『マトリックス』や『スピード』などで世界的にアクション俳優として名を連ねたキアヌ・リーブスの新たな世界観をもつスタイリッシュなキャラクターを演じたクライムアクション。


愛する妻ヘレンと平和に暮らしていたジョン。
彼女は突然の病に倒れ、やがて帰らぬ人となった。
失意の底に落ちる彼のもとに一匹のビーグル犬とメッセージの入った箱が届く。
死期を悟っていたヘレンが残されるジョンが寂しい思いをしないように送った最後のプレゼントだった。

数日後。ガソリンスタンドで給油をしていたジョンは三人の若者に絡まれ、価値の高そうな車を譲るように迫ってくる。ジョンはそれを頑なに拒否した。
その夜、階下の物音に目が覚めたジョンは降りていくと鋭い一撃を頭に受け昏倒する。
薄れ行く意識のなかで見たのは昼間絡んできたあの三人。家のなかを荒らしまくった彼らは抵抗してきた犬を棒で殴り殺すとジョンを集団でいたぶり殴る蹴るの暴行をし、愛車のムスタングを盗み出していく。

気がついたジョンは傍らで冷たくなってしまった飼い犬をみ、慟哭する。
そしてその失意のまま庭先へと飼い犬の遺体を埋葬していく。

数時間後、ムスタングを持ってきたヨセフ率いるチンピラたちは車の転売を手掛けるマフィアの下請けのオーライルに換金を要求するが、オーライルはその車を見るとみるみる青ざめていく。
そしてヨセフよりことの次第を聞き出した彼は彼を激しく殴り付け、帰らせる。

オーライルはすぐさま連絡を取るのだが、その相手はロシアンマフィアのボスであるヴィゴであった。
ヨセフは彼の息子であり、ヴィゴは彼を殴った理由をオーライルより聞く。

ヨセフが襲い、車を盗み出した男。彼こそは闇の世界で殺し屋を殺す最強の殺し屋であり、マフィアの間ではブギーマンと呼ばれ恐れられていた男ジョン・ウィックであった。

かつてロシアンマフィアの手先であった彼の働きによってヴィゴは今のボスの座と影響力を手に入れたわけであり、引退していた彼の唯一の心の拠り所であった妻の形見であるビーグル犬と愛車を奪い、殺したことでジョンが復讐しに来ることは明白であった。

最も怒らせてはならない相手。ヴィゴはヨセフを呼び出し、ジョンの恐ろしさを息子に叩き込むと自ら彼に連絡をする。
それは和解の申し出であったが、ジョンは無言でヴィゴの電話を切る。それはジョンからの激しい復讐の現れであった。

ヨセフを守るため、ヴィゴは部下を集めジョンを殺さんと包囲するのだが、武器を取り復活したジョンは瞬く間に死体の山を築き上げる。
殺し屋界でいう死体処理班通称『清掃屋』を呼び、ヴィゴの部下の死体を片付けるのを見届ける清掃屋はジョンの復活を嬉しそうにしていた。
そして見回りにきた警官も彼の復活をただ黙認するだけであった。

ヴィゴの手下たちを皆殺したことにより殺し屋界ではジョン・ウィックの復活の噂がたちまち広がっていった。
ヴィゴはジョンの首に200万ドルの懸賞金をかけ、殺し屋たちに彼を暗殺するよう依頼する。その中にはかつてのジョンの殺し屋仲間であったマーカスの姿もあった。
そうした環境のなかでもジョンは着々とヨセフの命を付け狙う。

復活したジョンは裏社会の人間御用達のホテル、コンチネンタルホテルにやってくる。ホテル内での暗殺の仕事はしないことを掟とするこのホテルで支配人ウィンストンはジョンの姿をみて驚きの表情をうかべる。
そしてヨセフを狙う彼に対して情報として彼が現れる場所を教える。

ヨセフは組織が仕切る地下浴場『レッドサークル』にいた。
ヴィゴの手下達が周囲を固めるなかでジョンは次々と見張りを始末していき、ヨセフのもとに迫る。
彼の仲間で自分を襲った実行犯のひとりを葬ったジョンは浴場の地下室のVIPルームにいたヨセフに迫るがヴィゴの右腕であるキリルに気づかれ暗殺の妨害にあう。
格闘の名手であるキリルとの死闘で負傷したジョンはヨセフを追うのだが逃がしてしまうのだった。

傷ついたジョンはホテルに戻り療養しているとライフルのスコープ越しにマーカスが寝ているジョンに照準を合わせる。
すると休んでいるジョンの部屋に侵入者が。
それはヴィゴの賞金につられ、殺し屋の掟を破ってジョンの暗殺を目論む女殺し屋パーキンズであった。
わざと狙撃することでジョンを助けるマーカス。気づいたジョンはパーキンズに不意を突かれながらも取り押さえ、ホテルに住む殺し屋仲間のもとに彼女を見張らせるのだが、パーキンズは隙をついて彼を殺し、逃げてしまう。

ホテルのオーナーであるウィンストンから掟を破られジョンに危険な目にあわせたことを謝罪すると同時にヴィゴに関する情報をジョンに伝える。
それはヴィゴの活動資金であった。
隠れアジトの教会を襲撃したジョンはヴィゴの軍資金をすべて灰にしてしまう。

