次世代ヴァン・ダムのひとりといわれたマーク・ダカスコス主演のクライムアクション作品。

刑務所帰りのジェシーはロサンゼルスにいる刑務所時代の友人ラリーを訪ねる。
アメリカンスタイルのバイクを手土産に迎えてくれたラリーはそんなジェシーを友人として手厚く歓迎し、自分達の住んでいる家へと招き入れる。

辿り着いて早々に荒くれのブルドックらに因縁をつけられるジェシーたち。
そこは麻薬や覚醒剤などのドラッグの器具を煮沸したりなど犯罪の温床的な感じではあったが、ジェシーはホラー女優をしているションダや恋人のブリーズ、オタクのTドッグらラリーの仲間に紹介され交流を深める。

その夜ジェシーは歓迎会としてライブハウスでラリーたちと酒を交わす。
ステージではパンクバンドの『ジャークス』が演奏をしていたが、メインの曲前にバンドのドラマーがドラッグの禁断症状で倒れてしまう。

ジャークスのボーカルの要請で急遽ドラマーの助けを求められるが、ラリーはそこで元ドラマーでもあったジェシーを無理やりに推挙する。
挙げられた彼はメンバーも認めるほどの見事な演奏を繰り広げると、その腕に惚れ込んだボーカルはジェシーをバンドの正式なドラマーとしてスカウトする。

一方、ラリーたちにはジェシーの歓迎とは別に狙いがあった。
それは動物用の麻薬である合成ドラッグの違法取引であった。
幻覚をみるほどに強烈な効果を生むその麻薬をライブハウスにきていたギャングの手下たちと交渉し約束を取りつけたラリーは演奏終わりのジェシーをその取引に同行させようとする。

スカウトされたことをきっかけに断ろうとするジェシーであったが、ラリーは最後のつきあいと称して友情を出汁に無理やり彼を同行させるのだった。

薄暗い倉庫のなかで交渉は行われるのだが、ジェシーは相手が銃を持っていることに気づき、現金と交換の際に相手が抜こうとした所を未然に襲いかかり、これがもとで銃撃戦へと発展してしまう。
ジェシーは相手のグループをひとり残らず倒すと直ぐにここから立ち去るようにメンバーを促す。

現金かと思われていたバッグの中身は新聞紙やボロぎればかりであった。つまり最初から自分達を殺してブツを独り占めする気だったのである。
背後にプロの組織の影を感じたジェシーは仲間達に早くロスから離れて逃亡するように伝える。
大騒ぎして混乱するTドッグを昏倒させると銃撃戦で負傷したブリーズとションダは彼女の家に隠れ、他の仲間にも誰にも合わないように念を押す。

そしてジェシーもラリーと共にバイクを駆ってジャークスが次のライブを開くデトロイトまで旅立つことに。
しかし重度の麻薬の禁断症状に見舞われたラリーを休ませるため道の途中にある古びたモーテルへと立ち寄る。

そこで風変わりだが気のいい主人エドセルが経営する元モーテルだが、彼にVIPの部屋を提供してもらうと、ジェシーはジャークスに連絡を取る。
彼女たちのデトロイトのライブは三日後であった。ツアーに参加するためには三日でおよそ3000キロの道のりを越えなければならない。
ジェシーは合流する返事を返すと今晩のうちにモーテルを出ようと決意するのだが、ラリーは禁断症状からか隠し持っていたヤクを打とうとする。

寸前で止め、体調を整えないと置いていくと告げるジェシー。
しかし禁断症状に苦しむラリーは密かにブリーズらに連絡しようとする。

そんな中、ロスではジェシーによって殺されたギャングの暗殺者二人が、ラリー達を追っていた。
アジトを見つけた二人はブルドッグやマーラーたちを躊躇なく殺害し、残ったTドッグを監禁して仲間達の居場所を尋問する。

一方、ジェシーは自分のバイクを洗う女性を見かける。
彼女へスターはエドセルの妻であったがしきりにこの家を出たがっていた。しかもエドセルは彼女を拘束し逃げようとすれば殺すとまでいわれているという。

