前の記事の続きです。



実は今日はワンフェス参加の前日入りで上京しているのですが、そのついでに東京ドームシティ内で開催されている「魔神英雄伝ワタル&魔神創造伝ワタル展」を見に行きました。私は英雄伝〜の頃に小学生でリアルタイムだったのですが残念ながら実家のある地域では放送されておらず、コロコロコミックで断片的な情報を摂取しただけでした。そのルサンチマンを解消するべく創造伝〜はアマプラリアタイしたのですが、これがもうハイコンテクストofハイコンテクストでむちゃくちゃ面白く、プラモを買って仕上げたりブルーレイBoxを買ったりもしているのですが、そんなところに大規模な展覧会開催とは実にラッキーです。以下撮影した写真を連投します。









こうして歴代ポスターを並べると時代ごとの「絵」の変遷が如実に分かって面白いですね。80年代は太い線で原色寄りの色使いと明暗のコントラストがビビッド。90年代に入ると敢えてバランスを崩す“遊び”を持たせたデザインになり、現代は過去を踏襲しつつも細く繊細で破綻のない絵になっています。

















英ワタ龍神丸のスタチュー。おそらくこれが現時点での決定版のフォルムでしょう。もっちりした手がかわいいです。これで「頭のキャノピー(?)は絶対光沢」「黄色いところは実はゴールド」と公式カラーが分かりました。





記念撮影用の大きな幕。創ワタはとにかく背景美術が素晴らし過ぎます。描いている人は絶対歴史的重要建築およびそのデザインがお好きなんでしょう。この朱塗りの擬宝珠付き柱なんて「柱」でカウントする日本の神格を反映したものだろうし。あともともと擬宝珠は龍が持つ宝珠に似せて作られたものだから龍神に関わるモチーフ。







一方で英ワタの背景美術も凄い。上下に有機的なパイプラインを張り巡らしまくった重工業的なエリアなんてジオラマにしたら絶対かっこいい。あとバリの聖獣バロン神の仮面を模したデザインも良いし、世界中の多神教の神話からネタを引っ張ってくるのは英ワタの頃からやってたのでしょう。







場内にはこのような記念撮影スポットがたくさん設けられていました。海外からのお客さんが楽しそうに撮影していて、グローバル市場での人気ぶりが窺えました。





英ワタの敵魔神もみんな良いデザイン。ミリタリーモチーフは本気でウェザリングしたら絶対映えるだろうし、ハマーホラーモチーフは海外の模型っぽい鮮やかな色で塗装したら面白そう。あとトレーラーヘッドに手足が付いてる魔神は明らかにコンボイ司令官のパロディ。当時のプラモ版権はタカラだから…



380円のプラモで二足歩行ロボット形態から四足歩行の動物形態に完全変形する機構は、やっぱりトランスフォーマーのノウハウが生かされていたんじゃないかと思います。本当に様々な面で豊かな時代だったんだなあ…



改めて公式絵を見ると、空神丸の目にも白いハイライトが入ってちょっとキラキラしてました。あと翼上部の白い部分のラインが滑らか。だんだんリベンジしたくなってきたけど空神丸プラモは超絶入手困難…。聞いたところによれば当時から空神丸とクラマは人気だったとか。足元見てるのかバ⚪︎ダイは。



いずれここら辺の魔神もHG展開してくれたらいいのですが。



空王丸も何気に鳥頭の流れるようなラインが美しくないですか?空神丸のプラモも初列風切羽的なパーツのラインが綺麗でしたが何気に曲線美魔神なのかも。あとこれ見て初めて気付きましたが、このシーンっておそらく創ワタの天翔丸極消滅シーンのオマージュ元ですよね。



こうした構成で展示されると、ワタルと虎王は陰陽思想における陽龍と陰虎、「龍虎相搏つ」東洋美術の定番モチーフが如実に反映されていたんだと気付かされます。



あと英ワタのラストバトルって、コウモリの羽を付けられ悪魔にされてしまった西洋における龍と、インドで神仏習合され最終的に日本に伝わり神道における神にもなった龍という東西の文化相違の対決になってるのが何とも象徴的。





粘土細工の龍神丸の記念撮影スポット。この「自分の手で魔神を作る」が創ワタのメインテーマになったのでしょう。自分で作ったロボットに神が宿るってむちゃくちゃ夢があります。



夏鬼丸って武器が戟矟(三又の鉾)で光背を背負っているなど仏像彫刻の様式が反映されており、また三又の鉾は西洋ではギリシャ神話の海神ポセイドンのアトリビュートだから海も想起させるという見事なデザイン。あと「夏鬼」は夏至の意味。とすると冬至の冬鬼丸もいなきゃいけないけどいたっけ?



