ショウブラザーズの黄金期を支えたカンフースター、デビッド・チャン主演の少林寺もの。



清朝に反旗を翻し、『反清復明』を支持する少林寺。
彼らは打倒清を悲願に寺でも一番の使い手である至善を少林拳の奥義を極めるため武当山に送る。

至善は無塵道人のもとで血のにじむよう修練を重ね、奥義を修得。さらに清の軍勢を倒すための武器の開発書を手に入れ、確かな成果をもとに少林寺へと戻っていく。

しかし少林寺内の内通者によって清の軍勢が少林寺を強襲。
僧たちは奮闘するも爆弾などによって通路を塞がれ虐殺されていく。修業から戻ってきた至善が見たものは清によって焼き討ちされ炎に包まれる少林寺であった、

一人生き残った至善は瀕死の管長から少林寺の再興を託され、南の広東へ渡り、少林寺復興の資金のための托鉢と打倒清の志を共にする仲間集めに奔走する。

一方、武当山では無塵道人の弟である白眉道人が清に加担し、無塵を差し置いて道教の最高位として君臨すると毒を用いて無塵を暗殺。
無塵の弟子である五娘は白眉から逃れるため山を下り、至善と共に白眉道人への復讐を誓う。

広東で地道に托鉢活動を始めた至善は資産家である李を助けたことから、少林寺復興への資金の糸口を掴む。
さらに李の甥であるタンルンは至善の強さに心服し、弟子入りを志願。彼をきっかけにやがて童千欣や洪熙官ら若き武術家たちが至善の志に賛同し仲間として集まってくる。

だが白眉道人の追手たちもまた至善を暗殺しようと広東へ近づいていた。
白眉道人たちは清と結託し、至善を庇護する広東の財産家たちを脅迫し、李を見せしめに殺害すると至善を朝廷に差し出すようせまる。

清の軍勢の刺客を撃退しながらも徐々に白眉道人たちによる至善の包囲網は狭まりつつあった。
そして至善は遂に福建にわたって南少林寺の再興へ着手するため広東からの脱出を計画する。
しかし広東の道は彼を捕まえようと待ち受ける清の軍勢で占められていた。

葬列に扮して脱出を図るも怪しまれ、結果強行突破する至善たち。
船での脱出を図るなか、そこに待ち受けていたのは白眉道人であった。

強力な技を持つ道人相手に、なす術もない仲間たち。至善は無敵を誇る白眉道人に最後の戦いを挑むのだが…

少林寺作品でよく取りあげられるショウブラザーズお得意の『少林寺焼き討ち』と『広東十虎』ものカンフー作品。

本作の主演はジミー・ウォングが離れた後のショウ・ブラザーズにおいて第2のスターとなったデビッド・チャン。少年のような顔立ちと素早い格闘で人気を博した。
同時期の後に『男たちの挽歌』で再ブレイクを果たすティ・ロンとの黄金コンビはジミー・ウォング以上の人気を博し、ショウブラザーズの第二次黄金期の立役者としてカンフー映画ファンからは知られている。

アクロバットが得意なデビッド・チャンは本作においてもその身体能力をいかした軽業師のようなアクションとショウブラザーズお得意のしっかりしたカンフーアクションは健在で、気持ちいいくらいバシバシと決まる型のカンフーは見応え十分。

敵方は少林寺もの作品では著名なラスボス白眉道人パイ・メイが登場し、当たり役であるロー・リエが本作でも担当。不気味かつ無敵の強さでその存在感もバッチリである。

なおこの白眉道人というキャラクターは『滅清興明』を扱った少林寺作品では必ずといっていいほど起用される強敵で、後にクエンティン・タランティーノらが『キル・ビル』など自身の作品に重用したり、カンフーマニアなヒップホップグループ『ウータンクラン』が絶賛するなどカルト的人気を誇った。

ショウブラザーズにおける『広東十虎』ものであれば通常はダイナミックな殺陣などが売りとなるのだが、本作はそこまで大規模な集団戦は描かれていない。
まあ十虎に起用された俳優たちがマニア向けで著名でなくクンフーもそこまで素晴らしくないからだろう。完全にデビッド・チャンの前菜となっているのが残念である。

ストーリー的には少林寺焼き討ちから広東十虎集結などかなり歴史的にも大きな出来事を取り扱っていながら80分強と短い時間で詰め込んでいるため、作品自体のカタルシスが薄いのは致し方ないところ。
なにやら駆け足で振り返る的な作りなので広く浅くこの辺りのカンフー作品の歴史を知る意味では適していると思うが、ドラマ性を求める人には物足りないだろう。

デビッド・チャンの利発な魅力とアクションは十分楽しむ上で、その歴史を楽しむための入門編となる作品としてオススメしたい

評価…★★★★
(展開も早いし、脇役は知らないがカンフーアクションとしては及第点。)