若きスコット・アドキンスが発掘されるきっかけとなったコマンドアクション作品。

ドン・ハーディング少佐率いるアメリカ合衆国特殊部隊『スペシャルフォース』。たぐいまれな戦闘能力をもつ彼らのチームはアラブのテロ組織にとらわれていたアメリカ軍将校を見事なチームプレーで救出し、敵を壊滅に追い込んだ。

その頃ロシアの辺境の独裁国家であるムルドニア共和国。囚われたSASのエージェントと共に村を訪れたムルドニアの軍司令官のレフェンデックはその土地に住む現地人ケベッキー人たちを集め、一斉射撃して虐殺していた。
その非道な様子をカメラで隠れて撮影していた米国人ジャーナリストのウェンディだったが、レフェンデックに見つかり、囚われの身となってしまう。

同行していたジャーナリスト仲間や捕囚となっていたエージェントは彼女の目の前で殺害され、ウェンディ自身も人質となってしまう。

レフェンデックは彼女を政治的脅迫の道具とし、彼の仲間の釈放と法外な身代金を要求してきた。

事態を重くみた政府はハーディングの部隊に彼女の救出を依頼する。準備を進めるハーディングであったが、敵であるレフェンデックはかつてボスニア内戦時に部隊が罠にはめられ、ハーディング一人残して全滅。自らも囚われて酷い拷問をうけており、復讐を誓っていた相手であった。
チームメイトのジェスから指摘を受けるが、あくまでジャーナリスト救出任務最優先をドンは頑なに誓う。

ムルドニア国内に入ったドンたちは情報係であるサイラと接触を図るが、その待ち合わせの最中にレフェンデックの兵と遭遇する。
一触即発の緊張が高まるなかでやってきた女性によってその危機は回避されたが、その女性こそ情報係のサイラであった。
そんな彼らを狙撃スコープで狙っていた男がいたことはまだ誰も知るよしもなかった。

隠れアジトに招かれたチームはそこが虐殺されたケベッキー人の孤児たちの学校であることを知る。
独裁者によって毎日が命の危険と隣り合わせという環境にドンたちは同情するしかなかった。

一方、ムルドニア大統領に呼びだされたレフェンデックはその残酷性を指摘される。
しかし野心深きレフェンデックは反対に大統領の側近を撃ち、穏和に済ませたい彼をよそに既にアメリカを脅迫していることを伝え、戦争も辞さないと腹を括るように脅しをかける。

サイラを連れ、敵の情報を集め始めたドンたちは車を追ってくるバイクに気がつく。
何とか追跡をふりきったもののムルドニア軍の検問にかかるドンたち。
銃器を隠しやり過ごそうとするも、隠し場所を調べられそうになり思わぬ戦闘となってしまう。隠密に倒そうとするが銃を向けられたドンたちを救ったのは彼らを追いかけてきたバイクの男であった。

隠れアジトにやってきた彼の名はタルボット。英国陸軍SASの隊員であったが、レフェンデックによって相棒を殺害され、私怨で彼への復讐を誓っている男だった。
土地勘のある彼にドンは協力を求めるのだが、あくまで個人的復讐に拘るタルボットはその申し出を拒否し、一人出ていく。

仕方なく、チームのみでウェンディの救出作戦を遂行するドンたち。
サイラの道案内で軍の輸送バスを強奪した彼らは彼女がとらえられているとされる施設に潜入を試みる。
静かにそして確実に敵を葬るドンたち。タルボットも参加して、ウェンディを助けた彼らは難なくミッションを終えるのだが、隊員のベアはこの終わりかたに一抹の不安を感じていた

その頃レフェンデックはドンたちが拠点としていた隠れアジトを強襲。大勢のケベッキー人の子供たちを捕虜にし、抵抗したサイラを射殺する。
戻ってきたドンたちはその様子をただ見守るしかできなかった。

