五月サロンは端午の節供をテーマに | 季節のひとこと ~サロンレポートとライフスタイルデザイナーの仕事~

五月サロンは端午の節供をテーマに

新緑が美しい爽やかな五月は、私が最も好きな月です。
今期のサロンは五節供と代表的な季節行事を取り上げて学んでいます。改めてそれらの謂れや歴史について学び、そのしつらいや料理を踏まえながら生徒さんの個性を生かした演出を指導しながら実習を進めています。

五月の行事である端午は5月5日に行われますが、これは旧暦の日付です。現在のカレンダーに換算すると、今年は6月18日がその日です。実際の季節感を知ることで、行事に欠かせないものや事柄の背景がはっきりと分かります。現在の6月といえば、梅雨の只中です。そこで旧歴の五月は、爽やかな気候ではなく湿気の多い頃だと分かります。そこで旧暦五月はなぜ悪月(あくづき)と呼ばれていたのかという理由も納得できます。そして、五月晴れは梅雨の合間の晴天を指す言葉だということも容易に理解できます。
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梅雨頃は田植えの季節でもあります。五月の和名は皐月(さつき)ですが、皐月の「さ」とは、田の神の名前です。この月には田の神が里に下りてきて米作りを見守ります。つまり、皐月とは「さ」の神が来てくれる月という意味です。

田植えは「さおり」という神事です。「さ」の神が「降り」る、の意味があるようです。
この神事では、田に入り苗を植えるのは清らかな乙女たちです。「早苗を早乙女が植える」のです。苗には「さ」の神が宿り、乙女たちは、「さ」の神に仕え、豊作の願いを込めるのです。
大切な神事を前に、乙女たちは「女の家」と呼ばれる仮設小屋に一晩籠もり、心身を清め、田植えに臨みました。その日が旧暦5月5日であったといわれています。
端午の節供は、大陸から伝えられた時には、老若男女の祓えの行事でした。やがて武家の時代には男子の節供となり、現在では性差を付けず、子どもの日となりました。しかし、米作り文化の中では、女の日だったのです。

江戸時代の浮世絵にも「五月忌み」と題した作品を見ることができます。これは江戸の商家での様子です。18世紀の大都会江戸では、この日に女たちだけが集まって楽しむ女子会のような行事になっていたようです。表情がとても生き生きと楽しそうですね。赤ちゃんは男子です。兜と武具甲冑が飾られていますからこの子の端午5月5日の祝いです。この日は女性たちもお酒を少しだけ…母も楽しい一日だったのでしょう。
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田植えが終わると、「早苗饗」(さなぶりorさのぼり)という、田植えに関わった仲間を労う宴が催されます。この宴は、実は「さ」の神のための宴会です。
「さ」の神は、秋の稲刈りまで里にとどまり、収穫後の秋祭りで人々が神に感謝を伝えると神の国に帰っていくのです。日本の多くの地域では、田の神は山に登り、山の神になるとされています。沖縄では、海のかなたのニライカナイに帰るといわれます。
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さて、五月のサロンランチテーブルのお話をしましょう。食卓は、新緑の爽やかさと端午の節供の凛々しさを表現し、緑と紫を組み合わせたデザインです。演出のみならず、料理にも緑色をふんだんに使っています。
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ウェルカムドリンクは、リンゴジュースを炭酸水で割り、レモンをギュッと絞った甘酸っぱい一杯です。ジュースには胡瓜のスライスを浮かべ、グラスには胡瓜の輪切りを一切れ挿しています。これから暑くなってくる季節にはぴったりの味です。
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始めの料理は、蕪のムースです。蕪を少量の水にコンソメを少々加えて柔らかくなるまで煮て、牛乳を加えてフードプロセッサーにかけます。塩・胡椒で味を整え、ゼラチンを加えます。器に注ぎ冷やし固めれば出来上がりです。前もって作っておける簡単レシピで、おもてなしにも活躍します。
とろりと柔らかい食感と蕪の優しい蕪の甘味は始めの料理として最適です。食すときに青菜のパウダーを牛乳で溶いたものをかけます。白と緑が爽やかで涼しげです。
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次の料理は、鶏むね肉の生バジルロールとアボガドのヨーグルトソースかけです。こちらも、白と緑色の料理です。
むね肉の皮をむき、身を薄く切り広げ、塩・胡椒をしたら、生バジルをたっぷり芯にして巻きます。ラップでしっかり包んだら、蒸し器で火を通し、そのまま冷やします。蒸したときに出た汁は、とてもおいしいので後の料理に使うために取っておきます。バジルの香りがさわやかです。冷やした白ワインやスパークリングワインとも合います。
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次は、中華サラダです。胡麻油と切り胡麻の香りと生レモン汁が食欲をそそるドレッシングです。野菜がたっぷり食べられますよ。
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メインデッシュも白と緑色の一品です。イカと青野菜の清湯翡翠炒めです。味付けには先程の蒸し鶏のスープを使います。胡瓜、ピーマン、ブロッコリーは油通ししておきます。中華鍋に生姜、葱を香りが立つように炒め、中華コンソメで軽く下味を付けたイカを炒めたら、野菜を加え、スープ、オイソターソース、ナンプラーを合わせたタレを絡め、水溶き片栗粉でとろみを付けます。イカは冷凍でもOKです。
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続いて、笹巻枝豆ご飯です。この季節に映える鮮やかな青色の笹に包みます。帆立貝缶詰めを加えて炊き込んだご飯に茹でた枝豆を混ぜ、俵形に結びます。
長尾典子オリジナル小重に盛り付けます。蓋を開けると笹の美しい色と小重の内側の金色でハッとする瞬間です。
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デザートも緑色です。抹茶のベイクドケーキは、メレンゲの軽さと牛乳のしっとり感が2層になって焼き上がるケーキです。グリーンキーウィを添え、緑色尽くしです。
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今月もありがとうございました。
日々の手作り料理の参考になれば嬉しいです。

六月は、夏越の祓えと嘉承の日をテーマに学び、実習、ランチを楽しみます!