ブルース・リー唯一の師であり、詠春拳の達人イップマンのブームの始まりとなったカンフーアクション作品。


1930年代の広東省佛山。
己の腕に自信のある武道家たちが集まり、道場が溢れるほどの賑わいを見せていた。
新しく道場を設立しようとやってきた長拳使いのリュウは道場を開くにあたってその名声を得ようと佛山最強の達人への挑戦をうたう。

佛山における最強の達人。それこそ詠春拳の最強の達人とよばれる葉問(イップマン)であった。
温かくリュウを迎えた葉問は、快くリュウの挑戦をうけ、秘密裏で誰にも試合のことは公言しないことを条件に手合わせを始める。
しかしその差は歴然。
圧倒的にいなされたリュウは葉問のその強さに感服。そして葉問もまた佛山を盛り上げるために今回の試合のことは黙っておくので道場を開いてくれと彼に告げるのであった。

しかしたまたま試合の様子を覗いていたユンによって葉問の一方的な勝利の様子を街中に言いふらされてしまう。
恥辱に激昂するリュウはユンと彼の兄ラムが営む茶屋にいた葉問に詰め寄るのだが、ラムがユンの下着を剥ぎ取って恥辱を味合わせたことでリュウの怒りを静めさせる。
辱しめをうけたユンはそのまま家を出てしまうのだった。

葉問はこうしてその仁徳の深さと人間性から町の人々にも尊敬される存在であった。
葉問の友人であり経営者であるチンチュンはそんな葉問に武術の指導を条件に共同経営者の話を進めるのだが、家族と武道家としての生き方しか興味はないと彼の誘いを断る。

そんなある日。
佛山にとある集団がやってくる。
金岳中と名乗るリーダーの男は、自分の腕を見せて名を挙げることを第一とし、佛山にある拳法道場を次々と道場破りしていた。
リュウの道場も金に襲われ、看板を奪われていた。
いき上がる金だが、周囲の人々に佛山最強は葉問であると野次られ、業を煮やした彼は葉問の家へと殴り込みにやってくる。

自身を倒してここ佛山に道場を開くと息巻く金に対して、家族団欒中の葉問は自分に気兼ねなく自由に道場を開けばいいと言うものの退かず食い下がる金。
妻ウィンシンもそのしつこさに呆れ、家のものを壊さないことを約束させて葉問に決闘を許可する。

いきり立つ金に対して、静かにいなしかわしていく葉問。
その対決は幾分かの骨董品に被害が出ながらも、圧倒的な強さで葉問が金を追い詰めて勝利する。
家の外で固唾を飲んで待っていた町民たちはすごすごと屋敷を出ていく金たちの姿をみて葉問の勝利を確認し、盛大に盛り上がるのであった。

1937年。日中戦争が勃発。
日本軍の侵攻によって佛山は占領され、葉問の家は日本軍の司令部として没収され、葉問たちは貧困にあえぐ生活を余儀なくされる。
葉問の友人であるチンチュンはあえてその佛山で綿花工場を開き、経営を続けていて貧困にあえぐ葉問を助けたいと考えていたが、葉問はその申し出を断り、栄養失調で体調を崩す妻のため石炭採掘の仕事に就く。

その現場で葉問は茶屋の息子であるラムと再会する。
彼もまた生活のため石炭採掘の仕事に就いており、弟ヤンとはリュウ師父の件以来行方知らずのままであった。
互いの再会を喜び合うなかで昼食にもらった芋を密かに持ち帰る葉問をみたラムは彼の家庭が困窮していることを察して自身の芋を半分彼に差し出してその辛さを分かち合う。

その午後。
職場に日本軍の車両がやってくる。
そこにはかつて警察官として葉問に高圧的な態度をとり、戒められたリーが彼らの通訳として彼らを案内していた。
仏山を統治する三浦大佐の趣味で武術の試合の相手を探しているという。
貴重な米を褒美として挑戦者を募る彼らにラムは自ら日本人を叩きのめすためと志願。
葉問が止めるのもきかず、リーたちと共に日本軍司令部の道場へと向かう。

