本格派カンフーの達人で香港映画界を牽引してきたラウ・カーリョンら主演のカンフーアクション作品

中国清の時代。欧米列強の侵略が深刻化するなかで清では『扶清滅洋』をうたう秘密結社『義和団』が台頭。政府は彼らを利用し諸外国に対抗しようとしていた。

そんな中、清の南部、雲南地方へ派遣されてあた義和団最強の神打の達人であるレイ・クン(雷君)が突如その支部を解散させ行方不明となる。
組織からの離脱を表明した彼に対し、これが西太后の耳に入ることを恐れる政府のリー総督は義和団が形成する『神打』『術士』『芽山』の三つの暗殺団にレイ・クンの暗殺を仕掛ける。

総督の命によりそれぞれの団より『神打』からは天壇のフォンと地壇の師が、『術士』からは若きティエ、そして芽山からはレイ・クンの実弟であるレイ・ヨンが刺客として派遣される。

早速レイ・クンがひそんでいるとされる広州に渡った三人だがお互い顔を知ることはなく、その素性伺いながら標的を探すこととなる。

ティエは師匠より受けた十八もの武器の使い手で高齢であるという情報をもとに街中を捜索。
フォンは男装して街一の宿兼食堂に居座り、標的の情報を収集していた。
その二人はとある老齢の達人風の男に目を付けるがこの男の正体は芽山の頭、レイ・ヨンであった。

レイ・ヨンは詐欺師のトンを使って催眠術をかけて、レイ・クンを名乗らせ暴れまわることで本人を誘きだそうとする。しかしまんまと騙されたティエに邪魔され、操り人形を壊されて失敗。
そして汚水に浸かりすぎたティエは疫病にかかってしまう。

その頃フォンは大量の薪を運ぶ男ユィに目を付ける。
家の中に侵入し、藁に被せてあったのは見たこともない武器の数々。帰ってきたユィにフォンが問い詰めるが同じ頃、フォンを追ってきたティエもユィの様子をみ、襲いかかる。
しかしティエは病状が悪化し、昏睡状態に陥るとフォンとユィは彼を自宅で療養させるのだった。

実はフォンも義和団の狂信的な考えに疑問をもっており、無駄に命を捨てる若い弟子たちを救いたい気持ちであったが、兄弟子である地壇のもと行動に移すことができなかった。
彼女はレイ・クンに会い、その真実を知りたかったのである。

ティエを看病するなかでフォンの予想通り、ユィこそ消息を絶ったはずのレイ・クンその人であったことが判明。
しかし、隠遁生活のはてにかつての拳力は失われていた。
フォンの指導のもと特訓したレイ・クンはその力を取り戻し見事に復活を果たす。

ティエも回復し、ユィに感謝の意を示そうとするが、その矢先に神打の刺客、地壇がやってくる。
フォンも駆けつけ、地壇の説得を試みるのだが思想に支配されている彼の耳には届かず、ユィに襲いかかる。
病み上がりのティエも地壇を止めようとするがその力は歴然であった。
しかし力を取り戻したレイ・クンは攻め立てる地壇の鍛えることのできない急所を攻撃し、彼を撃退する。

神打の矛盾をとくフォンは改めて神打からの出奔を決意。レイ・クンと共に義和団の狂信的な考えから若者を救うため彼と共に行動することを地壇に伝えると、地壇はよろけながらもその思いを胸に戻っていく。

ユィのその強さと数多の武器から彼こそが標的であったレイ・クンであることを知ったティエは掟と恩の狭間で迷い、姿を消す。

ティエが姿を消し、数日後。レイ・クンの前に同じような風体のレイ・ヨンが訪ねてくる。
彼はレイ・クンの実の弟であった。
達人としての力を取り戻した兄に対してレイ・ヨンは共闘をもちかけるのだが、レイ・クンは涼しげな顔でそれを受け流す。
決意を秘めたレイ・ヨンは自ら芽山を説得するとして兄の前から旅立っていく。

その夜、レイ・クンは術士軍の襲撃を受ける。
総統自ら襲いかかるが、それを止めたのは姿をくらましていたはずのティエであった。
掟とレイ・クンの思いの間で悩んだ彼は、総統に刃向かい、レイ・クンは総統を打ち負かす。
レイ・クンの思いを聞いた総統はティエをレイ・クンに預けるのだった。

自分を狙ってきた義和団の刺客達。総統までも動かしたその黒幕と戦うため、レイ・クンは戦いの正装に着替え最後の戦いへと向かう。
すべての元凶は弟レイ・ヨンであった。
兄が離脱し義和団の覇権を狙った彼は生きている兄を暗殺せんと策略を練っていたのである。

