![]() | 夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 早川書房() ¥ 1,680 |
心にしみこんでくる、端正でこよなく美しい余韻(2009-06-29)本棚の最も大切な場所にそっと大切に置いておきたくなるような、カズオ・イシグロさんの始めての短編集、<音楽と夕暮れをめぐる美しい5つの物語>。 夢や憧れの象徴としての音楽、そして、昼が終わり暗い夜に変わろうとする夕暮れは、過ぎ去った人生への思いやあきらめを象徴しているかのようです。 なかでも、サラ・ボーンの歌う、ハロルド・アーレンの美しいジャズのスタンダードナンバー「Come Rain Or Come shine」にちなんだ「降っても晴れても」は、なんとも言い表わしようのない深い感動が残りました。 いずれの作品も、登場人物たちの信じていた夢とあきらめとの間の、微妙な心の揺れが端正で美しいタッチで描かれていて、ふかい余韻が残ります。 翻訳は、カズオ・イシグロさんの英文を知悉なさっていらっしゃる土屋政雄さんの名訳です。 関心をお持ちの方は Farber and Farberの<NOCTURNES / Five Stories Of Music and Nightfall> を、ぜひ、検索なさってみてください。しっとりとした、端正なたたずまいのカズオ・イシグロ英語が堪能できます。こちらも、ハードカバーで、装丁がとても瀟洒で素敵です。 いずれも最高の五つ星です。 | |
音楽を愛する人々の人生模様を緩やかに描く著者初の好短編集をお楽しみください。(2009-06-21)長崎県生まれの英国人文学作家カズオ・イシグロが2005年のベストセラー大作「わたしを離さないで」以来4年振りに刊行した著者初の書き下ろし短編集です。著者は若い頃ミュージシャンを目指した時期もあったとの事で、本書に登場する音楽を愛する人々の姿から著者自身の若き日の音楽に対する熱い想いが伝わって来ます。本書収録の5編はどれもリラックスし肩の力を抜いて書いた小品の趣で、タイトルから連想される様な重々しい物でなく、むしろコミカルで人生どう転ぶか解らないという緩やかな可能性を秘め、読み手に自由に解釈を委ねる結末には微かにそこはかとない夢と希望が感じられます。 『老歌手』ベネチアのカフェで演奏していた流しのギタリストの私がアメリカの往年のベテラン大物シンガーと出会い、音楽人生への想いと長く愛し合って来た夫婦の行く末を教えられます。『降っても晴れても』大学時代の友人夫婦と久し振りに再会した僕に夫が夫婦の危機を打ち明ける。夫婦が不在で留守番中にひょんな事から犬の匂いをでっち上げるというとんでもない展開になる本書一番のユーモア編です。『モールバンヒルズ』ギター片手にシンガーソングライターを目指す学生の僕は都会暮らしに行き詰まり、ひと夏を田舎の姉夫婦のカフェで過ごす事にした。僕は店で働く内に出会った音楽家夫婦の険悪な仲を目撃する。若き日の著者を思わせる主人公の情熱と冷めた中年妻の諦念が対照的です。『夜想曲』テナー吹きの俺は他の男に惚れて別れようとしている女房の勧めで顔の整形手術に踏み切る。病院で「老歌手」のシンガーの元妻と出会った俺は、やがて二人共に包帯姿のままでちょっとヤバイ犯罪事件を起こしてしまう。『チェリスト』若いチェリストの青年が自称チェロ演奏の大家と名乗る旅のアメリカ人女性と出会い個人指導を受ける奇妙だが充実した日々を描きます。ますます円熟味を増す著者の好短編集をお楽しみください。 | |
長編にはない新鮮な趣が・・・(2009-06-15)過去、文芸誌等にていくつかの短編(『夕餉』など) は訳出されたことがあるものの、 「短編集」としてはイシグロ初の一冊。 通奏低音として流れるのは、引き続き 「個人にとっての大事な過去と、記憶の改ざん」 というテーマであり、夕暮れの時刻はまこと そのテーマに相応しい。 また元ミュージシャン志望だけあって音楽には詳しく 全編男女の悲哀に焦点が当てられ 一篇を除いて舞台を都市に設定するなど 長編にはない新鮮な趣がある。 どちらにせよ、一読して地味な作品群ではある。 しかし氏の敬愛するチェーホフと同じく、 表面的な静けさが必ずしも文学的な静けさでは無い、 ということが真に理解できる一冊である。 | |
- 充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)
- Nocturnes
- 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)
- 日の名残り (ハヤカワepi文庫)
- わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

心にしみこんでくる、端正でこよなく美しい余韻(2009-06-29)
音楽を愛する人々の人生模様を緩やかに描く著者初の好短編集をお楽しみください。(2009-06-21)
サイバラ流カネ視点で見た人生論(2009-06-26)

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誤訳・珍訳・日本語がおかしすぎます。。(2009-07-19)


そんなに楽しくなかった・・・。(2008-07-18)