そこには空手の道場があり、日本軍の門下生たちを相手に集められた中国人たちが試合をしていた。
そこでラムはかつて道場を開いていたリュウ師匠の姿をみかける。
彼もまた拳を教える場を追われ、家族を食べさせるためにそして憎しみのために日本軍の三浦の部下たちと試合をしていたのだった。

見事部下を倒し、米を勝ち取ったリュウはラムに日本人をぶちのめせと檄を入れてその場を去っていく。
すると次は三浦自身が対戦相手として降りてくる。
三浦は集められた腕のあるものから三人を選び戦うというと、いきり立つラムたちがその前に立ちはだかる。

一気呵成に挑みかかるラムたち。
しかし空手の達人である三浦はその凄まじい攻撃力でたちまち三人を弾き返す。
その強さに二人は降参するも日本人憎しのラムだけは果敢に三浦に襲いかかる。
完膚なきまでに叩きのめされるラム。
三浦は降参をすすめるが、ラムは返り血を三浦に吹き掛ける。
激昂した三浦はラムを撲殺するのだった。

翌日。
採石場で働く葉問はラムの姿が見えないことで周囲に聞きまわるが誰も彼の消息を知る者はいなかった。
そこに昨日と同じようにリーを乗せた日本軍の車両がやってくる。
また道場での挑戦者を募集するリーに葉問はラムの行方を訪ねるがリーはしらばっくれるばかり。
業を煮やした葉問は自らリーに道場につれていくよう迫るのだった。

他のものと同じように道場にやってきた葉問はそこでリュウ師匠の姿をみつける。
彼は三浦に三人と戦うと申請し、戦い始めるのだが分が悪く、リンチ状態となって敗北する。
ボロボロのリュウは出された報酬の米を持って帰ろうとするがその瞬間、三浦の部下に銃で撃ち抜かれて死亡する。

目の前で起こったリュウの死にラムがここで殺されたことを悟った葉問は次の挑戦者として自ら名乗りをあげる。
リーが止めようとするが怒りに駈られた葉問は10人と戦うと申請する。
その無謀な挑戦に三浦が興味をひかれるなかで、葉問は囲んできた10人の門下生たちを次々に叩きのめし、血の海に沈めていく。

三浦が見つめる先にはうずくまりのたうちまわる10人の前に仁王立ちする葉問の姿があった。
三浦は葉問の腕を評価し、名前を聞こうとするが葉問はあえてただの中国人だとだけ名乗り、リュウ師匠が持ち帰るはずであった報酬だけを持って出ていく。

鬼神のごとき強さをみせた葉問に興味を持った三浦は部下たちに命じて彼をここにつれてくるようにいう。

ある日、子どもたちが日本軍ごっこで遊ぶなかをほほえましくみていた葉問たちであったが、息子のチュンのあとに三浦の部下たちがやってくる。
横暴な彼らは葉問の妻をみるなり拐かそうとするがこれに激昂した葉問は瞬く間に彼らを制裁してしまう。
葉問たちが日本軍によって命を狙われることを恐れるリーは自ら自分の家に彼らを匿い、リンチを受けながらも頑なに彼らを守ろうとするのだった。

その頃、チンチュンの綿花工場では作り上げた綿商品が強盗に奪われる事件が発生。
その強盗団を指揮していたのは葉問に仏山から追放された金岳中であった。

金によって暴行を受けたチンチュンたちは葉問に助けを要請。
葉問は彼らを守るために詠春拳を教え自身の身を守るために工員たちは葉問の指導によって自信をつけていく。
そして再び金たちが身代金を求めにやってくると徹底抵抗の構えをみせる。

葉問に負い目を感じる金たちは強引に彼らに襲いかかるがそこに葉問が現れ、再び金たちは返り討ちにあい、敗走するのだった。

しかし逆恨みする金は葉問がチンチュンの向上に出入りしていることを日本軍に密告。
工員たちに暴力で問い詰めていることを知った葉問は自ら彼らを守るために日本軍に捕まるのだった。

