2014年10月に鹿児島県霧島アートの森で開催された横尾忠則さんの展覧会「横尾忠則の地底旅行」の公式カタログとして出版された画集ですが、この展覧会を鑑賞しなくても「洞窟」という共通のモチーフで集められた氏の作品集として楽しめる画集でした。
 
古来より「洞窟」は神話や伝説、宗教的なエピソードと関係が深い場所です。また洞窟は地上よりはるかに進んだ文明を持つ地底世界へと繋がっている…といった月刊ムー的な眉唾オカルト話とも関連付けられており、海外には「洞窟愛好家」といった趣味人も存在するほど。
本書で紹介されている横尾さんの作品も、洞窟にそうした神話、伝説、宗教のモチーフを絡めたものがほとんどなのですが、その縦横無尽なモチーフの組み合わせが面白く、シュールレアリズム作品か、もしくは”手描きのコラージュ”のような印象を受けました。
特に個人的に印象的だったのは以下。

 

 

 

 

洞窟に江戸川乱歩の少年探偵団シリーズ、浦島太郎、ジュール・ベルヌのSF作品、古事記、仏教(曼荼羅)、同じモチーフが異なる作品で繰り返し使用されていることも多く、氏がこれまでどのような作家や作品から影響を受けていたのか、またその好みの傾向などが分かって興味深かったです。
ただ1つ残念なのは、画集そのもののサイズに比べて収録されている作品写真のサイズが小さいこと。注釈は別のページになってもいいから、絵そのものをもっと大きなサイズで載せてくれたらいいのにと思いました。それでも絵そのもののパワーが凄いから十分見ごたえはありましたけどね。