東南アジアのリゾート界隈を外れた孤島『キャット島』。
綺麗な砂浜と手付かずの自然のこの島では人肉を喰らうゾンビの伝説があった。
島の小屋で魔物除けの儀式をしていた男がボロ布を羽織った不気味な男に喉を噛みちぎられ死亡する。

船乗りのラリーは浮かび上がった死体を解剖のために医療施設へと運び出すが、解剖途中に腐乱し蛆のわいたその死体は突然起き上がり当番をしていた医師を噛みちぎって殺し、何処へと消えてしまう。

そんなキャット島を買い取り、自身のリゾート施設を作ろうとしている建設家のジョンは毎夜娼婦を呼んでは酒池肉林の限りをつくし、お金にものを言わせて周辺の地域を次々と買い取っていた。

呪われた伝説のあるキャット島に案内してもらうためジョンは船をチャーターし、案内してくれる船員を募集するが、島の噂を知る者は誰一人として協力はせず、ただ一人フリーランスの船員ラリーだけが報酬を条件に島への案内を引き受ける。

ジョンは愛人のフィオナと共に島へと航海を始める。
二人はラリーが見ているのもお構い無しでセックスにふける。
数日後、ようやく目指す先のキャット島に辿り着くのだった。

島はほぼ無人島に近い状態であった。住んでいるのは老人と孫娘であろう美しい美女の二人だけ。
島の開発のために老人と話をするジョンだが、老人は『生きている人間は出ていけ』と彼らへの協力を拒む。更に『呪われる前に島から離れろ』と告げるのだった。

一方でラリーは不思議な魅力をもつ島の娘ルナに興味をひかれていた。
彼女は神出鬼没で、ビーチでトップレスで寝そべるフィオナと愛し合ったかと思うと漆黒の闇の中でラリーを誘うようなしぐさをみせる。

島の噂をよく知るラリーに老人は小さな像をお守りとして持たせる。
そんな中でラリーはあのルナに誘われ、誘われるままに身体を交わす。快楽に酔い夢中となるラリーだが、ふと気づくと砂浜沿いにゾンビの群れが迫っていた。
いつのまにかルナの姿も消え、ラリーはもらった像をゾンビたちにかざすとゾンビの群れは森の中へと帰っていくのだった。

一方、老人の警告を無視して森の奥へと入り、伐採計画をたてようとしていたジョンの前にゾンビが現れ出す。
彼を追いかけるように出没するゾンビを銃で撃退しつつ墓場で佇むルナを見つけた彼は彼女に性交をせまるのだが、ルナは受け入れるようにして彼の股間を噛みちぎって失血させる。

ジョンの悲鳴を聞いたラリーとフィオナはそこに駆けつけるのだが、そこで見たのは無数のゾンビによって貪り食われているジョンの姿だった。
ルナは『お守りがあれば襲われない』といい消え去るが、そのお守りは船の中に忘れていた。

二人の姿に気づいたゾンビたちが静かに彼らに近づき始める。
二人して島内を逃げ惑うが、風化した墓標の下から次々と死体が起き出し、喰われていたジョンもゾンビとして甦り二人に襲いかかろうとする。

立て籠った小屋の中にも侵入してくるゾンビ。二人は孤立化した島内で海を目指し、ゾンビから逃げ惑うのだが…

イタリアのエログロ監督、ジョー・ダマトによるポルノ色の濃いゾンビホラー作品。

題名では『99』とあるが製作はなんと20年前の1979年の作品。当時はイタリアホラーとしてはルチオ・フルチの傑作『サンゲリア』が公開され、マカロニホラーの残虐性とエロをトッピングしたゾンビホラーとしてヒットした。

本作の設定や造形はそんな『サンゲリア』をお手本にしたような感じ。ゾンビの造形は『ゾンビ3』を彷彿させるようなボロの布をまとってゆっくり歩んでくるタイプ。ただ特殊メイクについては多少雑なとこもあり、遠めからの佇まいは不気味そのものだが、前半の解剖室での蛆のわくゾンビ以外は現地人に砂をまぶしただけの簡素なもの。
それでも不気味さは伝わるのはさすが。

残酷描写も喉を噛みちぎったり、耳をちぎったり、内臓をひきずりだすなどゾンビ映画らしいショックシーンもあるが、一番見所となるのはルナが男のイチモツを噛みちぎるシーン。
これは怖さ云々ではない痛さを感じずにはいられない。

ゾンビホラーと銘打ってはいるのだが、監督のジョー・ダマトは元はといえばイタリアンポルノの監督。110分の長丁場のうちの実に80%はヌードや絡みのシーンに費やしており、ほとんど女性は素っ裸。

主演であるラウラ・ジェムサーはジョー・ダマト作品の常連で、彼女の代表作は『黒いエマニエル』シリーズ。
元々本家のシルビア・クリステル主演の『続エマニエル夫人』においてインドネシアでエマニエルと絡むアロマオイルの風俗嬢役で出演したのだが、それをみたジョー・ダマトが彼女をスカウトし、ポルノ映画主演に抜擢。
『褐色のエマニエル』としてフランス文芸エロスの『エマニエル夫人』とは違ったエログロ路線をひた走り、カルト的な人気を博した。

日本では『食人族対エマニエル』と題名されている『アマゾンの腹裂き族』などで紹介されており、野性的な肢体で官能シーンを演じている。

本作もその系統のひとつであり、当初は『ゾンビ対エマニエル』というあんまりなタイトルもつけられていた。
本作でもラウラ・ジェムサーはヌードやセクシーシーンを演じているが、元々スレンダーだった彼女は今回はちょっと病的に思えるほど痩せすぎていて、フィオナ役の女優との絡みはちょっと痛々しさを感じさせるほど。

この作品が最初にレンタルにあがった際は堂々とホラー作品の棚に並んでいたが、内容はハードコアポルノで全編にモザイクが右往左往する展開。
今なら完全にアダルト指定であり、筆者もゾンビ作品として大学の頃に借りたが、内容を見てある意味ぶっ飛んだ記憶がある。

現在ではホラーとしてよりポルノ作品として紹介されている節が強く、無修正カットバージョンなどはかなり過激な内容らしい。
巷でも出回っているところは少ないと思われるが、『サンゲリア』を意識した作りは意外にちゃんとおさえているところはおさえていて、ただのエログロゾンビものと括るには早計な感じもあるのである。

残酷度…★★★

評価…★★★
(これほぼポルノ(笑)。でもゾンビの作りとしては一応ちゃんとおさえてはいます(^^;)


気になる作品はこちらで観れるかも。