元WWE のスーパースターレスラー、スチュアート・べネット主演によるバイオレンスコマンドアクション作品。

イギリスの片田舎にあるディボーション。その森の奥で武装した人間に追われている男がいた。追い詰められた彼は拷問を受けた末に敵によって射殺されてしまう。

最強の傭兵でありながら今は人質奪還業など請け負っている元特殊部隊出身のジョン・ゴールドは残されていた留守電にかつて共に戦っていたダニエル・メイソン軍曹の両親からメッセージが入ってくるのを聞くが、途中でプツリと切れてしまう。
急ぎ折り返し連絡をするのだが、連絡はとれず、彼が家に駆け込むと大量の血痕と銃創が残されていた。

警察に事情を聞くと、ダニエルは何者かに殺され、更にチームを組んでいた彼の両親も殺されたという。
ダニエルの遺体がジョンたちの故郷であるディボーションで見つかったことから彼はダニエルを殺害した相手を見つけるために故郷へと戻ってくる。

かつて知り足る故郷はなく、今や街は犯罪に溢れる危険な街と化していた。酒場に出向きダニエルの事について聞き込むがみな何かを守るように口を閉ざしたままであった。
そんな中でダニエルの様子を知るというローズに話を聞こうとするが、奥にいた集団に目をつけられてしまう。

ダニエルの足跡を調べるうちに酒場にいたサンドラという女性にたどり着いたジョンは故郷が変わってしまった背景を聞かされる。
数年前からこの町に元特殊部隊出身のハッチャー達が流れこみ麻薬組織を結成。麻薬の流通を担っており、軍隊並みの武力を持つ彼らに誰も反抗することができないのであった。
そしてサンドラもまた麻薬の売人であり、ダニエルと接触していた人物の一人であった。

サンドラの恋人である売人仲間を脅してダニエルの行方を探るジョンだが、彼の存在に気づいたハッチャーはサンドラを使ってジョンを罠に嵌めようとする。

超人的な強さでハッチャーの部下を一蹴したジョンは返す刀でハッチャーへの宣戦布告を行うのだった。

サンドラは麻薬中毒であり、彼らの麻薬ほしさにジョンを裏切っていたのだが、ジョンはそれを逆手にとってハッチャーがダニエルを殺した真犯人であることを確認。改めてジョンはハッチャーへの復讐を誓う。

ジョンは一人づつハッチャーの仲間たちを標的にとらえ、抹殺していく。
そんな中でハッチャー達がこの街に現れ、更にダニエルがなぜ殺されていったのかその真実が明らかにされていく。
元は湾岸戦争の英雄であったハッチャーは対麻薬カルテルとの戦闘で大量の麻薬を押収。戦死していった傭兵たちへの冷遇を続ける政府に反感をもち、自ら麻薬を売りさばくシンジケートをつくり、その巨万の富でオランダへの麻薬ルートを作ろうとしていた。

殺されたダニエルは実はハッチャーの動きを察知していたのだが、サンドラに情報を共有した際に恋人の売人仲間にもそれを話してしまい。それがハッチャーの耳に入り、逮捕前に殺害されてしまっていた。
間接的にダニエル殺害に関与してしまったサンドラは罪の意識には苛まれていたものの麻薬の禁断症状には抗えず、これまで過ごしてきたのだった。

戦いの末に負傷したジョンは巻き込んだローズたちに街を離れるよう忠告し、最終決着をつけるためハッチャーのアジトへと向かう。

重装備に身を包み、サンドラにジョンの監視役であるフロストに後処理を頼むよういうと、武装したハッチャー達のアジトに単身殴り込みをかける。

激しい銃撃戦と肉弾戦をくぐり抜け満身創痍となりながらもついに対峙するジョンとハッチャー。復讐を果たすためジョンは最後の一騎討ちに挑むのだが…

2メートルを越える身長とそのパワーを武器に注目され始めているプロレスラー、ステュワート・べネットの主演デビューとなるバイオレンスコマンドアクション。

本作の主役であるステュワート・べネットは以前スコット・アドキンズの『ゲットバック/人質奪還』において最後までアドキンズを苦しめた巨駆の暗殺者役として注目されたアクション俳優。
そのバックボーンはプロレスラーである。