囚われた葉問のもとに三浦がやってくる。
三浦は葉問の詠春拳の強さを高く評価し、自身の命と引き換えに日本軍に詠春拳を教えるよう彼に迫るのだが、葉問はこれを断固拒否。
反対に詠春拳の真髄が見たければ自分と決闘するように三浦に迫る。

三浦もその葉問との一騎討ちを承諾し、交流試合の名目で戦うことを約束する。
三浦は正々堂々の勝負を望んでいるものの、彼の部下には葉問を密かに暗殺するように暗躍するものもいた。
やがて日本軍が、噂を聞いた仏山の人々が、そしてチンチュンや愛する妻のウィンシュンが見守るなか、葉問は絶望的な四面楚歌状態で三浦との最終決戦に挑むのだが…


ドニー・イェンの代表作であり、希代の武術家イップマンの活躍を描いた人気シリーズ第1弾。

現在も関連作品が製作され続けている詠春拳の達人、葉問もの。
これまで彼のパブリックイメージはあくまでブルース・リーの唯一の師匠というイメージであり、その偉大なる軌跡はこれまで知られずにいた。

カンフー映画においてはこれまでも起用されていた詠春拳であったが、実際のところ一般的なイメージとしては謎のままであった。
そこでジェット・リーが復刻した黄飛鴻に続き新しいカンフー映画の英雄として作り上げられたのが葉問である。
彼の伝記アクションをつくるにあたり、その功労者となったのが実際の葉問の子どもであったイップ・チュンとアクション指導としてクレジットされたサモハンであった。

イップ・チュンらの証言をもとに構成された本作は単なるブルース・リーの師匠というイメージを大いに脱却させ、理知的で冷静沈着、それでいて家族愛と民族愛の深い偉大な拳法家という魅力ある英雄像を作り上げた。
この人物像はこれから幾度も作られていく葉問ものの基本となり、様々な俳優たちが葉問を演じる上での基礎となった。

さらに本格的な詠春拳をみせるにあたり、起用されたのが本格派であるドニー・イェン。
これまで彼の作品といえばアグレッシブで総合格闘技をベースにした派手な格闘アクションがメインであったが、本作では彼のアクションのトレードマークである鮮やかな足技やアグレッシブな格闘技は抑えめで本格的な拳法をリアルにみせるサモハンとイップ・チュンの指導に基づいて、特徴的な手技をフィーチャーしている。

それがこれまでのドニー・イェンのアクションレベルの高さの説得力も相まって、葉問の無双の強さを際立たせている。

アクションにおいては徹底したドニー・イェンの詠春拳の凄みが全編にわたって感じられる形となっていて、その格闘シーンにおいては中盤における実力派ルイス・ファンとの激闘など見処も多い。
ただ唯一の弱点としてあげるとするならば、後半からは香港映画お得意の抗日アクションものにシフトチェンジしていくことからラスボスが日本軍関係者へとなるわけだが、その本作におけるラスボスが俳優の池内博之。

ジェット・リーが『SPIRIT』の作品において日本軍のラスボスに歌舞伎俳優の中村獅童を起用したが、どうしても本格派なリーと比べるとアクション的にはダブルも使ったりと見劣りしてしまうのは致し方ない。
本作においても池内は力強い空手のアクションをみせてはいるが、そもそもアクションの印象がない彼がドニー・イェンの最後の相手というのは敵の強さとしてのイメージはどうしても薄くなってしまう。

本作においては葉問を危機に陥れるのがアクション面においてはないというのが、長所であり短所でもあるといえる。

この面においては続編以降で修正されていくのだが、シリーズにおいていうと葉問の伝記ドラマとしては娯楽性も含めて一番真っ当。

後半からは抗日の色が濃いのは観るものにおいては好き嫌いがハッキリしそうではあるが、香港のみならず中華圏でヒットを飛ばすには避けられない脚色ネタではあるのでそこを差し引いたとしても葉問というキャラクターと同一視になるほどハマっていたドニー・イェンの実力は感嘆の一言といえるだろう


評価…★★★★
(葉問の伝記ものとしては最高の仕上がり。惜しむらくは敵のインパクトの弱さか?)

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