現在も第一線でアクションを続ける、レジェンドアクションスター、シルベスター・スタローン主演の人気コマンドアクションシリーズ第一弾。
ベトナム戦争終結から7年。
元グリーンベレーのベトナム帰還兵ジョン・ランボーはかつての仲間たちを訪ねて放浪の旅をしていた。
最後の戦友、バリーのもとを訪ねたランボーはそこでバリーが戦争で使った枯葉剤がもとでガンを患い亡くなったことを知る。
最後の戦友の死を聞きあてどなく歩く彼は山間の小さな町で食事を取ろうとするが、街の入り口にきた保安官のディーズルは彼の見た目からトラブルメーカーと判断し、偏見から街を出ていくようにと高圧的な態度で彼に告げるとパトカーに乗せて街の外れに追い出す。
しかしランボーはディーズルの不遜な態度に反目し、来た道をたどり街へ戻ろうとする。
それを見たディーズルは反抗的な態度から彼を浮浪罪として拘束し、さらに彼の手持ちの大型サバイバルナイフの所持から逮捕して保安官事務所へと連行する。
取調室での尋問にランボーはベトナムでの捕虜時代のことをフラッシュバックさせていた。
そんな彼を保安官たちは取り調べに協力的でないと高圧的な態度で接し、警棒をあてがったり、消防用のホースからの放水を頭などに浴びせるなど拷問に近い嫌がらせを仕掛ける。
そしてランボーの髭を剃るために羽交い締めにしてシェービングクリームもつけずに研いだ剃刀を顔面に近づけようとしたときに拷問されたことが激しく脳裏に甦るとその場で保安官たちを素手で殴り倒し、押収されていたサバイバルナイフを奪い返して事務所を脱走する。
民間人からバイクを奪い、山へと逃げるランボーを追ってディーズルはパトカーで執拗に追いたてるが、悪路のためにパトカーは横転しランボーは山へと逃げてしまう。
ディーズルは仲間を集め、山へ逃げたランボーを追って山狩りを開始。
その頃照会からランボーが元グリーンベレー出身であることが判明していた。
ゲリラ戦の英雄を相手に山狩りをする仲間たちの間で動揺が走るが意地になったディーズルはヘリコプターまで駆ってランボーを追い詰めようとする。
彼らの包囲をうけ、追い詰められたランボーは絶壁にぶら下がるが、そこにディーズルの仲間ガルドが乗ったヘリが近づく。
しかしガルドは反抗的だったランボーに対して異常な敵意をもち、絶壁に掴まるランボーを撃ち殺そうとライフルで彼を狙撃する。
追い詰められたランボーは絶壁から決死のダイブをし、腕に裂傷を負う。
更に狙撃してくるガルドにたいしランボーはヘリのコクピットに石を投げるとヘリはバランスを崩し、放り出されたガルドは岩へ落下し墜落死してしまう。
ランボーは追いかけてくるディーズルたちに降伏と和解の意思を見せるのだが、ガルドの死体をみたディーズルたちはランボーに向かって一斉射撃し、顔面かすめたランボーは山奥へと逃げるのだった。
あとにはひけなくなったディーズルたちはランボーに宣戦布告し、本格的な山狩りを開始する。
しかし自然を使った縦横無尽なランボーのゲリラ戦を前に警官隊はひとりまたひとりと罠にかかって重傷を負い、ディーズルは不意打ちにきたランボーに脅され手も足も出ないまま撤退させられる。
警官隊が翻弄されたことにより、小さな町はランボーの話題で大騒ぎとなり、遂に彼を制圧するために州兵たちが動員されようとしていた。
メディアも動きだし、恥の上塗り状態に不満なディーズルは自分達でランボーを仕留めると鼻息を荒くする。
そんな彼の様子を制するかのようにひとりの軍人がランボー逮捕の前線基地内にやってくる。
トラウトマンと名乗る男はランボーと同じ部隊で戦った上官であり、彼を作り上げた人間であった。そして唯一ランボーが信頼する人間であった。
彼の状況を探るため、トラウトマンは通信を図るのだが、ランボーは答えはしたもののディーズルたちが先に仕掛けてきたといい、通信を切ってしまう。
州兵によるランボーの制圧作戦は遂に実行となった。
彼が潜んでいる廃墟壕を囲むとディーズルが生け捕るため発砲を止めたにも関わらず、彼に恐れをなした兵たちは一斉射撃を開始し、さらにロケットランチャーで壕を爆破させて崩壊させる。
