしあがり正義のために大事を行う基軸はジャッキーもユン・ピョウも設定が似ていることもあって同じように見える。

ただ本作はジャッキーの作品と比べて描くべき人物の描写が多い割には時間が短い。
主人公兄弟の活躍、黒社会の暗躍、外国軍の侵略、そして恋愛。本来ならばこれだけのボリュームであれば最低でも3時間、テレビシリーズでじっくりと描くくらいの容量であるが、これを90分強でまとめあげるにはなかなか無理がある。

このためどの観点からみてもしっくりとした完結には結び付いておらず、場当たり的な展開で強引にまとめあげた感は否めないところ。

『奇蹟』でも魅力的なヒロインを演じていたアニタ・ムイが本作でもコケティッシュで魅力的なヒロインを演じているが、本作では『奇蹟』では見せなかった華麗なカンフーアクションを披露。前半におけるユン・ピョウとの格闘チックな社交ダンスシーンから始まり、クライマックスではボスの部下相手に見事な格闘シーンを見せている。ワイヤーの助けがあるにしても美脚をさらけ出してのスピンキックや舞うようなウェポンアクション、そしてラストのガンアクションに至るまで、『強くて美しいヒロイン像』を打ち出している。

本作の主人公はユン・ピョウであるが、決して単独ではなく、むしろジョージ・ラムとのダブル主演といった構図。作品内の描きかたとしてもジョージ・ラムの大人の魅力をフィーチャーしている部分が多く、これは他のサモハン作品でみせるキャラクターイメージとも似ている。
それもあってかユン・ピョウの弟感もまたアップしているところだが。

なおパッケージでは一番デカく載っているサモハンであるが、今回の彼は珍しく悪役。とはいえ残酷な勧善懲悪なものではなく、暗黒街のボスらしい風格のある感じで、イメージ的にはドニー・イェンの『葉問2』の拳法界の総帥みたいな感じ。

群像ドラマ主体のためアクション自体は多くはないものの、やはりアクションスターたちが共演するなかで、見処となる場面はいくつかある。
最大の売りとなるのは珍しく本格的なサモハン対ユン・ピョウの一騎打ち。他の作品でもなかなかみることのできないマッチングなので期待も高まるが、完全決着ではないにしてもなかなか見ごたえあるものになっている。
スピーディーで変幻自在の蹴り技をみせるユン・ピョウに対して、重厚で力強いカンフーで対抗するサモハンとの直接対決は一進一退の息もつかせぬ仕上がりぶり。これだけでもみる価値はあるだろう。

あと前述したアニタ・ムイのアクション。
ダンスを基軸とした柔軟性に富んだ彼女のポテンシャルは高く、それを踏まえてのカンフーアクションは必見である。

かなり詰め込んだ感じで人が多い割には印象が薄い感じではあるが、これはそもそものドラマに対しての尺があってないのでかなり編集されたものがあったのではないだろうか?
仮に完全版があったとしたら壮大なドラマ作品になったに違いない。
ジャッキー作品との既視感と違いを感じつつ、観てみるのも一興だろう。


評価…★★★
(アクションもそこまで多くはないけど見処はおさえている。でも詰め込み感はハンパないね(笑))

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既視感のあるこちらは舞台は香港。ユン・ピョウもゲスト出演