後悔が残るなかでウェンディを救出し、ムルドニアから脱出を図るドンたち。
私怨のために残るタルボットと別れ、救出チームが指定した場所へと急ぐ彼ら。
救出ヘリが近づき着陸寸前となったときヘリはドンたちの目の前で撃墜されてしまう。
既にレフェンデックが罠を仕掛けて待ち受けていたのであった。

軍用トラックを盾に抵抗するドン達であったが敵の数に次第に圧され、一人また一人と敵の銃弾の前に散っていく。
銃声を聞いたタルボットが向かうのだが、ドンたちは重傷を負ったワイアットを残し全滅。ウェンディは囚われ、ドンもレフェンデックの手に落ちて捕虜となってしまう。

ワイアットがレフェンデックの拷問に苦しむなかで、ひとり残されるドン。
しかしその絶望的な状況からひとりタルボットは彼らを救うべく強大な敵のアジトへ潜入し、ドンたちを救出にむかう。
囚われていたドンを救いだし、たった二人でレフェンデックへの逆襲の狼煙をあげると、二人は絶対的不利ななかで最後の戦いにうって出るのだが…

スコット・アドキンス初の大役となったミリタリーアクションの佳作。

B級アクション界隈では黄金のコンビと呼ばれるアイザック・フロレンティーンとスコット・アドキンス。
ハイレベルな格闘アクションがみたいときは先ず間違いないコンビであるが、何を隠そうその黄金コンビのきっかけとなったのが本作である。

この頃のスコット・アドキンスはいわゆるスタントマンであり、ダブル俳優であった。
スタントマンや格闘アクションのチョイ役としてジェット・リーやジャッキー・チェンと協力し絡み合うなど着実に実力はついてきたもののブレイクとなる起爆剤となる作品には出会えていない状況であった。

本作の主演はコマンドアクションもので武骨なアクションをみせるマーシャル・ティーグ。意外にも格闘アクションにも覚えがあるようで、素早い近接格闘や回し蹴りなどもみせてくれている。
クライマックスでも宿敵を相手になかなかアグレッシブな格闘シーンをみせており、ミリタリーアクションとしては肉弾戦が多めなのも格闘アクションファンにはうれしいところ。

しかし何といっても本作最大の見所は脇役であるはずのスコット・アドキンスである。
潤主役とはいえ、その速さ、強さ、インパクトどれをとっても主役以上の活躍といっても過言ではない。
そのスコット・アドキンスは出てきて早々に三段蹴りや二回転旋風脚などハイレベルそすぎる技を披露。

その最大のポイントとなるのがクライマックスでの敵の右腕幹部との死闘であろう。
ここでみせるスコットのテクニやック、スピードはまさに超人的。敵役の身体能力も段違いで、長身から繰り出される回し蹴りや飛び蹴りはアドキンスにも負けない速さとタフさである。
この死闘の振り付けをしたのは日本の特撮ヒーローを監督も手掛ける日本のスタントチーム『アルファチーム』で、アクロバティックな殺陣とハイレベルな格闘アクションを得意としており、香港カンフーを非常にリスペクトしている感は全体的にかもしだされている。

アドキンス自体が☺️まだ三十代に差しかかったころで仕上がりは相当なもので、そのキレもまさに2倍速の動きをみているかのよう。
個人的にはアドキンス作品の格闘シーンベスト3にはいる仕上がりといっても過言ではないだろう。

目立ちすぎる脇役のせいですっかり影の薄くなったマーシャル・ティーグは可哀想ではあるが、部隊のメンツをみても動ける人間が多く、ことミリタリーアクションでなくてもレベルの高い格闘シーンにはなっていたはず。

ストーリーとしては王道の救出作戦ものだが、題材にあるアラブテロは冒頭5分強くらいで、実際は仮想ロシアを敵国とした内容。
題材に偽りがあるのは難があるが、アクション映画としては申し分ない内容。
敵のキャラだちもしっかりしており、主役が目立てない以外は見応えある格闘シーンが楽しめるコマンドアクションの掘り出し物といえる

評価…★★★★
(格闘超人と化したスコット・アドキンスが独り舞台状態。旋風脚も二割増しです)