第2のジェット・リーとしてアクション俳優としての活躍が拡がっているウー・ジン主演のバイオレンスアクション。
 
香港の南にある離れ小島にある田舎町。謎の暗殺者ボーは麻薬組織のボスであるマーを暗殺しその首をもって島を出ようとしていた。
 
しかし折しも台風の接近にともない本島を結ぶフェリー船は休航となりボーは足止めを余儀なくされる。
 
さ迷う最中でボーは木の上に逃げ込んだ飼い猫を捕まえようとしている化粧パック姿の女性に出くわす。
猫は飛び降りたもののその拍子に彼女も落下。ボーの助けで無傷に終わるがその際にボーのジャケットを破いてしまい彼女は修繕のためにボーを家にあげる。
 
ジャケットの修復を図るなかでボーは置かれていた写真から彼女が警察官であることを知る。
 
台風のために風も強まってくるなかでボーは食事のできるところを案内してもらうことに。
なぜかその彼女イウ・ワーも不馴れなボーについてくるのだった。
 
大食漢なボーが素麺をすするなかで、ラジオでは本島を襲った三人組の強盗団の話題を語っていた。
よく見れば店内の離れたところに似た特徴をもつ三人組が。
正義感強いイウ・ワーは職質をかけるが三人のひとりである大男は彼女の首を怪力で締め上げる。
 
危機的な状況になった瞬間。疾風のごとき速さでボーは彼女を助けだし、怪力無双の大男を格闘術で倒すとたちまちのうちに三人を一網打尽にしてしまう。
 
凶悪犯たちの逮捕で沸くイウ・ワーに連れられ調書をとるために警察へと連れていかれるボー。彼女を心配する署長たちに凶悪犯逮捕への協力とイウを守ったことで手厚く歓迎されるが、ひとりイウに惚れている同僚のタイサンだけはボーを恋敵として嫉妬からか嫌がらせをしてくる。
 
その頃、街の中では組織の人間たちがマーの失われた首を血眼になって探していた。
マーの正妻である久美は部下たちに命を懸けてでも見つけてこいと厳命していたのである。
 
一方イウ・ワーが誕生日というサプライズにボーは彼女を微笑ましく見つめ、護身術を教えあう中でボーとイウは互いに意識しあう感じになっていたが、その時通報が入る。
 
タイサンとイウが向かった先には首のないマーの遺体が。
襲いかかる部下たちに苦戦する二人であったが、そこに一瞬ボーが助けてこれを倒し、気づかれないようにその場を立ち去る。
遺体は一時的に警察で預かることとなるが、それは久美のもとにも届くこととなる。
警察嫌いな夫のために警察署に安置されている旦那の遺体を取り戻せという命令を受けた部下たちは人の少なくなった警察署を強襲し、遺体を返すように迫る。
 
ガソリンを浴びせられ、パニックとなるなかで隙をついて反撃に出るイウ・ワーだがそんな中で揉み合いとなり同僚のひとりが被弾し帰らぬ人のなってしまう。
 
翌朝、台風の影響がそれつつあるなか警官の殉職を受けて遂に本土の香港警察特殊部隊が島に
乗り込んでくる。
街の住人全てを取り調べるほどの厳戒体制とマーの部下たちの追跡によってなかなか身動きのとれないボーは何とかフェリー乗り場へと辿り着くのだが、そこで遂にチェックを入れられる。
 
イウの目の前で荷物検査を受けるボー。しかし中にあったのはボーリング玉だけ。
無事島より脱出できたかにみえたボーだったが、辿り着いた埠頭でマーの部下たちに追跡された際にボーリング玉の仕込みがバレて中から首が現れたことで彼こそがマー殺しの犯人であったことがイウに知られてしまう。
 
ショックに沈むイウにマーの部下たちが襲いかかり彼女は拉致される。
 
いつもの食堂で佇んでいたボーの携帯に連絡が入る。
それは久美がイウを拉致し人質にとったこと。そして彼女を助けたければたったひとりで廃墟まで来るということであった。
 
暴風雨が吹き荒れるなかボーはたったひとりでイウを救うために現れる。
待ち受ける久美が呼び寄せた部下100人を前にボーは絶望的ともいえる戦いに身を投じるのだが…
 
ウー・ジンが主演のほかに監督、脚本、製作も手掛けた肝いりの格闘アクション。
 
ウー・ジンは元々ジェット・リーと同じ北京体育学校出身者でいわば弟弟子的立場にあたる。
『少林寺』のテレビシリーズや多くの古装片作品に主演するなどリーとの共通項も多く、デビュー当初より第2のジェット・リーとして注目されていた存在である。
 
