イジャーラ契約は、イスラム金融における主要な契約形態の一つであり、日本語では「賃貸借契約」に相当します。以下に、イジャーラ契約の構成要素、特徴、報酬の確定性、およびメジェッレの条文について説明します。

イジャーラ契約の構成要素

イジャーラ契約は、以下の主要な構成要素から成り立ちます。

  • 賃貸人( المؤجر - Mu'ajjir ):
    • 賃貸物件の所有者であり、物件を賃借人に貸し出す者。
  • 賃借人( المستأجر - Musta'jir ):
    • 賃貸物件を借り受け、利用する者。
  • 賃貸物件( المأجور - Ma'jur ):
    • 賃貸の対象となる資産。不動産、車両、設備などが該当します。
  • 賃料( الأجرة - Ujrah ):
    • 賃借人が賃貸物件の利用に対して支払う報酬。
  • 契約期間( مدة الإجارة - Muddat al-Ijarah ):
    • 賃貸借契約が有効な期間。

イジャーラ契約の特徴

イジャーラ契約には、以下のような特徴があります。

  • 資産の所有権と利用権の分離:
    • 賃貸人は資産の所有権を保持し、賃借人は利用権のみを取得します。
  • 賃料の確定性:
    • 契約時に賃料と契約期間が確定される必要があります。
  • 資産の維持管理責任:
    • 原則として、賃貸人が資産の維持管理責任を負います。
  • イスラム法との適合性:
    • 利子(リバー)を禁止するイスラム法に適合するように設計されています。

報酬の確定性

イジャーラ契約において、報酬(賃料)の確定性は非常に重要です。イスラム法では、不確実性(ガラール)を禁止しており、契約時に賃料と契約期間を明確に定める必要があります。

  • 賃料は、市場価格や資産の利用価値に基づいて公正に決定される必要があります。
  • 変動する可能性のある要素(例えば、将来の市場価格の変動)に基づいて賃料を決定することは、原則として認められません。

メジェッレの条文

メジェッレ(オスマン帝国の民法典)は、イスラム法に基づいており、イジャーラ契約に関する条文も含まれています。メジェッレにおけるイジャーラ契約の主な規定は以下の通りです。

  • イジャーラの定義:
    • メジェッレでは、イジャーラを「ある人が他の人に一定の期間、一定の対価で特定の物を譲渡し、その人がそれを使用または利用すること」と定義しています。
  • 賃貸物件の要件:
    • 賃貸物件は、明確に特定され、利用可能なものでなければなりません。
  • 賃料の要件:
    • 賃料は、契約時に明確に合意される必要があります。
  • 契約期間の要件:
    • 契約期間は、明確に定められる必要があります。
  • 賃貸人の義務:
    • 賃貸物件を利用可能な状態で提供し、維持管理する義務があります。
  • 賃借人の義務:
    • 賃料を支払い、賃貸物件を適切に利用する義務があります。

メジェッレの条文は、現代のイスラム金融におけるイジャーラ契約の基礎となっています。ただし、現代のイスラム金融では、メジェッレの規定に加えて、現代の金融取引に対応するための様々な工夫がなされています。