神打の達人である十八の武器を用いてレイ・ヨンの待つ芽山の御堂にきたレイ・クンたち。
狂信的な野望を砕くため、レイ・クンは弟との雌雄を決する一騎討ちに挑むのだが…

ショウブラザーズ随一の達人であるラウ・カーリョンが手掛けたカンフーアクションの名作。

かつて東洋のハリウッドと呼ばれたカンフーアクション作品の老舗ショウブラザーズにおいて最も貢献度の高いアクションスターと呼ばれたのがこのラウ・カーリョンである。
本物の武術家である彼は、俳優のみならず自ら脚本や監督そして武術指導とまさに八面六臂の活躍をみせた。

そして彼の実弟ラウ・カーウィンのほか、カンフーファンの間では少林寺マスターとして知られるゴードン・リュウこと義弟リュウ・チャーフィはカーリョンを含めて『劉三兄弟』とよばれ、数あるショウブラザーズ作品を盛り上げてきた黄金期のスターたちである。

そんなラウ・カーリョン監督作品のなかでも隠れた名作との評価の高いのが本作である。

ストーリーとしては中国の歴史上に悪名を残した義和団の狂信的な暗躍を主軸に、その内乱を描いた珍しく少林寺ものでも清対明の民族対決でもないが、その奇想天外な拳法が次々と出てくるところは興味深い。

怪しげな術を使う集団として記録にも残る義和団はカーリョン曰く三つの大きな組織から成っており、肉体を極限まで鍛えぬくと銃弾も効かなくなると信じる拳法集団『神打』、暗器を使い煙幕などで幻惑させて超人的な身体能力をもつ日本でいう忍者のような『術士』、催眠術を操り意のままに人やものを操る『芽山』に分けられる。
この三つに属する若者達はみな死ぬことを恐れず進んで命を投げ出すところから後にこの義和団がカルト宗教とよばれる所以足るところだろう。

こうした歴史背景と他に本作を楽しむポイントとしては題名上にもある18もの武器の存在。
カンフー映画ではお馴染みの長刀や槍はもちろんのこと三節根やトンファーのほか、蛇矛や呂布戟といった三国志関係をみていないと分からないような代物までわんさか登場。
この武器を使っての演舞が作品のオープニングで披露されるので期待値は高まるばかり。

焦点となるアクション面であるが、こだわりの強いラウ・カーリョンが武術指導を手掛けているだけあって各格闘シーンのレベルはかなりのもの。
主となる劉三兄弟のほかにも、ラウ・カーリョン秘蔵っこのシャオ・ホワ(小候)に女武打星としてショウブラザーズ最高のクララ・ウェイ、そして若くして事故死した貴公子アレクサンダー・フーシェンなど動ける人間を集結。
それぞれにアクションとしての味をだしている。

前半から中盤にかけてはアクロバティックなシャオ・ホワの超人的な動きと操り人形としてコミカルな味を見せながらも見せ場たっぷりのカンフーアクションをみせるアレクサンダー・フーシェンに注目。
特にゲスト的な出演のフーシェンは高貴な美少年ぶりを捨てて、変顔やベタな笑いをとるなど初期ジャッキー作品にも通じる演技で見せ場を作っている。

しかし何より圧巻なのは後半から。 
拳の力が復活した主役ラウ・カーリョンには珍しく敵役で登場するゴードン・リュウ、との一騎討ちも熱いのだが、やはりクライマックスにおけるカーリョン対カーウィンの一騎討ちが珠玉の仕上がり。最後の対決ではそれぞれに十八の武器を用いて戦っている他、徒手空拳(白打)のまさに阿吽の呼吸ですさまじい速さの応酬は観るものの圧倒させる。

カーリョン自身が思い描く『武術とは?』の哲学的な考えが本作における裏テーマではあるが、気心知れた俳優達で回りをかためた所に、カーリョンのこだわりを答えれるだけの技量をもったカーリョン印のオールスターアクション作品といえなくもない

凄惨に主要人物が死んでいくショウブラザーズ作品のなかでは人が死なない、コミカルさとハイレベルな格闘アクションが楽しめる稀有な作品。カンフー映画、武侠ものが好きな方はおさえておきたい名作である

評価…★★★★★
(月下山などマニア過ぎる武器の戦いもある本作。カンフー、三国志好きならオープニングで引き込まれること受け合い)