産廃業者のDV 夫カールは暴力の末に殺害した妻を野原に遺棄し、産業廃棄物の薬品を土にぶっかけて立ち去る。
学校から帰ってきた息子にも悪態をつき、息子は隣の自動車整備工場に逃げ込む。

一方、自動車修理工のマイクは隣のモニカ親子の車の修理を頼まれ、整備をしていた。
そして少し休憩としてテレビをつけると、カールが妻を埋めた場所から死者が蘇り、人々を襲い出したというにわかには信じがたいニュースが飛び込んでいる。

そんな中、カールが息子を探しに工場に乱入。
モニカたちにも悪態をつき、マイクにまで脅しにかかる勢いで迫る。
だが既に工場の周りにまでゾンビが迫っていた。

マイクの仕事仲間でゾンビ映画オタクのフィルはこの状況に知識を活かそうとするが、瞬く間にゾンビの群れに襲われ、首をもがれて死亡。
かつて特殊部隊にいたことがあるマイクは安全を確保するため軍の基地を目指して脱出することを提案し、皆で向かうこととなる。

しかしその最中でモニカの息子がゾンビに咬まれてしまい、ゾンビ化。
マイクは彼を銃殺し、何とか軍の基地へと向かうのだが、途中で車はエンストを起こしてしまう。

徒歩で逃げるもさすがに厳しく感じたマイクは襲いかかるゾンビの群れを掻い潜り、見つけたスーパーマーケットに籠城することにする。
中には客である夫婦とトイレに籠っていて事態を知らなかったという店員、そして自らを貴族の出自と呼ぶ、鎧に身を固めたショーミンという男がいた。

それぞれに武器をとり、対抗しようとするが凄まじい群れのゾンビの襲撃は防ぎきれず、一人また一人と犠牲になっていく。
更に傍若無人なカールの行動が仇となり、脱出も困難な状況に。
マイクたちは地獄と化したスーパーマーケット内から決死の脱出を試みるのだが…。

B 級映画の配給の老舗JVD レーベルのホラーシリーズ『DEEP RED 』シリーズの最終回を飾る低予算ゾンビホラー。

地雷の多いゾンビホラーの中でもなかなかの地雷具合で、全体的にツッコミどころの嵐(笑)
そもそもの画質の悪さと何故かテレビサイズでの撮影で妙に画面が小さく、全体的に照明も暗い所が多いので特に後半のスーパーマーケット内の攻防は何をしてるか分からない場面も。

ストーリー的にはオーソドックスなロメロの『ゾンビ』の模倣で、逃げている最中にエンストしてスーパーマーケットに籠城とかはまさしくそれ。
しかしストーリー以前に壊滅的なのは登場人物の演技の大根ぶりである。
とにかく全編が棒読みで感情が全く伝わらない(笑)
そのためゾンビに襲われるという緊迫感も感じ得ないのが痛い。

また、出てくる登場人物のキャラクターをたたせるのはいいにしても、まともな人間が主人公を含めて誰もいないのもみそ。
ボサボサ長髪で汚ならしい修理工の主人公マイクが元特殊部隊兵というメチャクチャな設定もさることながら、特に酷いのがカールとショーミン。

カールはとにかくロメロ作品に出てくるトラブルメーカーをイメージしてるのだろう。
DV の末に妻を殺して薬品ぶっかけて何食わぬ顔で生活し、子供や女には悪態ついて暴力ふるうが主人公には殴られて大人しくなるというクズさ。
しかもゾンビ発生の原因はコイツの薬品ぶっかけのせい。
とにかく『ブエッヘヘ』と笑って最後の最後まで迷惑をかけまくり、自分が生き残るために他人を平気で殺そうとするアブナイ人間なのだが、ヘタクソな演技のおかげで役柄とは別の意味でイライラさせる(笑)

もう一人のアブナイやつはショーミン。
彼は騎士のコスプレをして剣で殴りあうという意味不明の大会に出て、帰りに恋人といちゃついてた時にゾンビに襲われ、恋人を食われたという過去をもつ。
その彼女の食われ方もだいぶ遠くから何にも周りにない所をノロノロ近づいてるのに気づきもしないマヌケぶり。
彼がアブナイのは自分が本当に貴族の生まれ変わりと信じこんでいることで、お手製の西洋の甲冑を身に纏って、貴族言葉で喋り、剣一つでゾンビの群れに特攻をかける。
しかも襲われて死んだかと思いきや、ちゃっかりラストまで生き残っている(^ω^)

このようにストーリーも演技もキャラクターも壊滅的な本作であるが、唯一素晴らしいのは残酷描写。
低予算でチープなCG 場面はあるものの、ゾンビの造形も特殊メーキャップで頑張っており、犠牲者の死に方やゾンビのお食事シーンはなかなか見応えがある。
ゾンビ映画には珍しく子供も犠牲になり、ゾンビとして始末されるシーンもあって、この辺りは珍しいところ。
また、くわえさせた折りたたみ傘を広げて頭を破壊する方法やゾンビに噛まれた腕を切断するためにドアを腕に思いきり挟んで叩きつけて千切ろうとするなど残酷な中にもどこかユニークなシーンは斬新である。

総じてみればおおよそ酷い内容なのだが、ストーリーや演技では見せられないことをあらかじめ作る側も想定して、ならばゾンビもののもうひとつの醍醐味である残酷描写に拘った前のめり感は評価したい。

残酷度…★★★★★

評価…★★
(学芸会レベル以下の演技でも残酷描写さえ頑張れば作品としては成立するもんだ(^ω^))