そんな彼が初監督作品として作り上げたのが本作である。
全体的に漂うのはやはりというかアクションスターの初監督にはありがちな陰湿でダークな感じ。
 
『SPL 』で演じた残虐非道な殺し屋とは違った心に空虚さを持った暗殺者というキャラクターはなかなか難しい設定ではあるものの天真爛漫で怖いもの知らずなセリーナ・ジェイド演じるヒロインとの対比もあってただのクールな殺し屋像とは違う感じになったのは良い。
 
ただ反面主人公の背景が無さすぎてなぜ死ぬ危険をおかしてまで犯罪組織のボスを殺害し首を持ち去ったのかが終始謎だったのは惜しいところ。
一応はボスを殺す理由が最後の最後に語られてはいるが、それでもそこまでの行動に出る理由に結び付いてこない。
 
物語の中では軽くウー・ジンとセリーナ・ジェイドとのプラトニックな恋愛らしきものも描かれてはいるがこれもまたインパクトは弱くてクライマックスに結びつけるにしては動機的に弱くて何かが足りない。
それでも強引すぎる手法で繋げてはいるのだが(^^;
 
アクションにおいてはウー・ジン自らが指導にまで乗り出すほどの熱の入り具合でそのかいもあってか主要となるシーンでの格闘シーンのレベルは高い。
 
注目すべきは前半とクライマックスの戦いで、前半では強盗3人衆との戦いでウー・ジンの挨拶がわりともいえる実力をみせている。
2メートルはあろうかという巨人二人組に矢継ぎ早に蹴りを乱舞しノックアウトさせる姿は流石本物の強さといった感じか。
 
そして三人組のボスに君臨するのが、あのケネス・ロー。
ソーメンをかっこみながらウー・ジンをカウンターのハイキックで撃墜するなどかなり期待値をあげてくれるのだが、意外にもあっさり決まって拍子抜けするところも。
 
クライマックスは逃亡者おりんこと青山凛子率いる100名強の殺し屋軍との無双戦。
このシーンはウー・ジンいわく『マトリックス』やトニー・ジャーの『トム・ヤム・クン』の48人乱取りに影響を受けてとったという言葉からもかなり気合いをいれていたことがわかる。
 
そのクライマックスの100人チャレンジはまさにウー・ジンも満身創痍で両足、両腕を折られながらも必死で戦い抜くという悲壮感漂う感じも。
そして芋虫状態となってもラスボスであるおりんにかかんにも
挑み続け戦い抜く姿は漂う悲壮感をより強くさせる。
 
同じ100人が相手でもこれがセガールであれば事も無げに完遂してしまうとこだろうが、ボロボロになりながらも血へどをはいて相討ちみたくなるのが実はよりリアリティであったりもする
 
予想よりも格闘シーン自体はさほど多いとも思えないが、質はかなり高い。
主人公の強敵と呼べる人間が結局いなかったのは残念ではあるが『マトリックス/レボリューション』で見せたような壮大な敵が囲むなかでの獅子奮迅の活躍は一見の価値があるだろう。
 
ヒロインとしてはエキゾチックな魅力をみせるセリーナ・ジェイドのほかにも物語の最初と最後を繋ぐ意味合いの食堂の女主人役に往年のカンフー女優クララ・ウェイが演じるなどかなり豪華。
 
さらにはシリアスなアクションドラマには欠かせない名バイプレーヤーのラム・シューも組織の幹部役として見逃せない活躍をみせる。
 
全体的には暗い展開ではあるものの、ウー・ジンの個性の魅力をみせる上で印象的なのは彼の食事シーンだろう。
そのバカ食いのような飯テロの様子は暗い中の数少ないコミカル要素としてインパクトが強い。
 
まるで餓鬼のようにどんぶり茶碗でおかずもご飯も掻きこんで食べる姿は往年のカンフー映画での大食いを彷彿させるだけでなく、この大食いシーンが本作の要点要点を結ぶ重要なポイントとなっているのにも注目してもらいたい。
 
突出して悪い要素もないので動機付けは弱いがそれなりにストーリーは纏まっており、アクションにおいては決して多くはないものの印象に残るものもある佳作。
ウー・ジンのハニカミ顔など彼のファンであればおさえておいても損はない作品といえる。
 
評価…★★★
(何となく全体的に小ぶりではちゃめちゃさもないがアクションは流石のハイレベルです。)
 
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