みっくんは次に
「チャネリング」に疑いを抱きました。
疑いは抱いたけれど
みっくんにとってチャネリングは
とても絶対なものだったので
疑いを抱くことへの罪悪感や
自分が間違ったことをしているのではないか、という
恐怖も強かったそうです。


だけど、みっくんは勇気を出して
試してみることにしました。
「チャネリング」中に
嘘を少しずつ言ってみることにしたのです。
「Aさんに隠していることがある」とか
「ほかに好きな人ができたかもしれない」とか
「最近大きい収入があった」とか
嘘で、なおかつAさんが気にしそうなことを
「神様」に向かって少しずつ話しました。


すると、Aさんは
「チャネリング」中じゃない素のときでも
その話を知っているような素振りを
見せるようになりました。
しかも、嘘なのに、真に受けています。


そして、みっくんはある日、「チャネリング」中に

神様じゃなくてAさんに静かに話しかけました。

「そんな演技をしなくても、僕はあなたが好きだったのに。

そんな演技をしないあなたの方が好きだったのに」と。

動揺したように電話はとつぜん切れ、

その直後、Aさんから怒りの電話が掛かって来ました。


みっくんはそこでやっと
自分が騙されていたことを自覚しました。
その時点で、
Aさんに振り込んでいたお金は
六百万円以上でした。


みっくんが私に相談してくれたのは
その時でした。
私は話を聞いて本当にびっくりして
みっくんのことを馬鹿だなぁとも思ったけれど
真剣に苦しんでいるのを放っておけなくて
いろいろと電話で相談に乗って
それがきっかけで付き合うようになりました。

みっくんがAさんに対して
疑いを抱いたきっかけは
とても些細なことでした。


Aさんは
厳格な「ベジタリアン」を
自称していたそうなんです。
「動物さんは生きる意志があるのに
殺して食べるなんて可哀想」
「野菜だけで生きていた方が健康になれる」
と…。
みっくんもそれを見習って、
日ごろから肉やお魚は食べないようにしていました。


ところが、みっくんがAさんの
ご自宅にお邪魔していたある日の出来事。


Aさんは2階建ての一軒家に住んでいるのですが
(経済的に余裕がないはずなのにね)
普段は1階にしか通してもらえなかったそうなんです。
1階は客間みたいになっていて
ピアノや、雰囲気のいい置物や
オーディオセットなどが置いてあります。
2階がAさんや息子さんの生活空間らしいです。


1階でお茶を頂いていたところ
Aさんに急用ができて
「1時間ほど待っていて」と言い残して
出かけてしまいました。


普段ならみっくんは
おとなしくそこで待っているのですが
その日、みっくんはAさんへのお土産に
桃を持って来ていました。
真夏の暑い盛りの日に、桃。
部屋に普通に置いておくと傷んでしまうかもしれません。
だから、みっくんは
勝手に2階に上がることは申し訳ないと思いながら
桃を冷蔵庫に入れておいてあげようと思って
2階の台所に行きました。


まずびっくりしたのは
普段のAさんの雰囲気からは程遠い
2階の部屋の汚さだったそうです。
数ヶ月は掃除をしていないんじゃないか、と
みっくんは感じたそうですが
しかし、Aさんはお忙しいし
育ち盛りのお子さんがいるわけだから
仕方ないかもしれない、と思い、
冷蔵庫を開けました。


そこには、スーパーで買ったものらしき
生春巻のお惣菜が入っていました。

生春巻。
当然、動物性の海老が入っています。

Aさんはベジタリアンの筈じゃなかったのか…と
みっくんは混乱しました。

だけど、気を取り直して
「貰いもので、捨てられずに困っているのかもしれない」
「たまたま、ベジタリアンじゃないお客様が来るのかもしれない」
と考えました。

だけど、疑いをぬぐうことが出来なくて、
冷蔵庫の他の段や
キッチンストッカーなどを開けてしまいました。


そこには、普通に
お肉が使われたもの、
魚が使われたもの、
牛乳が使われたもの、
などが入っていました。


Aさんは実際のところ、全くベジタリアンではなかったのです。


人の家の冷蔵庫や戸棚を勝手に開けた
みっくんの行動は褒められたものではありませんが
小さな嘘に気づいてしまったその日から
みっくんはAさんに疑いを抱き始めました。

みっくんにとって
一番印象に残っているのは
「チャネリング」だったそうです。
「チャネリング」というのは
たぶん「channel」から来ていて
「神様と周波数を合わせて受信する」
という感じでしょうか。
Aさんの身体に
神様が乗り移って
Aさんの意思とは関係なく神様が喋る、という儀式です。


夜中に「チャネリング」中のAさんから
電話がかかって来ることがよくあったそうです。
「チャネリング」中なので、
みっくんにとって電話の相手は
Aさんではなく神様で
神様の言うことをお聞きする電話だったそうです。


電話で、神様はとにかく
Aさんのことを褒めたたえるそうなんです。
Aさんは素晴らしい人で、まさに選ばれた天使のような人で、
みっくんはAさんの言うことをよく聞かなければいけない、と。


当然のことですが
これはAさんの自作自演です。
あまりにも滑稽な話で
私は聞いたときには唖然としました。
だって、自分で電話をかけて
「神様」のフリをして自分を褒めたたえる、って…
並の神経で出来ることではありません。
だけど、みっくんは本当にそれを信じてたんです。


正確には
「チャネリング」の人格は3つあって
「神様」は低い男性のような声で
いろいろなことを啓示する人。
「天使」は、無邪気な声で
Aさんをひたすら褒める人。
それから「悪魔」の人格があって
「悪魔」だと
「みっくんがこういうことを言ったから
Aさんが罰を受けて苦しめられる」
みたいな脅しを言うそうなんです。

みっくんはAさんが自分のせいで苦しめられるのが怖くて
悪魔をすごく恐れていました。


Aさんは女優にでもなった方が
良かったんだと思います。