ショウブラザーズきってのアクション女優、クララ・ウェイ主演のコメディ風カンフーアクション。

ユー家の当主ヤンサンは重病で余命幾ばくもなかった。その莫大な遺産を狙って悪辣な弟ユー・ワイがヤンサンに脅すように迫っていた。
村の人々を暴力と恐怖で支配しようとする弟に遺産を渡せばとてつもない悪事を働きユー家の名声は地に落ちかねない。

ヤンサンは長年使用人として実の娘のように可愛がってきたチン・タイナンを妻にし、弟の力を牽制しつつ、その遺産を甥であるチンチュンに相続させるため自身の死後、タイナンを彼の住む広州へと向かわせる。

商人でありながら常に拳法の鍛練に明け暮れるチンチュンのもとに叔母であるタイナンがやってくるいう報せがやってくると、チンチュンは港へと出迎えに行くのだが、大叔母となるタイナンの若さと美しさに呆気にとられる。しかしタイナンはその武術の腕は確かで、ナンパで絡んできた男たちを一瞬にして倒してしまう実力を持っていた。タイナンの強さを目の当たりにしたチンチュンは自分の屋敷に丁重に招き入れるのだった。

タイナンがチンチュンの部屋で休んでいると香港に留学しているというチンチュンの息子、アータオが友人を連れて家に帰ってくる。
父親を驚かそうと部屋に忍び込むとそこには見たことのない女性の姿が。あわてふためくアータオ達にタイナンは自分はチンチュンの叔母になるというのだが、その若さから信じるはずもなく、アータオはタイナンと腕比べを始めてしまう。チンチュンが大切にしている骨董品や位牌を破壊しまくりながら、タイナンと戦うアータオだったが、騒ぎをきき駆けつけた父親からほんとの大叔母になることを知らされ、アータオは驚きを隠せずにいた。

失礼な態度にタイナンはチンチュンにアータオへの鞭打ちなどの罰を命じるのだが、過保護なチンチュンと姑息なアータオは罰を受けるふりをしてタイナンを誤魔化すのであった。
香港での外国人の生活スタイルを経験しているアータオにとっては年もそれほど違わないタイナンが大叔母というだけで自分に偉そうな態度をとるのにどうしても納得がいかなかった。
そしてそれは古き家長主義のもとに育ってきたタイナンもまたアータオの自由すぎる態度に不満を抱えていた。

翌日。
タイナンは街へ買い物に出掛けることに。チンチュンは彼女が危険な目に会わないようにアータオをそばに連れていかせる。
何もない田舎で育った彼女にとって、発展した広州の街並みはカルチャーショックであった。そして最新のファッションに興味津々のタイナンはアータオとはぐれて店のなかに入り込んでしまう。お客に『田舎者』と揶揄されたタイナンは怒りをグッとこらえて衝動的に展示されていたチャイナドレスを買ってしまう。

メイクも直して外に出るとその妖艶さから人だかりができるほど。気をよくしたタイナンは街を闊歩するが慣れない高いヒールのせいで転げそうになり、それがもとで喧嘩沙汰に発展、喧嘩の傍観をしていたアータオも相手がタイナンであることを知ると、助っ人として巻き込まれる形となる。二人は張り合うように喧嘩相手を倒していくのだが、そのボロボロになって帰ってきた様子をみたチンチュンは呆れ返り、家長を喧嘩に巻き込んだアータオを激しく叱責するのだった。

甘かったチンチュンまでタイナンの肩を持つことに腹立たしいアータオが人形相手にあれまくっていると、悪友のジェームスたちが彼女が田舎出身であることを利用して、仮装ダンスパーティーに彼女を招待し恥をかかせてやろうとけしかける。
さっそく部屋で佇むタイナンを小気味いい音楽とダンスで興味を引かせるアータオ達。
彼女のプライドの高さを利用してチンチュンに内緒でダンスパーティーに誘い出すことに成功する。

しかしその噂を聞きつけ、チンチュンのもとにある遺産の権利書と遺書を狙うユー・ワイの一味がこれを盗み出すため、暗躍を始める。
ユー・ワイの義理の息子アーダは彼らがダンスパーティーにいっている先で騒ぎを引き起こして警察に逮捕させ、チンチュンが彼らを釈放しに向かった隙を狙って盗み出す作戦を企む。

ジュリエット姫に仮装したタイナンとロビンフッドに仮装したアータオはダンス会場につくとさっそくタイナンをホールへと連れ出し、仲間たちと踊らせる。
訳も分からぬまま振り回され、フラフラになるタイナンにほくそえむアータオ達。しかしそこに三銃士に扮したアーダ達が乱入し、フラフラのタイナンに襲いかかる。

仲間ではない人間の乱入に気づいたアータオ達はタイナンを狙う敵と大乱戦を繰り広げるのだが、そこにユー・ワイに買収された警察が乱入し、証拠不十分なままタイナンとアータオだけを逮捕して連行していく。
報せを受けたチンチュンが釈放のために警察へと向かい、何とか二人を取り戻すのだが、帰ってくると使用人が縛りつけられ、部屋を荒らされた挙げ句に遺産の相続の権利書と遺書は何者かに盗まれていた。

ユー・ワイが仕組んだ罠だと気づいたチンチュンは遺産を取り戻すため、残りの兄弟達に声をかけ、ユー・ワイから権利書を取り戻す作戦をたてるのだが、彼の屋敷には危険なトラップが仕掛けられていた。
さらに多勢の部下を相手するためには個々が強くなる必要がある。
タイナンはチンチュンの兄たちを鍛え上げて対抗しようとするが、高齢な彼らに期待をするのはあまりにも危険であった。