超ワタはファンからの評価は低いらしいですが魔神のデザイン方針がガラッと変わっててこれはこれで面白いと思います。手足はグッと細くなって肩幅は広く、また足首から下がボリュームアップしたメリハリあるプロポーション。





実はリアル等身龍神丸は超ワタの時にもう出ていたという事実。まさか今の時代にプラモになるとは。



炎モチーフで向かって右に色白なやつ、左に色黒というか色が付いたやつがいる構図は不動明王三尊形式が元ネタかも。というか仏画では白と色付きを左右に配置するのがわりとお約束で、俵屋宗達の風神雷神図屏風もそれが元ネタという説あり。この形式は創ワタでも踏襲されていたのかも。





色と明暗対比がビビッドでコントラストが強い英ワタと、繊細な線でパステルカラーを多用している創ワタの違いって、例えるならバロック絵画とロココ絵画の違いに似てるかもしれません。



創ワタコーナーのブロック龍神丸。リアルにブロックを組み合わせてスタチューを作るって何気に面倒なのでは。





創ワタコーナーは英ワタコーナーに比べて如実にパネルの文字情報が少なかったのですが、英ワタコーナーを見るのは大人、創ワタコーナーは子供向けという想定だったからでは。あと創ワタの方が“絵”の情報量が多いからバランスを取っていたのかもしれません。まず背景絵の情報からてんこ盛り。


この「錦鯉エリア」なんてこれ一枚に鯉の滝昇り、登竜門、青海波のモチーフが詰め込まれていて、そのモチーフの意味通りちゃんと劇中で使われていました。親子連れだったら、このモチーフの意味とそのいわれとなった中国故事、さらにそこから鯉のぼりの意味とデザインを子供に教えたら絶対会話が弾むでしょう。



創ワタも記念撮影スポットがたくさん用意されていました。



かつてギリシャ神話で知識と叡智の象徴とされながらもキリスト教により悪夢と死を象徴する悪鳥に貶められてしまったフクロウ型の魔神にデマ半分の週刊誌の記者が搭乗して敵として登場する皮肉とか、子供は今は分からないだろうけど、いずれ学校で勉強したら“分かる”やつ。







あと普通に敵魔神のデザインが良くて1話だけで退場なんて本当に勿体無いです。







にしても文字情報が無さすぎる。





デザインでまたもや見事なのがこのサウナ監獄。サウナと網走刑務所の放射状舎房と八角堂と鐘楼門と竈を組み合わせるとか、どういう頭をしていればこれらを組み合わせることを思い付くのか。あと確か天井に「釜」とも書かれていたから、地獄の釜の蓋とか民間信仰の火の神(荒神)信仰のイメージもあったのかもしれません。



ところで真っ黒い柱に何のキャプションもなくいきなり貼られててびっくりしました。まさにあらゆるところに偏在する八百万の神。



ここら辺の魔神(下段)もHG展開してくれないでしょうか(2回目)。



鳳凰に赤の補色の緑を持ってきたり玄武の蛇を省略せず2匹ちゃんと描いてたりと四神のデザインも面白いです。特に玄武の蛇は生命力の象徴なのに省略されがちだから。あとスサノオの帯が片流しで、粋な着こなしで解きやすい→神様装束を脱ぐ→神を辞める→記紀のネタ回収だと想像したけど違ったっぽい。









炎上太陽の再現。3Dプリンタ出力で太陽部分はLEDでミラーボールの構造に似ていたから頑張れば再現可能かも。



















場面パネルいろいろ。神様ちっちゃいものクラブ状態のシーンが可愛すぎる。力を使い果たした四神と神の使いズのデザインは同じだから、原型1つ作ってペイントを変えればどっちもいける。あとリュンリュンをゴールドにすれば「もし龍神が小さくなったら」もいける。







個人的に一番見応えがあったのはこのプラクションの展示。これが当時1個380円で買えて消費税もまだなかったとかもう信じられません。ガンプラに80円足すだけで色プラでギミック付きで変形するんだから。




子供向けの簡素な作りだったとはいえ形自体は悪くない。380円でこれなら上等もいいとこ。






















あと劇中にデザインはほぼそのままでカラーチェンジしたり、ちょっとディティールが増えただけのデザインの魔神も出てきますが、それらも使い回しではなくちゃんと原型を作り起こしていたのが分かってさらにびっくり。










本当にバブル爛熟期って豊かな時代だったんだと如実に分かると共に今まさに衰退の時代を生きているんだなと実感しました。



もう一つびっくりしたのがこの当時ものの子供用肌着。子供用の肌着なんてすぐサイズが合わなくなる消耗品の量産品なのにこのシルクスクリーン印刷のレベル。発色も良ければ型ズレも一切なしでもちろん国産。豊かさってこういうことなんでしょう。





ところでやっぱり戦国空神丸って東北新幹線カラーじゃないですか?



あと神龍王丸、ゴールドになるとより一層仏像感があるような気がします。もう蓮台と光背を作って飾りたい。インドでナーガラージャになって仏教で龍王になり日本に来て神道に取り入れられた歴史が全部入ってるみたいな。









出口付近にあったメッセージコーナー。公式のスタッフさんたちのメッセージ&イラストがたくさんあってむちゃくちゃ豪華でした。


なおグッズもたくさん販売されていたのですが、ワンフェス前で荷物を増やすことができなかったので、模型と一緒に飾るためのアクリルリング(スタンド)のみ購入しました。



戦神丸&戦王丸をぜんぜん持ってないのになんか可愛かったからシバラク先生のアクリルリングも買ってしまいました。ワタル展のメインビジュアルで一番可愛いのはシバラク先生だと思います。



なお、場外の少し離れた場所にあったドリンクスタンドにてコラボメニューも展開されていたので、こちらでも記念に龍神丸ソーダを購入しました。ランダムでもらえたコースターの絵柄は英ワタの戦部ワタルだったので、これもいつか模型展示の際に活用しようと思います。