世界中にゾンビが出現して数年。
今や人間とゾンビの数は逆転し、生き残った人間は限られた地域で暮らしていた。

そんな地域のひとつ三方を河に挟まれた巨大人工都市フィデラーズグリーンで暮らす人々の食料補給のために働く傭兵のライリーは、その調達の最中にゾンビたちが知能を持ち始めていることに気づき、危険な任務からの引退を示唆する。


だがフィデラーズグリーンを支配する実力者カウフマンはこれを良しとせず、彼の手によって車を奪われる罠に嵌められ、ゾンビとのプロレスで偶然助けた娼婦スラックや仲間のチャーリーと共に投獄されてしまう。

一方ライリーの部下だったチョロはくすねてきた高級ワインなどの貢物を片手にフィデラーズグリーンへの永住をカウフマンに申請するが、人種的なことを理由に断られてしまう。
これに逆上したチョロはライリーたちのゾンビ用装甲車を奪って、街にミサイルを撃ち込むとカウフマンを脅迫する。

カウフマンは自らの手を汚さぬため釈放と引退を餌にライリーに自身の装甲車奪還とチョロの抹殺を命じるが、ライリーは装甲車を奪いそのまま街を離れ安住の地といわれるカナダへ逃げることを画策していた

しかしその思惑の中で、知能を持ち始めたゾンビたちがフィデラーズグリーンを目指し進軍を始める。
彼らは大軍を率いて辺りを犠牲者の血に染めながら遂に対岸まで進んでくる

奪還チームを率いたライリーはリモコンを駆使してミサイル起動装置を止め、チョロの野望を未然に食い止めることに成功する。
戦いの最中にゾンビに噛まれたチョロは敗北を認め、ひとりカウフマンのもとへ復讐のために去るのだった。

その時遂に河を渡ったゾンビの大群がフィデラーズグリーンに来襲。
私設軍隊も全滅になる中でライリーは貧民街の市民たちを救うためにゾンビに蹂躙されるフィデラーズグリーンへと向かうのだが…


ジョージ・A・ロメロの代表シリーズである旧ゾンビサーガの最終章に位置付けされる作品。

本作ができるまでは『死霊のえじき』がサーガ最終章とされていたが、のちにロメロはインタビューでこの作品が『ナイトオブザリビングデッド』より始まった旧ゾンビサーガの最後に位置付けている。
そのファイナルに相応しく、ハリウッドのテコ入れで作られた本作は、名優デニス・ホッパーやジョン・レグイザモといった実力派俳優、さらにはロメロとも縁の深いダリオ・アルジェントの娘で女優のアーシア・アルジェントをヒロインに迎えるなど豪華絢爛ともいえる。

作品を追うごとに新たな面を出すロメロのゾンビであるが、『死霊のえじき』では言葉を理解し知能をもつゾンビ『バブ』が話題になったが、本作ではさらにゾンビ自体が知能的に進化し唸り声でゾンビ同士意志疎通したり、機関銃や武器の扱いを覚えるなど成長?の面をみせている。
また、人間同様に打ち上げ花火に見とれるという特徴が追加された。

だがロメロのゾンビ作品の本質はあくまでもvsゾンビではなく愚かな人間同士の争いがメイン。
本作もその路線を踏襲しており、実質の裏テーマはこの時代のアメリカのテロリストへの戦いを揶揄したものである。
名優デニス・ホッパー演じる傲慢かつ強欲な権力者カウフマンのキャラクターはまさに当時イラク戦争を指揮した当時の大統領をイメージさせるものである

そしてロメロゾンビ作品のもうひとつの見せ場は血みどろの残酷シーンであるが、本作はハリウッド配給であり、しかも夜のシーンが多く、前シリーズ作品と比べると強烈なゴアシーンは少し控えめな印象。
それでも口から内臓を引き摺りだしたり、犠牲者の腹を裂くなどのショックシーンはあり、R15指定もロメロファンには納得の仕上がり。

ただテンポ重視なハリウッド資本のせいかロメロ特有の重厚な人間同士の争いを描いたドラマは希薄気味で、アクションを重視した内容はコアなロメロ作品ファンにはいささか物足りなさは残るかもしれない。

しかし潤沢な資本のおかげで大御所デニス・ホッパーをはじめ、演技派ジョン・レグイザモや盟友ダリオ・アルジェントの娘で名ホラー女優アーシア・アルジェントのほかにもゾンビサーガのおける立役者トム・サヴィーニのほか、友情出演として『ショーン・オブ・ザ・デッド』のサイモン・ペッグとエドガー・ライトなどがでており、脈々と続いたゾンビ世界の大団円にふさわしい締めくくり作品といえよう

ディザスターパニックムービーとしても近年の『走るゾンビ』とは違ったすぐそこに迫る緊迫感と絶望感が感じられ、トータルランニングが90分弱といつものロメロ作品にしては短いながらも中身はしっかり詰まった旨味のある秀作といえる。


残酷度…★★★★★

評価…★★★★
(残酷シーンはちょっと抑えめながらも十分過激。だれることなく楽しめる内容はさすがロメロの演出。)

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