ジェット・リーの呼び掛けによって製作された超豪華なアクションスター勢揃いの短編小説アクション作品。

太極拳の達人であるジャック・マーは自身の拳法の腕を示すためにとある遺跡前にやってきた。
警備員たちが何者かと身構え迫るなかでじっと目を瞑るマー。彼は崇高な武術の対決に思いを馳せる……

マーが訪れたのは地下の遊戯場。
ストリートバスケに勤しむものやアーケードゲームを楽しむなかで一際異彩を放つマーに気づいたムエタイのトニー・ジャーは彼に挑みかかる。
激しいムエタイの打撃を太極拳の優雅な動きでさばき、圧倒するマー。股間に一撃を与え退散したジャーに続き、散打の達人が挑みかかる。

素早いパンチとキックの連続攻撃をものともせず完封するマー。そして続いて挑んできたカポエラの達人ジャッキー・ヒョンも簡単にいなしてしまった彼に紅一点のユーが挑んでくる。

女性には手を出さないと言うマーだが、ユーの容赦ない一撃に気の変わったマーは瞬時に関節を極めて退ける。

ユーが負けたのをみて血気盛んに飛び出してきたこの場所のボス格であるウー・ジンはマーに棒での勝負を挑んでくる。
二本の棒を手に凄まじいスピードで襲いかかるウー・ジンを尻目にマーは冷静にしかも正確に長根でダメージを与える。
百戦錬磨のマーにはウー・ジンも敗北を認めざるを得ず、礼を尽くしてマーの勝利を讃え送り出すのだった。

そんなマーは次なる強敵を探して高級サロンへとたどり着く。
きらびやかな女性たちがマーに微笑みかける中で奥から怒号と共に巨漢の男が躍り出てくる。
逃げ惑う女性や客たちの中で出てきたのは元横綱だった相撲力士ロンであった。

付き人を従え、真ん中にたたずむマー相手に並々ならぬ殺気をみせるロン。マーも構えをとり一騎討ちは始まる。
一撃必殺の張り手を交わしつつ、連打を入れるマーだが肉の鎧と化したロンの身体にはさほどダメージがない。
そして小兵のマーはロンの怪力に捕まると凄まじい投げで遠くに飛ばされてしまう。

パワーと意外なスピードで正攻法での戦い方に限界を感じたマーは太極拳の真髄ともいえる戦術でロンに挑む。
剛力で襲いかかるロンの攻撃を全ていなして利用しロン自身に攻撃を跳ね返すのだった。
それでものど輪で掴んだロンは必殺の投げを繰り出すのだがそれも反対に返され、ロンは投げ飛ばされる。

己の必殺技を返されたロンは素直に負けを認めマーと礼を交わし、その場をあとにするのだった。

旅を進めるマーは遂にとある遺跡のような場所にたどり着く。
そこには舞台を掃除する坊主と奥の池に足を着けている男がいた。

足を着けている男に話しかけるマー。
気品ある口調で気さくに応える男であったがそこにはマーも感じるほどの凄まじい闘気にみちていた。
池にはピラニアが放たれていたがその闘気で寄り付けないほどである。

マーの殺気に気づいていたその男ドニー・イェンは静かに詠春拳の構えでマーを待ち構える。
マーは準備をしながらもその強さを感じ、ドニーに『三回蹴りを入れて自分が立っていたら自分の勝ち』という独自のルールを持ちかける。

あきれた様子でそれを受けるドニー。
そして遂に一騎討ちは始まる。
そのスピードと正確無比な攻撃で劣勢に立たされるマー。太極拳の奥義を尽くしても一進一退な攻防で更に攻めこもうとするドニーにマーは待ったをかける。
実はその素早い攻防の中でドニーは三回半蹴りをマーに放っていた。それを指摘され約束を守るかのようにドニーは負けを認めマーに礼を送る。