彼も他のプロレスラー俳優と同様にアメリカンプロレスの花形『WWE 』で活躍してきたレスラーでチャンピオン経験もある実力派。目下売りだし中のジョン・ヘニング同様に大プッシュされてるスターの一人といってもいいだろう。

そんな彼の初となる主演は名うての元傭兵という役所。重火器をもっても見劣りしない体躯の彼にはピッタリなキャスティングといえる。
さすがに演技面でいえばニヒルな設定というのが厳しい所もあるが、持ち味はパワフルなアクションなのでその辺りはそこまで気にはしない方がよい。

では注目となるアクションであるが、やはり普通のガバメントやコルトパイソンといった銃器が玩具にみえるほどの巨駆はかなりの迫力。ショットガンですらもシュワルツェネッガー並みに軽々扱うのでコマンドアクションとしては小気味よく観れる。

シーン的にもクライマックス前のアジトへ向かうシーンでシュワルツェネッガーの『コマンドー』さながらの武装シーンのカット割りがあり、このところはたぶん意識している所であろう。

またプロレスラーだけに格闘戦においてはやはりモッサリ感は多少なりともあるが、現役の頃の必殺ムーブであるスーパーキック(サイドキック)なども見せていて彼を知るファンにも分かるアクションの見せ方はされている。
特にハッチャーの部下との一騎討ちでは各種の首折り技を駆使していて、中には目潰ししながら首を折るという残虐モード全開のファイトもあり。

そんな巨駆のべネットを相手するラスボス役が実写版ケンシロウでお馴染みのゲイリー・ダニエルズである。
彼自体は幾度も悪役の経験はあるが、本作における悪役演技はゲイリー史上におけるベストな悪役っぷりといってもいいほど魅力的であり、強い。

ゲイリー自体が見せる格闘シーンは冒頭とクライマックスしかないのだが、クライマックスでのべネット戦においては鮮やかにロー、ハイと蹴り分けるマシンガンキックや伸びのある回し蹴りでべネットを吹っ飛ばし、パワーで圧され始めると隠し持ったメリケンサックでボッコボコにしたあげくにまた隠し持っていたワイヤーで首絞めするなどダーティーな方法で相手を翻弄。
ゲイリーの悪役において最強に悪くて強い感じとなっている。

そんな死闘で盛り上がる中で、なんともあり得ない決着がつくのだが、この決着が非常にいただけない。
ゲイリーが強いからこそべネットが最後に反撃していくのかと思いきや最後までいたぶられっぱなしなのである。

その水を指す人物も物語上いてもいなくてもいいような存在なので意外性を狙っていた体にしてもクライマックスの一騎討ちの良さを消してしまっている。

ちなみにゲイリー・ダニエルズは結構レスラー系と戦うことが多く、スティーブ・オースチンとも一騎討ちを繰り広げて必殺の飛び回し蹴りをぶちこんでいた。彼はレスラーにも見劣りすることない肉体派でありながらテクニックが優れているので対レスラー俳優との戦いでは非常にいい仕事をしてくれる。

コマンドアクションとしての迫力はなかなか良かったが、格闘シーンの見せ方に難が残った本作。正義の味方を演じるにはちょっと悪い顔なステュワート・べネットの良さを完全に活かしきれていないのは惜しい。
主役よりもむしろ冷酷非情なゲイリー・ダニエルズの印象の方が強く残ってしまうのは課題点だろう。

評価…★★★
(べネットの体躯よりも悪い紳士風なゲイリーの迫力の方が勝ってしまったのは考え所かなぁ(^^;)

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