ドン・ザ・ドラゴン・ウィルソンを始め、キックボクシングや空手のタイトルホルダーたちを集めに集めて作られた格闘アクション作品。

ロスのチャイナタウンでは白人系と中国人系のキックボクシングジムが日夜対立しており、非合法のリングで互いに試合をし、凌ぎを削っていた。
特に白人系ジムのリーダー、ブラッドと中国人系ジムのリーダー、テリーは激しく対立しており一触即発の気運が高まっていた。

テリーのいとこであるジョニーはかつては中国人系ジムの最強のファイターであったが、今は一線を退き、医者として勤務をしつつ、時折叔母の中国料理レストランを手伝う毎日を送っていた。

そんなある日。レストランにブロンドの美しい女性がやって来る。
ジョニーはその彼女に一目惚れし野蛮な彼氏に愛想をつかしていた彼女ジュリーも素朴な彼に興味をもつ。

一方でギャング同士の抗争は中国人系ジムの一人クウォンが白人系ジムの人間に重傷を負わされたことにより過激化。
クウォンを痛めつけた人間を報復としてテリーが痛めつけるなどお互いが抗争を過激化させていく。

ジョニーはジュリーが残していた仮装パーティーに潜入し、ジュリーと接触。大人なジョニーにジュリーの心も次第に揺れ出すが、そんな彼の行動が白人系リーダーのブラッドの怒り炎に油を注ぐ。
そうジュリーはなんとブラッドの妹だった。

しかし既にお互いに好意を持ち出し恋こがれだした想いは止まらなくなっていた。
デートを重ねるごとに二人の距離は近づき、ジュリーも長年付き合っていた恋人チャックよりも気になる存在へとなっていた。

一方激化したギャング同士の抗争は遂に全面戦争へと突入する。
警察の介入により一度は水入りとなるがテリーとブラッドはお互いに一ヶ月後生死をかけた一騎討ちを行う約定をする。
互いが互いを倒さんとハードな特訓を重ねる二人。
そんな二人の決闘にジョニーとジュリーが気づいたのは決闘当日のことであった。

二人の将来のためにも抗争を防ぎたいジョニーはいとこのテリーに『古式タイ式決闘法』を提案。
それは蜜を塗った拳にガラス片を着けて殴りあうデスマッチ法であった。
危険すぎる方法にブラッドが躊躇すると踏みテリーに提案する。

ジョニーはジュリーとの逢瀬にそれを彼女に告げるが、ブラッドはジョニーの思惑を越え、デスマッチを承諾。
急ぎジョニーが駆けつけるもブラッドはテリーに致命の一撃を与え、彼を死亡させてしまう。

テリーの死によりジョニーとジュリーの関係にも暗雲が立ち込め始めた。
人種の違うもの同士の恋は成就しないと諦めかける二人。
だがジュリーの祖母の尽力によりジョニーはジュリーへの想いを再確認し彼女もまたジョニーへの愛を確認する。

しかしそれを快く思わないブラッドはジョニーに決闘を申し込む。
ジュリーすらも暴力で虐げようとする傍若無人さに遂にジョニーも怒りを爆発させ決闘に挑む。
ジュリーを巡る戦いはもはや人種間の戦いを越えた個人的私闘の様相をみせ、ジョニーはブラッドそしてチャックを相手に己の信念を貫くため戦うのだが…

きらびやかな格闘技チャンピオン達が集まり、作り上げた青春格闘アクション作品。

『キングオブキックボクサー』といえば、第2のヴァン・ダムとして売り出したローレン・アヴェドンとブートキャンプでブレイクしたビリー・ブランクスの壮絶キックボクシングアクションが話題となった作品であったが、本作はその続編を名乗ってはいるが、前作とは全く関係がない(笑)

香港資本であった前作からハリウッドへと資本が移り、何かもかも一新して作ろうとした結果、作品の最大の売りどころとして様々なタイトルをもつ『本物』の格闘家たちを集めてアクションの体を成そうしたようである。

出演陣を列挙してみると主役のドン・ザ・ドラゴン・ウィルソンは8つのキックボクシングタイトルを持つ猛者であるのを始め、空手&ウェポンスタイルチャンピオンのエリック・リー、WKA キックボクシングチャンピオンのヴィンス・マードッコ、同じくWKA チャンピオンのスタン・ザ・マンなど輝かしい履歴をもつ格闘家だらけ。

更にはキックボクシング出身のデール・ジャコビーにアジア系マーシャルアーツスターのロン・ユアンにスティーブ・ヴィンセント・リーなども共演。
あのゲイリー・ダニエルズも白人系ジムのファイターの一人として出演している。

アクションの見所としてはこれら本物の格闘家達による格闘アクションなのであるが、これが意外にももっさりしていて迫力に欠けている(^-^;

リングでの戦いは迫力はある。
ゲイリー・ダニエルズ対ロン・ユアンやスティーブ・ヴィンセント・リー対スタン・ザ・マンなどはさすがのキレで見応えがある。
だが肝心の主人公たちドン・ウィルソンやデール・ジャコビーがさほど動けていないのである。
ジャコビーはまだよしとしても特にドンの鈍さが問題である。

元々ドンのアクションは抑揚が薄く、アクロバティックさもないので地味なのだが、本作ではキックボクシングよりも太極拳や中国拳法ベースにしているのでセガール並みに動かない。
クライマックスのドン対ジャコビー&ヴィンス・マードッコ戦でも二、三回スピンキックを見せる以外は殆ど合気道の投げともっさりした殴りあい中心。

もっとも一番盛り上がらなければならないクライマックスの対決が妙な感じで水入りしてしまいうやむやな決着で終了しているのがモヤモヤする(^-^;

ストーリーとしては人種間の争いの中で敵対するチーム同士の二人が愛し合ってしまうというキックボクシング版『ウエストサイド物語』みたいな内容。
マリリンモンローを意識したようなブロンドのマリア・フォードとドンの恋愛を軸にして敵対する人種同士の争いを描いているのだが、そこまで壮大なストーリー性もなく、ドンとマリアの身勝手な行動が抗争の火を悪化させているようにしか見えない(^ω^)

何せドンが提案したデスマッチで結果的にいとこが死んでしまうことになり、殺しあっている最中は二人は敵の家でちちくりあっている様である。
そして人殺したのに何も反省しないジュリーの兄など、人としてどうなのか?という面子だらけなので全くもって感情移入できないのが正直なところ(笑)

しかし必要以外に力を入れてるのが無駄なエロシーン(^ω^)
主人公たちのアクションがモッサリしている分、ブラッドの恋人役やヒロインのマリア・フォードもガッツリ脱いで大サービスしており、ドンとのベッドシーンではまるでポルノかと思うような艶技を見せてくれている。

華々しい紹介の割りにはハードルを上げまくってしまったせいで拍子抜けしてしまった格闘シーン。
だが、ドン『以外』の格闘スターは概ね動き的にはキレがあるので、ゲイリー・ダニエルズの珍しい下積み時代として見るのも楽しみ方のひとつであり、キックボクシングアクションの珍作としてコアなファンならおさえておきたい代物である。

評価…★★★
(ドン&マリア・フォードが混乱のもと(笑)。ドンのアクションは期待せず脇役のキレを楽しむのが正しい観賞法です(^ω^))