皆さまこんばんは。
アクション・ホラー映画フリークのいわしでございます。
数多くの鑑賞記録と独自の観察からアクション映画に関して好き勝手に語っております『いわしの映画独論』シリーズ。

第25回となります今回は前回からの続きとなるアクション映画を華やかに彩る足技の達人、題して『スーパーキッカー』たちを特集第二弾です。
前回が主に70年代前半にかけてでしたので今回は70年代後半から80年代前半にかけての達人たちをご紹介していきます。

この70年代後半から80年代にかけては香港アクション界においてはブルース・リーの死後のポストブルース・リーの模索時代であり、様々なテクニシャンたちが百花繚乱した時代でもありました。
リーのアクションで目の肥えたカンフーアクションファン達はそんな中で色んな逸材を発掘していきます。

リーの死後、多くのスター達が香港に招聘されるのですが、その中でまず紹介しますのがこの方、

『カサノバ・ウォン』


でございます。

北朝鮮出身で韓国で軍の武術教官まで務めたことのある彼はあのサモハンに見出だされた逸材のひとり。
テコンドーの猛者ですが、彼は優れた足技だけでなく無尽蔵なスタミナ、そしてとんでもないバネを活かしたジャンプ力が特徴です。
彼のアクションを語る上で外せないのは必殺技でもある凄まじい飛距離の回転ソバット。
言うなれば『ハイパーフライングソバット』とでも名付けますか、人間発電所という異名をもつことも納得のアグレッシブなスーパーキッカーといえるでしょう。

彼の出演作品で一般的に見れるのはブルース・リーの遺作『死亡の塔』でのタンロンとの前半戦、ハウス内での死闘場面でしょう。
ただ彼の凄まじさを知るならオススメは『ドラゴンカンフー龍虎八拳』です。
ここでの無双ぶりはまさに最強スーパーキッカーに相応しい出で立ちで、まともに戦っては勝てないくらいの強さが描かれていました。
カサノバ・ウォンのファイト集はこちら



前回で神脚として紹介したフラッシュレッグことタン・トゥリャン
彼はテコンドーの指導者としても随一だったことは述べましたが、そんな彼の指導をうけて伝説的なスーパーキッカーに名を連ねたスターもいます。
それが、

『ジョン・リュウ』


でございます。

タン・トゥリャンが台湾アクション映画に出演し道場を開いていた頃、ジョンは自身の素行不良もあって入門してきます。
最初は股割りすらできないくらい身体が固かったそうですが、数年の修練の末に股割りはおろかその鞭のようにしなやかな柔軟性とゴムのように伸びていく跳び蹴りを修得します。
空手の世界大会ではあのチャック・ノリスと戦い勝利したという逸話も残っており、神脚のタンの後継者として『ノーザン・レッグ』ともいわれておりました

そんな彼は後に『ゼンコンドー』というオリジナル武術を創始。テコンドーの柔軟性を活かして右側の蹴りを軸にキックのみで戦うというまさに彼にしかできない芸当でアクション映画界へと乗り込んできます。
残念ながら日本での彼の作品は公開されてはいませんが、代表作として挙げられる『南拳北腿』シリーズは敵役に黄正利を迎え、これぞ究極のスーパーキッカー作品といえる足技の芸術アクション作品となっております。
ジョン・リュウのファイト集はこちら



同じ頃、台湾ではもうひとりのスーパーキッカーがおりました。
家族全員が武術に秀で、自身も台湾のテコンドーチャンピオンというサラブレッドなスーパーキッカー、

『アレクサンダー・ルー(羅鋭)』


でございます。

165cm弱の小柄な身体ながらかなりのパワーと驚異の身体能力の持ち主で多くのアクション作品に出演。
台湾製の忍者アクション作品への主演が特に多く、日本でも『忍者大戦』『ザ・ニンジャシティ』などニンジャスターとしての要素が色濃い。彼のアクションの特徴は野獣のように攻め立てる足技。無論テクニックも素晴らしいのだが他のスーパーキッカーたちと違うのはファイトスタイルがかなり荒々しいところ。
そしてその荒々しさそのままに私生活もかなり喧嘩沙汰が多く、当時のテコンドー系俳優の常山唐龍らと並んで『三大喧嘩家俳優』という異名までとられていたとのこと。
ニンジャ映画が下火となってからはもっぱら武術指導のほうにシフトチェンジし、表舞台から遠ざかってしまったものの未だ現役ではあるらしい。

