『アンネの日記』の著者であるアンネ・フランクはあまりにも有名で、一度でも名前を聞いたことがある人は多いだろう。

 

第二次世界大戦時、ナチスドイツによるユダヤ人迫害から逃れるために隠れ家に避難し、ナチスに見つかるまでの日々の出来事を綴った彼女の日記は、戦争という暗くて不安の日常だけでなく、戦争が終わったら、という未来の願望や、少女だからこそ体験する恋心なども綴られている。

 

ホロコーストの生存者の1人である、アンネの父親であるオットー・フランクの手によって出版され、全世界で翻訳された。

そのアンネの義姉が、エヴァ・シュロスなのだ。

義姉といっても血は繋がっていない。

アンネにはマルゴットという実姉がいることは、『アンネの日記』を読んだ人なら知っているだろう。

だが、エヴァの存在を知っている人はどれだけいるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

エヴァとアンネは、元々アムステルダムの学校の同級生だったので、エヴァとオットーは元々顔見知りだった。

アンネの一家もエヴァの一家も、それぞれ隠れ家に住んでいたのだが、密告によりナチスに捕まり、収容所に収監された。

戦後、オットーとエヴァは再会し交流を深めていく中で、オットーは妻と娘のアンネとアンネの姉であるマルゴットは亡くなったこと、エヴァもまた、父のエーリッヒと兄のハインツが亡くなったことを知る。

ホロコーストの生存者が生きるには、あまりにも過酷な現実の中で、互いに支えが必要となるのは当然の流れだったのだろう。

こうして、エヴァはアンネの1か月歳上の義姉となった。

 

 

 

 

では、エヴァがこの本を出版したのは、ホロコーストから40年以上も経過した1980年代だった。

彼女がこの手記を出版した思いは

 

エヴァが経験を全て書き表すことで真実を知ってほしいという思いからだった。

アウシュビッツは二度と起こらないというが、実際にはジェノサイドや戦争が世界で起きている現状。人種差別や偏見や暴力がどんなに危険をはらんでいるかを若い人に教えることが生き残った者の義務であり責任だと考えたからだ。

またアンネは生前、「自分は死んでからなお生き続けたい」と日記に綴っていたらしい。

『アンネの日記』により、アンネの願いは叶っていると言える。

だが多くのユダヤ人の子ども達のことは誰も覚えてくれない、一族全員がこの世から消された人々がいることも忘れてはいけない。

 

エヴァの本には多くの人々の名前が出てくる。私たちが知らない彼らの人生、苦悩の時間があったことをこの著者を通じて想像することができる。

ここに生きた人がいたという証があることが、エヴァの願いでもあったのだろう。

 

 

ロシアがウクライナへ軍事侵攻を初めて約3年が経つ。

ロシアがさも悪いかのように感じるが、エヴァの手記に書かれているロシア人は、紳士的でとても情に厚い。対してドイツ人はとても冷酷である。また同じユダヤ人でありながら平気で仲間を裏切る人もいる。

 

やはり人間性に民族は関係なく、本質なんだと思えた。戦争をしかけたロシア人が悪いのではなく、ロシア人の中にも善良で人間味がある人もいる。

アンネは日記の中で

「人間の本性はやっぱり善なのだということを、いまでも信じているからです」

と書いてあるが、私もそう思いたい。

それは、私がエヴァやその他のユダヤ人のような迫害を受けたわけでもないからかもしれない。

 

ぜひ、この本は『アンネの日記』と合わせて読むことをお勧めしたい。

 

私も少し時間を空けてから、アンネとエヴァのそれぞれの人生の物語を対にして再度読んでみたいと思う。