ワイルドな魅力でアクションでも活躍するカート・ラッセル主演のSFアクション作品。

1996年。来る近未来の世界戦争に備えひとつの軍事プロジェクトがスタートした。
『アダムプロジェクト』と名付けられたそれは生まれたての乳児を政府が管理し、人間的な感情などを一切排除し、超人的な特訓と洗脳教育のもと軍に忠実な最強の軍隊を作り上げるもの。
20歳までのプロジェクトでの生存率が数パーセントをきるなか、17年もの歳月を経て完成した兵士たちは冷酷非情で一切の感情も示さない『ソルジャー』と呼ばれた。

その中でも最強と謡われるトッドは数々の戦地や星間侵略戦争で活躍した戦士であった。
そんなソルジャーが活躍して二十数年。あらゆる星との休戦協定を結び、戦いの場がなくなったソルジャーたち。いまだ鍛えているトッドも40歳を過ぎようとしていた。

ある日召集を受けたソルジャーたちはミーカム大佐率いる新型ソルジャーたちと顔合わせをする。
彼らは遺伝子レベルから管理され、教育された進化型で、大佐曰くすべての能力が旧ソルジャー以上のものであるという。

その性能を試すため、比較対象の実験が行われるが文字通りその性能は旧ソルジャーを遥かに上回るものであった。
新型ソルジャーのトップであるケインは群を抜いて能力が高く、最強のトッドすら上回るものであった。
ミーカム大佐はケインの強さを示すためトッドを含めたソルジャー3人と戦わせる。
その強さは歴然でトッドによって片目を潰されたもののケインは三人を瞬殺する。

ケインに敗れたトッドたちの遺体は廃棄物処理惑星へと投棄される。

しかしトッドは瀕死ながらも死んではおらず、目を覚ますのだがそこは日常的に砂嵐が吹き荒れる過酷な環境であった。
あてどなく歩いていくなかでトッドは小さな集落を発見するが、砂嵐にあおられ行き倒れになってしまう。
気を失った彼を救ったのは移民たちであった。

ムーン星を目指していたものの不時着してしまった彼らは50人ほどのコミュニティーをつくり生活していた。
そんな彼らは突如やってきたトッドについて議会を開き彼の処遇を話し合うことに。結局、運ばれたジミーの家でジミーやその妻サンドラたちのもとしばらく様子を見ることなる。

ジミーやその仲間たち、さらに優しく接してくれるサンドラによってこれまで軍を愛し、戦うことしかなかったトッドの心にはひそかに感情が芽生えつつあった。
そして最初は怯えていた住民たちも一部はトッドのことを仲間として受け入れつつあった。

トッドがコミュニティーに入ってから数ヶ月。いまだソルジャーとしての悪夢から覚めやらない日々が続いていたなか、ジミーの屋内に毒ヘビが侵入し、ジミーの息子ネイサンの前にやってくる。
かつてこの毒ヘビの猛毒の後遺症で声を失っていたサイモンにトッドは毒ヘビを瞬時に捕まえ放り投げると毒ヘビの殺し方を教えようとする。

しかしそれに気づいたジミーが毒ヘビを殺す。
状況を把握しないまま、息子の前に毒ヘビを投げたことに強い怒りを覚えたジミー、そしてサンドラはトッドに不信の目を向けてしまう
かくしてこの騒動がもとでトッドはコミュニティーからの追放を言い渡されてしまう。

砂嵐が吹きすさぶなか最低限の食料と手荷物をもってコミュニティーをあとにするトッド。しかし行く宛などあるはずもなく、近くの大きなエンジンの廃墟跡に入って嵐をやり過ごすしかなかった。そんななかでふとトッドは涙を流していたことに気づくのだった。

数日後。ジミーとサンドラの寝るベッドのうえに毒ヘビが侵入していた。
ヘビが鎌首をもたげ噛みつこうとした瞬間、息子のサイモンはトッドに習った技でヘビを排除し駆除してしまう。
サイモンに生きる力を教えていたことに気づいたジミーは嵐が近づくなかトッドを連れ戻そうとコミュニティーの郊外に出て彼を探しに行く。

