先日「ボヘミアン・ラプソディ」を見て不意にダリのことを思い出してしまったので図書館から借りてきました。
 
本書はダリが渡米した際に出版したエッセイの和訳版なんですが、何が最高って、ダリ自身が全ての挿絵を描いているということです。つまりダリ自身の文章と絵をいっぺんに楽しめるという超・お得な本。これはシュールレアリズムが好きな人は必見でしょう。

 

 

ちょっとしたスケッチや素描がもう凄い。おまけにそのキャプションももちろんダリ自身のもの。

 

 

序文がアツい!

 

ただ、本書を読むと、ダリという人は作品や自身の言動は一見非常にエキセントリックでいかにもな奇人変人だから何?!な天才ですが、その裏には膨大な知識と教養があり、何より本人がクソ真面目で努力の人であったことが透けて見えてきます。

 

まず気付くのは、ダリの古典を基礎とする考え。特にルネッサンス時代の画家ラファエロを信奉する姿勢です。エキセントリックなシュールレアリストが古典に倣い基礎を重視するなんて意外に思う人もいるかもしれません。しかし、実際は常人には理解不能なくらい変なことをやるには、常人が及びもしない程の基礎鍛錬と学習、それに裏打ちされた真に実力が必要なもんなんですよね。それは絵画に限らず、全ての創作活動に於いてそうでしょう。

 

あとグッときた部分がこれ↓

 

ダリの芸術に対する自信と信頼が現れた部分だと思います。

 

 

ザ・クソ真面目

 

マネタイズを忘れんな、たとえできなくても完璧を目指せ、基礎を忘れるな、健康に気を付けろ、古典を学べ、自分を卑下するな、怠けるな、とにかく描け、飲み過ぎるな、マリファナも吸うな、自分の作品を愛せ…どれもこれも真っ当過ぎるくらい真っ当です。

 

それに続くこれらの記述がまた泣かせます。

 

 

「正妻とは十二歳のときから一緒に暮らしている。彼女の歳はその当時で千三百歳だ。彼女の名前は「絵」。」

ストイックにも程があります。

 

なお、ダリは愛妻ガラによって真の芸術家へと進化・深化したと言われています。彼女の方が年上だったこともあり、不幸なことにダリはガラに先立たれてしまうのですが、それ以後の作品は明らかに精細を欠いたものとなりました。私は東京で開催されたダリ展も見に行きましたが、一人ぼっちになってしまってからのダリの作品は、色調も暗く、対象への興味も明らかに失せており、確かに”上手い絵”ではあるのですが寂しさや虚しさが痛々しいまでに伝わってくるような作品でした。ダリはガラに先立たれてから10年も一人で暮らさなければならなかったそうで、その間いかに辛かったか想像するだけで恐ろしくなります。

 

また本書のガラの記述が良いんですよ。

 

 

ガラ良い人過ぎる。

こんな奥さんに先立たれたらそりゃ創作意欲も削がれます。

 

本書を読んで思ったのは「天才が努力したらとんでもないことになる」ということです。だからこそ凡人の我々はより努力しなければならない。単純ですが「がんばるぞ!」と前向きな気持ちになれる本でした。あとダリの文章の軽妙洒脱なこと!
 
なんて粋な表現なんでしょう。

もうとにかくとんでもない知識と教養、洒脱な表現、そして努力の跡を垣間見ることができるエッセイでした。オススメ!

 

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