初期ヴァン・ダム作品の中でも評価の高い格闘アクション作品。

アメリカのロサンゼルス。
麻薬取引の現場で罠に嵌められたフランクが取引相手にガソリンをかけられ全身大火傷の重体で病院に搬送される。
彼の妻ヘレンは保険すらない家計事情のなかで瀕死のフランクを入院させることもままならず頭を抱えるばかり。
そんな瀕死のフランクは間際に兄の名前を呼び続けるのだった。

2週間後…。
外人部隊に所属するリヨンは過酷な北アフリカ駐屯地に配属されていたが、そんな中で一通の手紙をうけとる。
そこには弟フランクが大火傷を負い危篤となったことが記されていた。

緊急を要することながら外人兵ということで不当な扱いを受けていたリヨンは2週間も連絡すらさせなかったことに憤慨し上司に外出許可を直談判するが一蹴されてしまう。

弟と残された家族のためリヨンは死を覚悟で脱走を決意。
懲罰に入れられる隙を狙って駐屯地から脱走をはかる。

追っ手を何とか逃れたリヨンはアメリカ行きの貨物船に裏取引で乗り込み、地下ボイラー室で奴隷のように働きながらアメリカを目指す。

数日後。
船はいつしかニューヨーク近海にまで到着していた。リヨンは脅す船主を反対に脅し返し、船から脱出。泳いでニューヨークへと上陸する。
弟家族との連絡をとりたいリヨンであったが無一文でやってきた彼には公衆電話すら繋ぐこともできず途方にくれていたが、近くの高架下で歓声と人だかりができているのに気づく。

そこでは賭けによるストリートファイトが行われていた。
見学していたリヨンは身銭を稼ぐため、胴元のジョシュアの声に応じ飛び入り参加する。
相手は屈強そうな黒人であったが格闘の達人であるリヨンの敵ではなく、圧倒的強さで相手を撃退する。

その強さを見初めたジョシュアは自らリヨンにマネージャーとして売り込みをし二人でストリートファイトで稼ぐことを提案する。
ただロスへわたる身銭が欲しいだけのリヨンは最初こそ怪訝ぶるもアメリカの土地柄に詳しいジョシュアのお節介ぶりに根負けしロスまでの資金を稼ぐことに。

そこでジョシュアはアメリカ全土の賭けストリートファイトのフィクサーであるシンシアにリヨンを紹介し早速試合を組んでもらうことに。
シンシアによって名前をもじった『ライオンハート』と名付けられたリヨンは用意された対戦相手を一撃で下すが、ロスまでの資金を稼いだリヨンはシンシアからの更なる試合のオファーを断り、その場をあとにする。
しかしシンシアはジョシュアを使って必ず試合を成立させるべくけしかけるのだった。

ロスについた彼は入院していた病院を訪ねるが既にフランクは治療のかいもなくやけどによる怪我がもとで亡くなっており、ヘレンたちへの多額な医療費の請求だけが残っていた。
ストリートファイトでの賞金をもってヘレンを訪ねるリヨン。
彼女の娘ニコルが傍らにいるなか住まいをも追い出されかねない彼女を助けようと賞金を渡そうとするが、事件にあってから2週間何も連絡すらよこさなかったリヨンに憤り、金の授与を拒否するのだった。

貧困にあえぐ家族の姿に何とか生活の安定をと考えるリヨンは一度は断ったシンシアのストリートファイト試合を受けることにする。
そして稼いだ報酬金を保険と偽ってヘレンたちに渡すようにジョシュアに依頼する。

こうしてリヨンはシンシアの組んだ試合に次々と参戦し、破竹の連戦連勝をかさねる。
家族を助けるため、ニコルが欲しがっていた自転車を楽しそうに乗り回すのをみて幸せを感じるリヨン。
しかしそんな彼を追って外人部隊から出向してきたエージェントが遂にリヨンの姿をとらえる。

追い詰められるリヨンは格闘の最中に脇腹を痛めてしまうが、事情を知ったシンシア側の追っ手によって助けられる。
だが思いの外リヨンの状態は深刻で、完全に肋骨が折れている状況であった。

一方その頃、シンシアは競争相手との賭け試合でリヨンを利用しようとしていた。
数千万ドルが動く一戦にシンシアが相手として呼び寄せたのはアジア最凶のチャンピオン、アッティラ。
試合中に何人も殺害している凶悪なファイターでシンシアは裏工作でアッティラを勝たせ、そのままリヨンを外人部隊エージェントに送り返す計画をたてていた。