そんな彼の作品を日本で見るのはなかなか難しいのだが、有名どころでは『忍者vs阿羅漢』『新・桃太郎3』といった作品で確認できるほか、海外版では『ザ・ニンジャシティ』などのニンジャ作品で活躍をみることができます。
アレクサンダー・ルーの格闘アクション集



さてかつてブルース・リャンはリアル最強伝説が噂されていましたが、この70年代から80年代にかけて誰もが認める『足技の王』、『キングオブレッグコンバット』といえばこの方

『黄正利(ウォン・チェン・リー)』


でございます。

数々の作品で冷酷非情な殺し屋などとにかく強すぎる足技の達人のイメージが強い黄正利ですが、なんと育ちは大阪。幼い頃は日本で暮らしていたんですね。
そして先の『南拳北腿』でデビュー以降多くの作品でその凄まじい足技の数々を見せつけてくれています。
彼が最強かつ最恐と呼ばれる所以はアクションにおいて全く妥協しないこと。
実際の格闘シーンでは共演者をその攻撃力で負傷させることも多く、ミシェル・ヨーを病院送りにしたり、『蛇拳』ではジャッキーの前歯を叩き折ったり、『天使行動』では西城秀樹にガチの蹴りを食らわしたりとそのえげつなさは広く知られております。

そんな彼のアクションはとにかくテクニックとスピードそしてパワーのハイブリッドさ。
彼の脚と拳の連続攻撃はまさに呼吸するように攻撃してくるので太刀打ちするのは至難の技。
そして代名詞ともいえる空中三段蹴りや頭挟み込み蹴り、足ビンタは東西きっての最強キッカーの名を欲しいままにしてきました。
後に身体がゴツくなってからハリウッド作品にもジェームズ・ウォン名義で出演するなどワールドワイドに活躍をしてきております。

そんな彼の活躍ぶりはジャッキー初期の名作である『酔拳』『スネーキーモンキー蛇拳』などでも十分堪能できますし、『上海エクスプレス』『天使行動』、『龍の忍者』などアクションファンならよく知る作品をはじめ、『死亡の塔』など数多くの偽物ブルース・リー作品もオススメですが、個人的にこれぞ『黄正利』という作品なら自身の名前が冠についている『非情のハイキック/黄正利の足技地獄』がオススメです。
ここでみせる黄の足技はまさに最強でした。
黄正利ファイトシーンはこちら



これまで数々のスーパーキッカーたちを紹介してきましたが、この年代最後に紹介しますのはこの方

『ユン・ピョウ』


でございます。

意外に思われる方もいるかもしれませんが、彼は20世紀最高のスタントマンとしてだけでなく、華麗な足技の達人としての顔もあります。
サモハンやジャッキーも所属していた京劇集団『七小福』のなかでも最もアクロバットが得意だったユン・ピョウはサモハン作品の中で数々の連続蹴りや超難易度の蹴り技を難なくこなし、ブルース・リーのダブルやジャッキーのダブルで華麗な技の場面を担当したりしていました。
ユン・ピョウの足技はテコンドー系の荒々しさではなく、一分のブレもない華麗で綺麗な蹴りが特徴でまさにカンフーの美しさを体現したような見栄えの良い蹴り技の達人です。
特にスピンキックの美しさは目を見張るものがありますね。

そんなユン・ピョウの足技は『モンキーフィスト猿拳』や現代アクションの『検事Mr.ハー』、他サモハン作品の数々で堪能できますが、これぞユン・ピョウの足技の最高峰というべき作品はあのウォン・フェイフォンの弟子で足技の達人、七を演じたスピンオフ作品『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/鬼脚七』がオススメです。
クライマックスのユン・ピョウのファイトは一見の価値アリですよ。
ユン・ピョウのファイト集はこちら




いかがでしたでしょうか?
80年代前半にかけても逸材は事を欠きませんね。
この香港で足技アクションに感化され、80年代後半からはハリウッドでも香港製アクション映画によって数々の足技の達人たちが現れてくるのですがそれはまた次回以降の独論でまた改めて語ることにしましょう。
ハリウッドでの足技の達人ブレイクを作ったきっかけは有名な『あの人』ですよ。

それでは次回の独論はどんなネタでお会いできますかお楽しみに。
( ゚∀゚)ノシ
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