ダニー・トレホやマーク・ダカスコスなど新旧B級アクションスターたちが会して作られたポリティカルアクション作品。

冷戦終結後、かつてないほどに冷えきった関係となったロシアとアメリカ。
そんな中で、両国との間に秘密裏に国を越えた外相会議が計画されていた。
このため、ロシア側の秘密諜報部FSBとアメリカのシークレットサービスは彼らの警護のために両者の精鋭たちが選出され、即席ながら合同の警護チームが結成される。

ロシアからは現場の経験こそ浅いが、実直で冷静沈着なマキシムがチームのリーダーとして抜擢される。
そしてアメリカシークレットサービスからは女エージェントのケイティたちが加わり、来る外相会議に向けての準備が進められていった。

その頃犯罪組織のリーダーのトニーは何者かの依頼によって、ロシア国家転覆の作戦を受け、傭兵たちと共に軍事テロを画策する。

いよいよ世界各国の平和を占う外相会議のため、外務大臣のジェイコブスを乗せた特別旅客機がモスクワに向けて出発する。
しかしその旅客機の中にはジェイコブスの孫娘であるブリトニーが紛れ込んでいた。
彼女はジェイコブスには内緒で、モスクワに住む彼氏と会うため隠れて乗っていたのである。

そうとは知らないジェイコブスはケイティたちにブリトニーのボディガードも命じるのだった。

ロシアについて早々にテロリストたちの不審な動きを察知したロシア政府側は会談の中止を示唆するが、ジェイコブスは会談を強行することを決め、ヘリコプターでの会場への移動を提案する。

トニーたちはその情報を仕入れ、ロケット弾での暗殺計画を遂行するのだが、冷静な判断を下したマキシムの活躍ですんでのところで爆撃を回避し、無事会場へ到着することに成功する。

暗殺を失敗したトニーたちはとある情報筋から手に入れたジェイコブスの孫娘ブリトニーが一緒に来ていることを利用して、彼女を誘拐して会議自体を破談にさせようと企む。

折しもブリトニーは自分を見張るチームの隙をついて抜け出し、彼氏のところに会いにいってしまう。
ブリトニーがいなくなったことに気づいたマキシムたちは彼女がテロリスト達に拐われたと思い、それがジェイコブスにバレてしまうことで会議が決裂となることを防ぐため、秘密裏で彼女を助け出す作戦を立てる。

もしものことを考え、ケイティにブリトニーのようなカッコをさせ、チームで協力してトニーたちの行方を追う。
一方、ブリトニーを拐おうと彼女を探すトニー達も街中に紛れ込んだ彼女をみつけるどころか、マキシムたちの追跡で思うように動けなくなっていた。

会議が進み、その交渉が続くなかで、マキシムたちは遂にトニーたちが潜むアジトを発見。
マキシムやケイティたちはブリトニーを救出するためトニーたちに決死の突入作戦を遂行する。
そして背水の陣のトニーたちもこれを迎え撃つ。

マキシムたちは極悪なテロリストたちと対峙し、最後の死闘に挑むのだが…

名だたるB級アクションスターが顔を揃えた『エクスペンダブルス』的コマンドアクション作品

シルベスター・スタローンがアクション俳優たちを集め、企画した『エクスペンダブルズ』が大ヒットをとばしてから数年。アクション映画界ではかつて活躍したアクションスターたちを何人か集めて共演させていくという夢の共演ものいわゆる『エクスペンダブルズもの』が流行した。

その恩恵をうけたものそうでなかったもの色々とあったが、このブームがあったおかげで2000年代に全盛期あった格闘俳優たちが、いま再び脚光を浴びる形になってきている。

本作もそういった『エクスペンダブルズもの』のひとつであり、新旧のアクションスターたちの共演がひとつの売りとなっている。
ちなみに本作は主演であるアレクサンドル・ネフスキーをはじめ、マーク・ダカスコスらも出ていることから、ネフスキー主演の『ショウダウン』と同時期の撮影だったと思われる。

まず何よりも目につくのが豪華なスターたちの共演。
ロシアのシュワルツェネッガーと称されるアレクサンドル・ネフスキーはさておき、ヒロインとして『X-MEN2』のケリー・フー、顔面凶器のダニー・トレホ、外務大臣役にエリック・ロバーツと玄人受けする面々のほか、悪役側にはマーク・ダカスコスを筆頭にその右腕として白い重戦車マチアス・ヒューズ、ウィリアム・ボールドイン、そしてやたらエロい上官にバイ・リンと未公開洋画アクションファンならばにやけの止まらない起用ばかり。

この祭り状態のなかで主役をはるのが前述したアレクサンドル・ネフスキーであるが、設定としてでかくて紳士的という弱いものしかなく、印象に残りづらい。

ストーリー的にも犯罪アクションが軸にありながら、どうしてもコメディをいれていきたいらしく、そのためか敵も味方も全くもって緊張感がないのが残念なところ。
特にマーク・ダカスコスの設定は元アクション俳優で、途中で一般人に見つけられるとジェット・リー等に間違えられるという下りの部分が非常に野暮ったい。
登場する人物も多いためかキャラクターの渋滞も起こっていて、とりわけマーク・ダカスコスだけ明らかに異質な仕上がりとなっている。

アクション面においてはこれだけ登場しておきながら、全てにおいて大味。
ネフスキーは『ショウダウン』の時よりも動かなくなっていて、基本はターミネーターのように不動で攻撃を受けてカウンターという形。
クライマックスではマチアス・ヒューズ、マーク・ダカスコスと連続対戦なのだが、マチアスとはもっさり同士で見せ場的にはなく、ラスボスのダカスコスとの戦いは、あまりの噛みあわなさに苦笑するしかない。

ケリー・フーもマーシャルアーツ女優としては物足りなさの残る扱いで、思ったほどの活躍は見せてない

そんな中でひとり気をはいているのがマーク・ダカスコス。
今回は元アクション俳優出身という肩書きもあり鮮やかなスピンキックやら飛び蹴りも見せてくれているものの相手がモッサリなネフスキーなためポテンシャルを発揮するまでもなく、終わってしまうのが残念である。

豪華絢爛なスターたちの集まりはそれだけで心も踊るのだが、ジャケ写の写りからするとだいぶジャケ写詐欺と呼ばれても致し方ない内容と思われる。

おおよそマニア向けの一般ウケはしないないようなアクション作品ではあるが、流行りをおさえる作品群のひとつとして観ておいてもいいだろう。

評価…★★★
(変なコメディ要素をいれてるおかげで全てが滑っている感の作品。ダカスコスのアクションも報われない)

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