ジョンが資産を燃やし尽くしたことに激昂したヴィゴは大勢の部下を引き連れてジョンを襲撃。手負いながら卓越した殺傷力で次々と手下達を葬るが、キリルが運転する車にはねられついに捕らわれてしまう。

怒り狂うヴィゴは罵声を浴びせながら、ジョンを拷問にかけ、殺そうとするがまたしてもマーカスが狙撃し、隙をついたジョンは格闘の末に難敵キリルを締め殺す。
ジョンは逃げるヴィゴを追い詰めると、ヨセフの居場所聞き出し、自身への暗殺命令を撤回させることを条件にヴィゴを逃がす。

ほどなくヨセフの隠れ家に現れたジョンは鬼神のごとき速さで仲間達を次々と殺害し、ヨセフは命乞いをする間もなくジョンに殺されるのだった。

怨恨の相手が死に、ジョンは再び普通の暮らしに戻るとマーカスと親しげに話すのだが、その現場を裏切ったパーキンズが目撃。息子の死の要因となったジョンを殺せる立場ながら裏切っていたことに憤慨するヴィゴはマーカスをいたぶったあげく殺害。彼の死体を餌にジョンを誘き寄せパーキンズに暗殺させようとするが、パーキンズは掟を破ったことでウィンストンたち殺し屋組織によって粛清され、マーカスを殺した犯人がヴィゴであることをジョンに伝える。

友を殺され、復讐に燃えるジョンは逃亡を図るヴィゴたちを追い詰め、満身創痍のなかで最後の戦いに挑むのだが…

『マトリックス』以降アクションスターとして再び脚光を浴びることとなったバイオレンスアクションシリーズ第一弾。

ハリウッドでは話題に事欠かないキアヌ・リーブスは自他共に認めるアクション俳優として認知されているが、なかでも格闘アクションに縁が深いスターである。
そんな彼のアクションの目覚めはなんと千葉真一であり、格闘アクションに傾倒する背景には千葉真一のアクションに基づいている。

カンフーや空手といった格闘アクションに憧れをもつ彼が『マトリックス』や本作のオファーをうけたのはそのルーツをたどれば至極理解し得るものと言える。

非現実的なワイヤーアクションと格闘アクションによってハリウッドアクションの新時代を拓いた『マトリックス』シリーズは目の肥えた格闘アクションマニアにとっては否定的にとらえられがちだったが、その状況をふまえて今回挑んだのはより『リアル』なアクション。
監督であるチャド・スタエルスキーがスタントマン出身であのダン・イノサント直伝のカリの使い手ということもあり、そのアクションスタイルはかなり熟考されたのだが、結果として生まれたのが銃とカンフーを合わせたオリジナルの格闘術『ガンフー』であった。

以前『リベリオン』という作品で銃と型を融合したオリジナルの格闘術『ガン=カタ』があったが、ヒーロー然とした動きのガン=カタと比べるとこのガンフーはよりリアルで、構えた銃そのもので殴り付けたり、間接を取って投げたりし、相手が体制を崩したところで致命的な銃撃をいれるというまさに暗殺術というべき佇まいである。

が、本作においてはカンフーの要素というよりはむしろ柔術に近いアクションが多く、どことなくスティーブン・セガールのような既視感も見えなくもない。

ストーリーは引退していた殺し屋が復活し、復讐する単純なところ。
殺し屋の掟や数多くいる殺し屋たちなど掘り返しができそうな所は今回はあえて深掘りせず、個人の闘争のみで締めくくった点はシンプルでアクション映画として分かりやすい。
最強とはいえ数年も現役から遠ざかっていたこともあって完全なる無双状態ではないところも本作の注目点であろう。
それゆえに結構戦いのあとに重傷をおっていることが多いのも単なるスーパーヒーローではないリアルさといえる。

全体的にはガンアクションも含め、スタイリッシュな感じで、まさにリアルさを追求したものであるが、格闘アクションにおいてはキアヌがどんな強敵と戦うのかがシリーズとしての注目のひとつとなっている。
後の続編シリーズでは格闘アクションファンが歓喜するような錚々たるアクションスターたちが出演しているが、最初となる第一弾には次世代ヴァン・ダムの一人であったダニエル・バーンハードがヴィゴの右腕役として出演している。

柔術系のキアヌに対して、打撃系のダニエルは中盤での地下バー戦では得意の蹴り技を連発してキアヌを圧倒するなど見せ場もたっぷり用意されている。
途中退場は仕方ないが、彼が最後まで立ちはだかっていたらまた違う展開だったかもしれない。

熱血刑事の『スピード』、世界的に衝撃を与え賛否を呼んだ人気の『マトリックス』シリーズ。そんなアクション大作に匹敵する新たなヒーロー像をインパクト付けた『ジョンウィック』。
アクションスターたちの復刻の場として格闘アクションファンはその続編制作が発表される度に期待をしてしまう。

かつてスタローンが『エクスペンダブルズ』でアクションスターを復活させてきたように新たなアクション俳優たちの復活起爆剤として本作はおおいに評価されるべき作品である。

評価…★★★★
(ようやくキアヌが地に足がついた格闘アクションができたと感じる作品。鮮やかじゃないのが却っていいのかも)








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