皆さんこんばんは

アクション&ホラー映画フリークのいわしでございます。
3ヶ月ぶりの更新となります『いわしの映画独論』シリーズ、支店の更新も相まってなかなか更新頻度もままならないのですが、一応ネタ的なものは作品を見るたびに考えているところであります。

さて今回はお届けします独論ネタでございますが、去年の冒頭にご紹介しました『ニンジャ映画』についての第2弾でございます。

日本で生まれた『忍者』がアクション映画界で巡りめぐって、ハリウッドに渡り未だ衰えぬ人気のジャンルとなっていることは前回ご紹介しましたが、その中で同じニンジャでも世界によっては捉え方も扱い方もそして作品としての傾向も違うということを述べさせていただきました。

今回取り上げますのは格闘アクションにおける本場、『香港・アジア圏内』ではニンジャがどう捉えられ描かれているかをお届けしたいと思います。

その前に軽く忍者についての説明を。
『忍者』とはその起源は室町時代に遡り、大名や領主に仕えたりまたは独立集団で活動し、主に諜報活動や破壊活動に従事、果ては暗殺や謀略など一国の運命をも左右するほどの影響力をもったたぐいまれな能力をもつ集団でございます。

ハリウッドでの忍者は『ニンジャ』と表記され、日本でいうところの本来の活動ではなく、忍者自身の身体能力や戦闘能力の高さだけをフォーカスされたスーパーマン的な活躍を描かれた作品が主流となっていました。

そんな忍者がハリウッドに渡って話題になると同じ頃にこの忍者というキャラクターはアクションの本場、香港映画界にも知れ渡ります。

1970年代後半には当時のカンフー映画界の主流で、東洋のハリウッドとも呼ばれていたショウブラザーズで忍者は起用されております。

しかしハリウッドの描く忍者のテイストとは大きく違っていました。
個々の身体能力や戦闘能力が高いのはもちろんですが、
・主に集団で行動する
・武器だけでなく幻術や気功といったものを使う
・少林寺とは敵対関係になる
こういったところがハリウッドとは違う描きかたとなっています。

そもそも香港に限らず、中国映画に至ってはそのほとんどで日本から来るものは『外敵』と位置付けされ、日本の忍者もそうしたカテゴリーにされ続けています。
特に忍者はその隠密性や使う能力、好戦的なキャラクター付けからか、昔から中国の財宝を狙って侵略してくるというパターンが多く見受けられます。

ショウブラザーズや昔の武侠作品においては特にその傾向は顕著で、宝を守る少林寺の戦士とその宝を狙って襲来してきた忍者集団という構図の作品が数多くありました。

とはいえ、中国における忍者の理解度というのはアメリカのハリウッドとさほど変わらず、作品によっては酷いことにサムライと忍者が一緒くたになっているものもあります。

アクションの特徴としては、規律性に富む日本の国民性を象徴するかのごとく、集団で息のあったコンビネーション攻撃で相手を攻めるという場面が多く、少林寺でいうところの十八羅漢の集団戦法のようにバリエーション豊かな見応えある格闘アクションが魅力的です。

一対一のお互いの技量を尽くした格闘シーンもいいですが、一騎討ちの多いカンフー作品においてそのマンネリを打破すべく、新たな敵のバリエーションとして起用されたのが『忍者』だったのでしょうね。

それでは最後にワタクシいわしがオススメいたします
香港・アジア映画界における忍者映画を幾つかご紹介して締め括りたいと思います


まずご紹介しますのは台湾で製作された
『忍者大戦』



でございます。
台湾出身のアクション俳優、アレクサンダー・ルー主演のこちらはまさに正義の少林寺と悪の忍術の構図となっていて、確たるストーリー性などなきに等しく、全編に渡ってカンフー対忍術の壮絶な死闘が繰り広げられる快作となっています。
そもそもアレクサンダー・ルーが台湾のテコンドーチャンピオンで、その凄まじい足技も必見なのですが、敵である忍者軍団の凄さもキチンと説明しているのがミソです。
いかにして日本の忍者軍団は恐るべき強さを誇るのか、その特訓の様子や奇想天外な忍術の数々も注目でございます。


次に紹介しますのがカンフー映画の老舗ショウブラザーズから
『少林寺VS忍者』



でございます。
主演は少林寺マスターの劉家輝(ゴードン・リュウ)。監督は実兄で名アクション俳優であり武術指導家であるラウ・カーリョン
ラスボスはなんと倉田保昭という豪華すぎる面子。
作風はいつものショウブラザーズ風ではなく、誤解から生じたカンフーと日本武術とのガチ交流戦の感じ。
そもそも主人公の劉家輝の嫁が日本人で日本武術を心酔しているがゆえに中国武術を軽んじていたという夫婦喧嘩から始まる物語のため、出てくる忍者のボス的な倉田保昭もいつもの凄みある悪役というわけでもありませんでした。
見所はカンフー対日本が誇る武術の一大決戦。
カンフー対柔道、カンフー対剣道など忍術だけにとどまらない異種格闘技戦が見応え十分で、倉田保昭のほかに悪役商会の八名信夫が剣道の達人で刺客の一人として出演するなど、この時代の中では日本文化に好意的な珍しい描かれ方をしています。


そして最後に紹介するのはこちら
『龍の忍者』



でございます。
ジャッキー・チェンブルース・リーを輩出したゴールデンハーベストと日本の千葉真一率いるジャパンアクションクラブが交流し、企画製作された本作は、主演が当時アジア圏への進出をみていた現在ハリウッドスターの真田広之、ゴールデンハーベスト側は第二のジャッキーとして売り出し中だった実力派コナン・リーが主演しております。
前半こそ真田広之の忍者アクションとコナン・リーのカンフーが激突し、戦いを繰り広げる展開ですが、やがて和解し共通の敵を倒すため共闘する流れになります。
このラスボスに君臨するのがキングオブキッカー、黄正利
躍動感溢れる真田とリーの二人を相手どって凄まじき強さを発揮し、クライマックスを盛り上げてくれています。
真田とコナン・リーとの対決も見応えあるのですが、全体的にシリアスなのかコメディなのか分かりづらい空気感が気にならなければ、最高峰の香港映画製ニンジャアクション作品といえるのではないでしょうか。


このほかにもカンフー対忍術という構図の作品はかなりあり、近年でもシェー・ミャオ主演の『少林寺十八の羅漢』ジェット・リーが主演した『スウォーズマン』、更には黄飛鴻が活躍する『ワンチャイ』シリーズの外伝ものにも出てくるなど、香港映画ひいては中国映画界では適度に強大な敵として忍者は活用されているようです。
惜しむらくはハリウッドのように好意的な扱われ方が少ないということでしょうかね。

そういったわけで今回の独論はここまで。
残る本家日本映画編もいずれお届けいたしますのでお楽しみに
それではまた次回の独論でお会いしましょう

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