その夜、アータオは一人ユー・ワイのもとに忍び込もうとするとやはりタイナンも同じ想いで忍び込もうとしていた。それぞれに今回の事件の責任を感じていたのである。
地雷や飛び矢などの罠を掻い潜った二人は遂に屋敷内に侵入するが、ユー・ワイも彼らがくることを察知し、大勢の部下で待ち伏せをしていた。

獅子奮迅の戦いを見せるも多勢に無勢、タイナンは捕まり、アータオはユー・ワイに他の兄弟達も連れてこいと挑発され、帰される。
失意のうちに帰ってきたアータオがみたものは決死の想いを秘めて立ち上がったチンチュン率いる兄弟たちであった。

タイナンを救い出すため、ユー・ワイの屋敷に再び乗り込むアータオたち。
他の兄弟たちが部下たちを引き付けている間にアータオとチンチュンはユー・ワイの待つ奥部屋へと向かう。
囚われたタイナンを救い出そうと奔走するアータオは敵の攻撃を受けながらも彼女の脱出の手がかりを作り出す。

そしてユー・ワイの右腕たちを何とか倒したチンチュンは他の兄弟やタイナンが見守るなか、遺産の全てをかけてユー・ワイとの一騎討ちに挑む。
果たして莫大な遺産をめぐる死闘の行方は…

アクション女優クララ・ウェイの代表作ともいわれるコメディカンフー作品の秀作。

数多いるアクション女優のなかでもミシェル・ヨーと双璧をなすといわれたほどアクション巧者といわれたクララ・ウェイ。近年数十年ぶりに本格アクション作品に復帰して、80年代の香港アクションファンから喝采を浴びた。

元々ダンサーであった彼女は本作の主演であるラウ・カーリョンに認められショウブラザーズに入り、アクションだけでなく、その美貌や表現力でもショウブラザーズトップの女優として躍進。ショウブラザーズが解散したあとはジャッキー・チェンのプロデュースするレディースアクションもので出演し、アクション女優としての頂点を狙う存在であったがなぜか失速。近年では性格俳優として脇役中心でも存在感を示すようになったが、アクションから離れたころは迷走し、セクシー系演技にシフトチェンジしたり、いきなりヌードになったりと波乱万丈な俳優人生をおくってきた。

本作はそのクララ・ウェイが最もアイドル風に輝いていた頃の作品で、本格的なカンフーアクションもさることながら、彼女のそのアイドル的な魅力も最高潮であった。
最たるところはクララ・ウェイがみせるコスプレ三昧。田舎娘風の可愛らしさから一転、スリット深めのセクシーなチャイナドレスに身を包んでパンチラを危惧しながら格闘したり、果てはロミオとジュリエットの王女風スタイルでカンフーしたりとサービス満点。
着替えのシーンではスラリと伸びた美脚とスベスベの背中まで見せてくれる。
そしてクライマックスでは女刺客風の王道スタイルでやはり強くて美しいなぁと再確認させられる。

血生臭い物語が多いショウブラザーズの作品のなかでは珍しくコメディ強めの作品で、人が死なないのもかなりレア。ラウ・カーリョンの愛弟子シャオ・ホウがルー大柴なみの西洋かぶれ英語を使っているのがなかなかにウザく思えるが、このシャオ・ホウのウザすぎる西洋文化の押し付けとクララ・ウェイの田舎臭さの織り成すカルチャーギャップが本作のコメディの骨子といえるだろう。
そこで翻弄されるラウ・カーリョンたちもなかなかのコメディアンぶりである。

アクションにおいても後半まではクララ・ウェイとシャオ・ホウが中心。
アクロバティックな動きを互いに見せつけ、西洋風のマーシャルアーツを駆使するシャオ・ホウと伝統的な中国武術を駆使するクララ・ウェイとのどや顔合戦はしつこすぎるくらいである。
そんな中でも後半ではカンフー巧者唐偉成とテコンドーキッカー、権永文との一騎討ちはかなり見ごたえあるものとなっていた。
そんな活躍を見せたクララ・ウェイであるが、ラストの大乱戦では全く参加していないのが残念なところ。

90年代作品では署長役など名脇役で知られるチョー・ダッワーらがカンフーアクションをみせるなどクライマックスにおいては若手よりもおっさんたちがはりきってしまっている。
中でもラウ・カーリョンはこれまで控えていたのに関わらず、最後は唐偉成、権永文を撃破してラスボスの王龍威と死闘を繰り広げる。
この王龍威戦はこれまでのコメディ風の味付けを一切無にしてしまうくらい、凄まじいスピードと迫力で展開されており、ここだけ次元が違う感じになっている。

当初はクララ・ウェイのアイドル的な魅力とカンフーを楽しむはずが、終わってみれば『ラウ・カーリョンヤバい!』と刷り変わるくらいのインパクトとなった。

現在では味のある熟女俳優として活躍しているクララ・ウェイだが、そんな彼女は実力的にもカンフー界のトップアイドルだったことを確認できると共に、底知れぬ身体能力のラウ・カーリョンのスゴさをまざまざと再確認させられた秀作である。

評価…★★★★★
(シャオ・ホウのお友だち役でカンフーをしないお髭はやしたゴードン・リュウの怪演にも注目)