ドニーとの対決を終えたマーは舞台の上に巻物が吊るされているのを見つける。
興味を持った彼が舞台へ上がりそれを取ろうとすると今まで掃除をしていた坊主の男がこれを制す。
『攻守道』の奥義が記された巻物が欲しければ対戦しろと迫る坊主の男。呆れ顔で無視しようとすると男は持っていた箒でマーを吹き飛ばす。

この坊主の男こそすべての拳法に通ずる奥義『攻守道』の達人リーであった。
マーは達人としての称号を残さんとリーとの対決に挑む。
マーは培った太極拳の技でリーを何度も吹き飛ばすがそのたびにリーは立ち上がり強くなったいく。
そして遂にリーは本格的に覚醒し、本気の技をみせ始める。
果たして二人の対決の行方は?そしてマーの辿り着く先は…


世界的アクションスター、ジェット・リーが中国拳法の発展と文化の交流を唄って企画したアクション作品。

わずか22分程度の短編ではあるが驚くべきはその豪華すぎる出演者の数々。
企画発案者であるジェット・リーをはじめとして、その呼び掛けに応えたのがドニー・イェン、ウー・ジン、トニー・ジャーら第一線で活躍するアクションスターだけでなく元横綱朝青龍や次世代を担うジャッキー・ヒョンら若手アクションスターも賛同。更には本作のアクション顧問・指導としてサモハン、ユエン・ウーピン、チン・シウトンが名を連ねており、まさに香港カンフーのエクスペンダブルスといった布陣である。

そんな豪華すぎる出演作のなかで本作の主役を務めたのはジャック・マーという人物。
パッと見どこのオジサンかと思うだろうが、この方いまや中国内でも最大の企業である『アリババ』グループの創始者であり会長である。
最近の中国映画では主力のスポンサーでありこの豪華なメンツが集められたのも穿った目からしたら彼の企業の出資による礼ともいえなくもない。
更に主題歌はマー自身とあのフェイ・ウォンのデュエットである。

ジャック・マー自身三十年以上太極拳を鍛練しており、その技は達人クラスということで今回の主役に抜擢されたのだが、そこはやはり素人なので演技やアクション自体はかなりの補正が入っているようにみえる。

ストーリーはあってなきようなものであり、マーに次々と挑戦者が現れる『死亡遊戯』方式の内容。
その代わりアクション面においては香港トップクラスの三人が手掛けただけありそれぞれに色のある豪華な対決シーンが満載。
トニー・ジャーがあまり活用されてないのが残念ではあるが、ウー・ジンの棒術合戦はユニークながら見応えあるものだし、後半のドニー・イェンの詠春拳はもはやイップマンそのものを彷彿させる無双ぶり。
そして長らく現役を退いていたジェット・リーの本格的なカンフーが見れるのもファンとしてはたまらない。

しかし最も意外だったのは中盤に現れる朝青龍戦。
日本での相撲スタイルでしか見てなかった相撲の異種格闘技がここまで迫力があって見応えあるものだとは意外である。
パワーもさることながら側転もこなす朝青龍の身体能力の高さ、恐るべきスピードなど実は実際のストリートファイトならば相撲って最強かもと思わせるほど迫力あるものであった。


なお本作はエンドロールにも超豪華なゲストが出演している。
最後にマーにリモートで挑戦状を突きつける役でボクシング世界チャンピオンのパッキャオが出ているが、ラストにでてくるのはなんとジェイソン・ステイサム(^^;
数秒ながらちゃんとインパクト残しているのは流石。

鑑賞できるのがYouTube内だけではあるが、新時代におけるこの豪華すぎる共演はなかなか観られないことだろう。
『攻守道』という新しい武術を作り出したジェット・リーの活動の一環ではあるが、これからのリーの企画にも期待が高まる夢の作品といえるだろう。


評価…★★★★
(ただスゴいとしかいいようのない顔ぶれ。マーの華のなさなど気にもならないですよ(^^;)

本編はこちら


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