真偽のほどは分からないがへスターは自分と一緒に行きたがっていることを知らされ、ジェシーはエドセルにそれとなく伺うのだか彼自身はいつでも出ていっていいと気にも止めない様子でそれどころかジェシーとの思い出話に花を咲かせるまで馬があっていた。

三人で出発することにしたジェシーは荷造りを済ませ、エドセルに挨拶し出ようとするが、直前になってラリーは行くのを拒否。
彼はブリーズに連絡し麻薬を持ってくるのを待っていたのだ。
そして形相の変わったへスターもまたエドセルがノミ屋相手に奪ったという大金を狙っていつでも出ていけるにも関わらず居残っていたことが判明する。

そんな二人の欲深さに嫌気のさしたジェシーはひとり出発しようとしエドセルから餞別代わりのお金を一束渡され、自身の部屋に道路地図を取りに戻るのだが、そこに一台の車が音もなくやってきて止まる。
ラリー達を追ってやってきた暗殺者たちであった。

二人はラリーとの麻薬の取引で銃撃戦の末に死んでしまったギャングの兄たちでその報復のためにこれまでにブリーズやションダ、そしてTドッグらを皆殺しにしてきたという。
そして彼らは仇であるジェシーの行方を探していた。

ラリーは麻薬に釣られてジェシーの居場所を喋り彼を売ってしまう。
万事休すかと思われたが、ジェシーは隙をついて飛びかかり暗殺者たちと死力を尽くした戦いを繰り広げる。
果たして生き残るのは誰なのか?欲深き人間たちの結末はいかに…

元体操選手にしてクンフーチャンピオンにも輝いたマーク・ダカスコスのオフビートなアクション作品

現在もアクション俳優として活躍しているマーク・ダカスコスはそのアクロバティックさやキレのある格闘アクションからヴァン・ダムの後継者として名前があがるほどのポテンシャルの持ち主であった。
その主演作はこれまでに数十作品にのぼるが、売りのひとつである格闘アクションのレベルがかなりまちまちなのが 大ブレイクにまで至らない理由のひとつでもある。

本作品は主演作品の量産体制だったころの作品群のひとつであり、全体的には大きな盛り上がりどころもなく、なんとなく淡々とした感じで展開されている。

ストーリー的にも悪友によってトラブルに巻き込まれた前科者がロックバンドのドラマーとなるために逃避行するもので、髭を生やしたダカスコスが全身刺青をいれたワイルドな魅力でがんばっているのだが、いかんせん登場人物が薄い上にクズばかりと感情の入れようのない仕上がり。

その割には何となく登場人物の裏設定もややこしくしていてストーリー自体は単純だけど展開は分かりにくくなっていてだれてしまう。

肝心のアクションであるが、今回のダカスコスはあだ名が『ラッキーボーイ』ということでケンカは強いが格闘術の使い手というわけではなく、泥臭いストリートファイト系のアクション。
しかも格闘シーン自体はさほど多くなく、ダカスコスのアクション作品としてははっきり言って物足りない。

一応クライマックスでは暗殺者二人とのバトルが用意されてはいるが、ほとんどがもみ合いや殴り合いでせっかく敵方にテコンドー出身のアクション脇役ジェームズ・リューがいるにも関わらずそのポテンシャルはほとんど見せずじまいで終わっているのが残念なところ。

かといってガンアクションなどのガジェットものもないので、ダカスコス目当てでなければ正直アクション自体としては目を見張るべき格闘シーンとかはないに等しい。

そもそも数少ない格闘シーンもカメラワークが近すぎなため見せ方が悪いという点も考慮したい。

この頃から演技派への模索を考えていたらしいが動けるアクションスターなだけにやっぱり華麗な回し蹴りのひとつでもあればアクション作品としてもダカスコス自身の評価にしても変わっていたであろうだけに実に勿体ないと思ってしまう作品である。

評価…★★★
(ワイルドな風貌に似合わず期待するアクションは空振り。ダカスコスの作品選びはほんと勿体ない)