ほどなくジミーはトッドをみつけ、今までのことを謝り家路につこうとするが、その時上空を巨大な宇宙船が通りすぎていった。
それはミーカム率いる新型ソルジャーたちの船。実戦経験に乏しい新型ソルジャーの戦闘訓練のためこの星にやってきたのである。
ミーカムはソルジャーの訓練のためこの星に住む生命体は皆殺しにするよう命令をしていた。

たちまち始まる新型ソルジャーたちの侵略。
強力な破壊兵器による爆風に飛ばされたジミーは致命傷を負いトッドに家族のことを託して命を落とす。
その頃ソルジャーたちの侵略によってコミュニティーは混乱の極みとなっていた。
話し合いを求めたコミュニティーの議長が目の前で惨殺され、女子供容赦なくソルジャーたちは襲いかかる。
その指揮を務めているのは因縁の相手ケインであった。

コミュニティーに戻ってきたトッドはソルジャーたちを迎撃するため単身挑む。
歴戦の勇士であるトッドは数少ない武器と罠をうまく利用し、襲撃してきた新型ソルジャーたちを殲滅していく。
しかし重火器を用いて蹂躙するケインの前にコミュニティーの住民たちは次々と殺されていく。

新型ソルジャーを全滅させたトッドは遂に暴れまわるケインの前に立ちはだかる。
真の黒幕を前にトッドは因縁の相手ケインとの一騎討ちに挑む。
果たしてトッドは残されたコミュニティーの人間たちを救いだし、巨悪を討ち果たすことができるのか…

独特の世界観がカルト的人気を呼んだSFアクション作品。

様々なジャンルで主演し活躍するカート専用ラッセル。恋愛ものからホラーまで何でもこなせる技巧派な俳優であるが、意外にアクション作品への主演も多い。
パンクなヒーローが脚光をあびた『ニューヨーク1997』やセガールとの共演が話題となった『エグゼクティブエディション』などむしろアクション作品でのいぶし銀な魅力が最近では売りともなっている。

本作では人の感情を失くし、寡黙な殺人兵士という役処からセリフはほぼほぼなし。
しかも見事なまでにビルドアップされた肉体に驚かされる。
このパワフルな肉体を駆使して本作では武骨な格闘シーンにもチャレンジしており、新たな魅力を見せている。

そしてそのパワフルなカート・ラッセルと相対するのが『ドラゴン~ブルース・リー物語』で見事にブルース・リーを演じて見せたジェーソン・スコット・リー。
この作品をきっかけに新たなアジア系アクションスターとして注目を集めていた彼は本作では容赦ない冷酷非情の殺人マシーンを演じている。

もちろんデビュー作でリーを演じた上で修得したジークンドーを基礎とする格闘アクションも健在。
どうしても格闘には不慣れなラッセルに対してそのたぐいまれなポテンシャルをみせており、クライマックスの戦いでは鮮やかな飛び蹴りをラッセルの胸板にぶちこむなど端的ではあるが見せ場もある。

作品全体に漂う荒廃感は本作の原作があの『ブレードランナー』の作者であり、その拘りをいかしたものである。
しかし同じ近未来でも本作はその世界観が効果的に表されているとはいえず、中身はというと同時期に公開されたジャン・クロード・ヴァン・ダムの『ユニバーサルソルジャー』の亜流版のような扱いとされてしまっていた。

アクション的にもその世界観的にも向こうが上だけにそこは時期が悪かったと見るべきだろうか。

アクションは実質、そこまで多いわけでもなく正直いうとラッセルとリーの一騎討ちも意外にあっさりしていて拍子抜けのところもあり。
リーの卓越した格闘アクションがいかしきれていなかったことも本作がそこまでブレイクできなかった要因かもしれない。

無口な子供と感情のないソルジャーとの疑似父子的な描き方も悪くはないのだが、旧型ソルジャーたちがいきなりトッドの指揮下に入り、動くラストの展開など場当たり的な解決にしてしまったのはなんとなく惜しいところである。

珠玉とまではいかないものの、ドラマ性、アクションは散漫しない程度にまとまってはいるので一定の面白さはある作品といえる

評価…★★★
(カート・ラッセルのマッチョぶりとコントのようなキャラ設定。これでもっとアクション良かったらなぁ(^^;)