香港でも活躍した女ドラゴンことシンシア・ラスロック出演のクライムアクション作品。

白バイ警官のダグはパトロールの最中に女性の下着を挟んで走っている不審な車両を発見し追跡する。
すると車のなかからダグを狙って強力な銃火器を発砲。バズーカを乱射し、ダグはバイクごと吹き飛ばされてしまう。

九死に一生を得たダグはスラム街にある施設兼自宅で養生していたところを警察に踏み込まれる。
実はダグが追いかけていたのは巷を震撼させている連続殺人鬼『ビデオストーカー』のものであり、車内から銃創のある女性の死体が発見されたのだった。
その銃創がダグの持つ銃弾と一致したというのだった。

被害者を殺す前に死なされたことでビデオストーカーはダグを標的にし、彼を挑発してきたのであった。
ダグはマスコミにも取り上げられるが、反対にビデオストーカーに向けて挑発するような言動をし、警察への苛立ちを露にするのだった。

そんな暴走ぎみなダグに上層部は彼に相棒をあてがう。配属されてきたのは捜査課より左遷されてきたクリス。犯人をすぐに射殺したことから『早打ちクリス』と揶揄される彼女はダグの難色ぶりも構わず、ビデオストーカー事件の資料集めに奔走する。

世間を震撼させているビデオストーカーの手口は標的となる女性の身辺を調べ、不倫や交際相手とのセックス動画を盗撮、編集したものを被害者に送りつけたあとに拉致して殺害するというもの。既にその犠牲者は13人にものぼり、彼らが作り上げたビデオは闇市場で高値で取引されていて組織的な犯行も疑われていた。

ダグたちは犯人が売り込んだとされる被害者の盗撮ビデオを入手し、その販路経路、そして行動をファイリングし手がかりを掴もうとするのだが、そんななかで彼らは警察組織内にビデオストーカーと繋がっている人物がいるという情報を仕入れる。

内通者の妨害によって捜査が思うように進まないなか、それを嘲笑うかのようにより短絡的にそして残虐性を増して、犠牲者が増えていくなかでダグとクリスは相棒を越えた信頼関係を築きつつあった。

地道な捜査のなかで警察内に巨大な金が動いていることに気がついたダグたちはその不審な動きの先をクリスに依頼。
するとその大金はダグの古くからの同僚であり、いまでは幹部となり課長となったマホーニーの口座へと繋がっていた。
警察内の裏切り者は彼なのか?確かな証拠を掴むためダグとクリスは彼のオフィスへ侵入し、犯人に繋がる標的のリストを入手する。

さらにストーカーはその標的を選別するのに郊外の教会にある懺悔室を利用していたことを発見。 隠されていたカメラを見つけ出し、マスコミを使ってストーカーをあぶり出そうとする。

ニュースを使い、ダグは掴んだ証拠品をもとに追い詰めようとするのだが、ストーカーはメインキャスターのビデオを作り本番中の彼女のスタジオにビデオを送りつけてくる。
動揺しテープをもって控え室に駆け込むアナウンサー、次の瞬間部屋は爆発に見舞われ、ダグの目の前でストーカーの犠牲となってしまう。

あと一歩まで犯人を追い詰めながら目の前で新たな犠牲者を出してしまったことにショックをうけ、意気消沈するダグ。クリスは自分の家に彼を招き入れて、マホーニーへの犯人グループからの不正入金の証拠を掴んだとして諦めないようにと彼を励ます。
しかし追い詰められたビデオストーカーの次の標的は他でもないクリスであった。

屈強なギャングを雇いクリスを拉致するストーカー。不審な車が彼女の家のガレージから出てくるのを目撃したダグは急いで彼女の行方を追う。
内通者であるマホーニーを脅し、強引に彼らの隠れアジトへと向かわせるダグ。

遂に追い詰められた犯人グループとの激しい銃撃戦が始まる。
ダグは囚われたクリスを救いだし、ビデオストーカーとの因縁の決着をつけるため最後の戦いに挑むのだが…

香港アクションよりハリウッドに凱旋したシンシア・ラスロックが挑むサスペンスポリスアクション。

ハイレベルなアクションで一時代を築いた香港レディースアクション。その中の代表格といえるスター女優のひとりがシンシア・ラスロックである。
サモハンより見出だされたその才能は全米空手女子チャンピオンの域に留まらず、サモハンをして最高のアクション女優と言わしめるほどのポテンシャルを香港時代に発揮していた。

過度なアクションがたたり、レディースアクションが下火になりつつあるとその経験値を活かし満を持してハリウッドに凱旋、活気づきつつあったハリウッドのマーシャルアーツアクションに方向性を合わせていった。

しかし、ハリウッドの演出は香港のそれとは全くレベルが違い、シンシアのポテンシャルを全開させるまでには至っていなかった。
というよりハリウッドでの女性マーシャルアーツアクションは思った以上に浸透していなかったのが現状であり、アクションで売ってきた彼女たちもハリウッドスタイルのセクシーさを売りにした女優として活動せざるを得なかった。

本作はシンシアの主演と銘打っているものの彼女は実質のヒロインとしての役柄。本当の主役はというと、かつて80年代にブラックスプロイテーションの王として黒人アクションの草分け的存在であったフレッド・ウィリアムソンである。大味の重火器アクションでマニアな人気をもつ『ブラックコブラ』シリーズの主役でありアクション好き界隈では知る人ぞ知る存在であった。

本作でも他の作品同様、彼のお得意とする一匹狼のタフガイ暴走刑事の役どころで、しかもアルコール依存症で禁酒サークルに誘われているというおまけ付き。
軽口暴言叩きながらのノリは相変わらずである。

その昔は『ドラゴンを消せ!』などでもっさりながら格闘シーンをやっていたフレッドではあるが、かなりガタはきているためか、殴り合いメイン。というよりは雑魚相手に圧されてしまうところも。そのため自ずとガンアクションメインとなってしまう。
その格闘アクションのテコ入れとして起用されたのがシンシアといったところだろうか。

しかし、本作のシンシアのアクションは他の出演作品と比べてもその格闘アクション自体が少なめ。それどころか屈強な男一人にやり込められ捕まってしまうところも。
変にフレッドと恋仲になるようなことを匂わせる描写もあって、多少お色気路線も加味している様子。

クライマックスになってようやくギャングの部下相手に格闘シーンがあるものの、全くキレがなくて這いつくばる大男の顔面を蹴りあげるところくらいしか見せ場がない。
このためシンシアのいつもの躍動感あふれるキレキレの格闘アクションを期待すると肩透かしどころか大やけどの恐れもあり(^^;

連続殺人鬼とフレッドの最終対決もあっけなくてまさにフレッド節ここにありといったところ。製作や監督も務めるフレッド・ウィリアムソンはスタンダードなガンアクションこそ得意分野ではあるが、こと格闘アクションにおいてはあまり得意ではないのかもしれない。
凱旋したシンシア・ラスロックの使い方も勿体なく、ファンや地雷アクション好き以外にはなかなか厳しめの作品といえるだろう。

ちなみに題材のハーレーは冒頭10分くらいであとはラストまで出てこないのでバイクアクション好きにもケチがつきそうなとこである(笑)

評価…★★
(女ドラゴンをセクシーなヒロインに使いたい。それが仇となりアクションのレベルが…)