本書は「あやしい」をテーマにルネサンス期の絵画を分類・解説した本です。種類としては以前このブログでもご紹介した「怖い絵展」の書籍と同様ですね。
戦乱や黒死病の蔓延からある程度復興した後、その反動からかより人間味を帯び、かつ古代ギリシア・ローマの美術様式を復活させた新たな芸術のムーブメント「ルネサンス」がイタリアを中心に勃興しました。とはいえ当時の主な絵画のモチーフはやはりキリスト教の聖書のエピソード。そこには当然聖人を堕落させるる悪魔や地獄風景なんかも出てきます。まだ生物学もをはじめとした学問の各分野が確立していなかった時代、「恐ろしいクリーチャー」は完全にアーティストの想像に任せられていましたが、これが今見てもかなり面白い、というかムチャクチャカッコ良いもんだから驚きです。
まずこのローザの「聖アントニウスの誘惑」の悪魔、骨を筋肉や外骨格のように解釈したデザインは絶対にギーガーに影響を与えていると思います。あと日本だと竹谷さんと韮沢さん。
クリーチャーデザインのバリエーションの豊富さとどこかユーモラスな印象を受ける”群像”の画家ブリューゲルも見ごたえがあります。
というかブリューゲルのクリーチャーデザインも「アドベンチャー・タイム」の元ネタの1つだと思います。ブリューゲルが描いたクリーチャーをゆめかわカラーにしてもっとシンプルな線にしたら「アドベンチャー・タイム」の「〇〇ピープル」か鏡面世界のクリーチャーになりそう。
これは中世の欧州で流行った、敢えて自分の棺や霊廟をボロボロに腐り果て蟲や動物に食い荒らされる自分自身を表現した様式「トランジ」(transi)。transire(trans「越えて」とire「行く」)というラテン語から派生した言葉で、日本語では「腐敗屍骸像」と訳されます。アジアの九相図がシルクロードに乗って西洋に渡って独自進化したという説もあるとのこと。迫り来る死を恐れるのではなく、真正面から対峙し共に生き、そこに救いを見出そうとするスタイルだそうですが、それもまた九相図に通ずるものがあります。。
トランジは間違いなく黒死病の蔓延から生まれた「死の舞踏」と同様のスタイルだと思いますが、それならこのコロナ禍でも何かしら「死と共に生きる」新しいムーブメントが生まれないものでしょうか。おそらく日本でそれに相当するものはアマビエなのでしょうが。
それ以外にもっと明確に「死」をモチーフとした何かが流行らないものか…と考えてしまいました。