瓦礫とかした壕の上でランボーを爆死させたと気勢をあげる州兵たちだったが、地下道へと逃げ延びたランボーはドブネズミに襲われながらも地下水道をぬけ、壕の裏側に脱出。
獣道から林道を走る軍用車を強奪し街へ向かう。
ランボーがまだ生きていることを知ったディーズルは街の入り口を警官隊で封鎖しようとするが、ランボーはそれを強行突破し、街の中心へと向かっていく。
バーで飲んでいたトラウトマンに対してディーズルは憎々しげにランボーを殺害してやると息巻き武装して警察署へと立て籠る。
するとランボーは街のガソリンスタンドを爆破して警察と消防隊を足止めすると次々と電線や変電機を破壊、その様子をみたディーズルの居場所を突き止めたランボーは警察署へ乱入し、マシンガンを乱射する。
遂にディーズルを追い詰めたランボーは怒りの銃口を彼に向けるのだが…
後に『ロッキー』と双璧をなす代表作としてスタローンの代名詞となったコマンドアクションシリーズ第一弾。
『ランボー』シリーズといえば主人公ランボーの超人的な攻撃力とその無双ぶり、そして荒唐無稽な戦闘シーンが売りの人気コマンドアクション作品であるが、人間離れした戦闘シーンの目立つ続編以降と比べ、第一弾となる本作はド派手な戦闘シーンはクライマックスまでは押さえめ。
とにかく派手に爆破して撃ちまくるといったガジェット頼みの空気感ではなく、全体的にシリアスで重厚感のある作風になっている。
それもそのはずで本作は元々はディヴィット・マレル原作の『一人だけの軍隊』という小説の実写化。
これを映画化するために主役には紆余曲折があったようで、当初はクリント・イーストウッドやスティーブ・マックイーン、ジョン・トラボルタらが主演候補に名前が上がっていたという。
結局のところ『ロッキー』以降低迷していたスタローンが抜擢されるのだが、公開当時は並々ならぬベトナム戦争への批判から大ヒットとまではいかず中ヒットとなった。
ランボーシリーズが本格的なヒットとなったのはシリアスさを排除して超人的な戦争アクションに様変わりした続編以降である。
ただ本作はその切実なまでのベトナム戦争の悲劇が唯一の帰還兵であるランボーを通じて描かれており、国のために命を賭けて戦ったのに世論によって社会的に忌み嫌われ、まるで人間扱いされない行き場のない不満と悲しみがクライマックスのトラウトマンへの慟哭で表される。
ここでの殺人マシンではない人間ランボーとしての姿が心を揺さぶられる。
アクション自体は続編シリーズと比べると小さな町が舞台のスケールではあるものの、リアリティーあるサバイバル術と緊張感で見応えがあり、クライマックスの街の破壊シーンもギリギリやり過ぎない程度のリアルさを保っている。
何より発見なのは本作は墜落死したガルド以外はランボーによる死人が一人もいないということ。
続編シリーズからは競いあうかのようにキルカウントを重ねていくランボーであるが、本作においては主軸はランボーは社会の犠牲者であり決して傍若無人なテロリストではないということである。
実は原作のラストではランボーはその暴走の責任を取ってトラウトマンによって射殺され、ディーズルもまたランボーと相討ちで死亡するという救いのないバッドエンドであったらしい。
その流れを変えて、ランボーの行き場のない悲しみをトラウトマンに叫ぶクライマックスから彼に連れられて静かに投降し逮捕されるラストは後のシリーズ化を加味していたとしても秀逸な締めくくりといえる。
続編シリーズでは勇壮なテーマとなっている主題歌も本作の最後に歌詞つきで流れる場面では感動的なバラードであることにも注目したい。
他のシリーズとは少し毛色の違うドラマ性とシリアスさ、そして感動を味わえる本作。
娯楽性だけでいえば続編以降に敵わないが、社会性ドラマとアクションが見事に融合した後世に語り継ぐべき作品のひとつといえるだろう
評価…★★★★★
(最後のランボーの慟哭シーンは吹替えでみると更に感動的。)