満身創痍で挑むリヨンはヘレンたちを守るため悲壮の覚悟で戦いに挑む。
そしてジョシュアは戦える状況にないリヨンを前に賭けに悩む。

それぞれの思惑が交差するなかで最強のファイターを決める最後の戦いが始まる…

『キックボクサー』のヒットにより一躍スターダムに登ったジャン・クロード・ヴァン・ダム主演の格闘アクション作品

本格派格闘路線で走っていたヴァン・ダムがドラマとしても魅せてくれたという点においても初期ヴァン・ダム作品の中でも評価の高い本作であるが、それを示すかのように本作は『キックボクサー』や『サイボーグ』以上の興行収入を記録し、本作をもってヴァン・ダムはハリウッドアクションスターのエースへとおどりでた。

ただしストーリー的には複雑さはなく、最愛の弟の家族を助けるため孤高の兄が数々のストリートファイターたちと戦い続けるという話が軸。
ここに脱走兵として追われるサスペンス要素を加味し、家族の絆、友情といった要素をいれているがどの分野も深く掘り下げてはこない。
その代わり全体的なバランスとしてはいい具合になっていたりもする。

肝心のアクションの方だが、ストリートファイトが基本となっているためかこの頃の他のヴァン・ダム作品と比べて見せる技は単発的で、とにかく回し蹴りの多用と殴り殴られのアクションが多い。
ヴァン・ダムの相手となるファイターたちがどうしてもパワー系が多いためか大振りの攻撃で隙が大きく、それに合わせてるヴァン・ダムといった感じ。

その結果隙だらけの分かりやすいキックを逆に取られて反撃されるというパターンが常態化していて戦いが進むごとにマンネリ化しているという弊害もある。

ヴァン・ダムと戦うファイターはパッケージには7大ストーカーとでかでかと宣伝されているものの印象に残るような敵がおらず、あえていうならばクライマックスのアッティラくらい。
ただしこれも紹介の前置きの割には強敵としてのインパクトがイマイチで、この辺りは『キックボクサー』のトン・ポーや『サイボーグ』のラスボスと比べると没個性にも思える。
ファイターの中にはマーク・ダカスコスとカポエラでやりあったパコ・クリスチャンもいるのだがこの辺り勿体ない。

これならばむしろ冒頭に雑魚役でヴァン・ダムにソバットくらったビリー・ブランクス辺りでも抜擢していれば白熱していたかもしれない。
トン・ポーだったミシェル・クィシもエージェントで出てたので何とかならなかったのだろうか。

とはいえこの武骨なストリートファイトシーンは決してつまらないというわけでもなく、ボロボロになりながらも不屈に立ち向かうという『ロッキー』的な要素をだすには丁度いい加減であったとも思える。

アクション的にも単調的であるにもかかわらず本作が評価が高いのはひとえにドラマ性の高さに尽きる。
他人からしたら自業自得ともいえる犯罪者の家族の不幸からただひたすら残された親族のためにたとえ拒まれても愚直に救おうとするヴァン・ダムの姿にまずグッとくる。
そしてそんな弟嫁とヴァン・ダムの間の軋轢を癒すかのような純真無垢なニコルの姿が泣ける。

家族を守るために命がけで外人部隊から脱走し、捕まったら死刑という退路のない中で最後まで残された弟家族のために戦おうとする姿、そして満身創痍で戦い終えたあとに訪れるヴァン・ダムと家族との悲しい別れ。
ここでのニコルのリオンのやり取りにヴァン・ダムファンは持っていかれることだろう。

そのあとのまさかの展開まで含めるとこのクライマックス後の展開だけでもこの作品はヴァン・ダム作品中でも一位二位を争う珠玉の『泣かせるヴァン・ダム作品』といえるだろう。

最近では来る老いを逆手に衰えたなりのアクションをみせる技巧的な面も学んだ様子のヴァン・ダム。
本作はひとえに製作と脚本、そしてニコル役の子役のおかげでもあるが、演技派としても魅せれるという片鱗を確認させた点でもヴァン・ダム作品入門編のひとつとしてオススメしたい作品である。


評価…★★★★
(アクションは単調だけどドラマで魅せたヴァン・ダム。でもその立役者はニコルだけどね(^^;)