仙台市はフィンランド・オウル市と友好都市協定を締結している親芬都市なので、当然本書も市民図書館に収蔵されています。

 

現在フィンランドは「北欧のシリコンバレー」と言われているくらいTech強国ですが、その中でもとりわけTechで地域経済をV字回復させたTech立市がこのオウル市だったりします。だからTechで地域経済を活性化したい仙台は友好都市協定を締結していろいろ同市とコラボしているわけですが。

 

 

なんと前書きにちゃんと「仙台」が、それも複数回記載されていました。この宣伝効果は絶大なのでは。
 

本書は、オウルが北極圏すれすれのクソ田舎からいかにTech立市になったか、その裏でどんなキーマンが活動していたかを企業や教育期間の取り組みや公的支援の活動を振り返ることで紹介しています。

今でこそオウルはIT立国フィンランドの中でもとりわけ”ITクラスター都市”と言われている街ですが、市内の人口はわずか13万人、周辺地域も含めたオウル経済圏全体でも人口22万人の小都市圏です(ちなみに仙台の人口は約103万人)。フィンランドは比較的温暖な南部に商工業地帯が集中しており、それに比べたら不利な位置にあります。実際、ITに舵を切る前は林業とタール、皮革加工をはじめとする手工業が主な産業の小さな田舎町だったとか。

ことの発端は1958年、オウル大学、特に電気工学科が設立されたこと。これにより理系の学生の人口流出に歯止めがかかると共に、オウル以外の地域から優秀な人材が集まりました。当初は「なんでこんなクソ田舎に?」という声もあったそうですが、若い理系の人材が一定数集まったことをきっかけにノキアの研究部門をはじめとするIT関連企業が進出(本書刊行時の2008年の時点で1331社)し、それに伴いIT系の労働人口も1万数千人に達したとのこと。22万人の都市圏で1万人以上がIT系の企業に勤めているなんて、日本の地方都市ではまず考えられません。この割合は世界的にも非常に高く、そのためオウルは「北欧のシリコンバレー」と言われるようになりました。

 

本書の編集で面白いのは、街の歴史を「人」を軸に紹介していることです。街の歴史が時系列で並んでいる構成はよくありますが、まず最初にどんな人が動き、次にどんな人が街にやってきてどんなことをやったか…地域経済の振興はたった一人、また一朝一夕で為し得るものではなく、長い時間をかけて人から人へとまるでバトンを手渡すように続けていかなければならないことが分かります。最初は教授一人から始まったオウル大学電気工学科設立が同街に多くの人材を惹きつけ、それから様々なIT企業がやってきて、その企業人がまた人材を育成し、それがきっかけでノキアもやってきて黄金時代に突入、更に市の支援でオウル・テクノポリスができ、まさに人材とIT企業の百花繚乱といった様相になっていきます。

 

ただ、これは2008年当時までのオウルの状況を紹介したもので、それからノキアの凋落になりオウルだけでなくフィンランド全体に怒涛のノキアショックが巻き起こります。その後のことはまた別の本やメディア記事に詳しいのですが、それからノキアとオウル市はノキアをリストラされて失業した人に、別の企業に再就職するのではなく自分の会社を設立するよう勧め、それを支援する活動を始めます。それが功を奏し同市はノキア頼みではない、様々なIT系、およびゲーム系のスタートアップが軒を連ねる街へと進化するのでした。

 

なお、オウル市の公社に今友達(日本人)が勤めているのですが、会うたびに「オウルはフィンランドの仙台」または「仙台は日本のオウル」と言われます。そう言われ続けると、じゃあいつか必ずオウルに行かなければなあ…なんて思ってしまいます。コロナが収束したらまたフィンランド行きの算段をしなければ。

 

ちなみに以下の文章が何か印象に残りました。

 

これ、2008年だからこう書いていますが、今ならマインクラフトですよね。それも今ではとっくに実現しているというフィンランドおよびオウルの情強っぷりよ。