前の記事の続きです
 
少年誌作品のエリアの次は大人向けのブラックユーモア作品のエリアですが、ここでまた面白い”仕掛け”が登場。それは…
 
敢えてフラッシュを焚いて撮影するよう促しているパネル。普通、写真撮影OKの展覧会でもフラッシュはNGなものですが、ここではむしろフラッシュ撮影しろと指示。実際撮影して画像をチェックしたら…
 
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フラッシュ撮影でしか表示されないコミックスの表紙が現れたのでした。通常NGなことを逆手に取った展示!上手い!つくづく上手い!
 
あと大人向け短編作品の扉絵を大小様々な額に入れて展示するレイアウトも怪しくていい感じです。
 
このインドお土産品の舞姫人形、事前に読んだ藤子A先生のエッセイにも書かれていました。腰や顔が揺れるようにできており、部屋の電気を消して人形にだけライトを当て、揺れている様子を見ながら酒を飲むとえも言われぬ心持ちになると…自分のお気に入りの品さえ漫画のネタにする藤子A先生のたくましさよ。
 
藤子A先生シュールレアリズムも好きなんですね。
 
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「怪奇や」(「魔太郎がくる!!」の怪しいものばかり売っている店)のオヤジそのまんま「オペラ座の怪人」じゃねえか!今気づいた!
 
こちらは現在の藤子A先生の仕事場の机を再現した展示。机の上から原稿が舞い上がっている展示も凝ってます。もちろん原稿はコピーですけどね。
 
 
 
 
どう見てもクリストファー・リーだろ!
 
それをデフォルメするとなぜこうなるのか?このセンス素晴らし過ぎます。この目の形なんて一体どういう頭をしていれば思いつくんでしょうか?
また出た「オペラ座の怪人」オマージュが。本当に藤子A先生この作品が好きなんですね。
 
ここら辺は藤子F先生の「ジャイアンめり込みパンチ」に通じるものがあります。両先生はお互いの作品に干渉せず、あれこれ感想や指摘を言ったりもしなかったとのことですが、先の画像にある「目じりが下がった怪しい目」もドラえもんにしょっちゅう登場したりしているので、やはり両先生はさり気なくお互いに影響を与え合っていたのではないか…なんて考えてしまいました。
 
これまたドイツ表現主義みを感じるコマ。この木の枝の描き方といい、黒のシルエットで表現する手法といい、藤子A先生は「カリガリ博士」あたりも絶対観てますよね。
 
渋過ぎる口上に達筆な文字。このコピーライティングのセンスには、藤子A先生がプロ漫画家を志す前に新聞社に勤めていたキャリアが反映されているような気がします。
 
これもエッセイの中に書かれてました!自動車教習所の教官があまりにも横柄でムカついたので漫画のネタにしたというやつ!ルサンチマンをそのまま表現したかのようなド直球なタイトルが面白いです。
 
 
短編作品を動画仕立てにした作品も上映されていたのですが、それが引きこもりをテーマにした「明日は日曜日、そしてまた明日も…」。これの何が凄いって、発表されたのが1971年であることと、藤子A先生自身は堅気の社会人生活を送れるムチャクチャ社交的な人であることです。現代の問題を30~40年先取りした時流を読む感覚の早さもさることながら、自分とは全く違うタイプの人が抱える問題をも描ける「共感力」の高さも凄い!
 
藤子A先生の作品をまとめてみると、そこには「時代の先を見通していち早く描く」という共通項があることが分かります。ホラー映画が百花繚乱になる80年代より前に漫画の元ネタにし、ゴルフが流行る前に「プロゴルファー猿」を描き、いじめが社会問題として認識される前に「魔太郎がくる!!」を描き、そして短編作品でひきこもり問題を描く…。「時代の先を見通していち早く描く」という点では藤子F先生作品も同様ですが、藤子F先生の場合は「ドラえもん」のようにテクノロジー寄りになることが多いのに対し、藤子A先生は社会問題から娯楽・社会風俗と全方位に渡っており、一体どれだけアンテナ感度の高い生活を送っていたのかと感嘆しきりでした。
 
そして次はいよいよ「笑ゥせぇるすまん」エリアです!
 
 
宙に浮かぶ喪黒さん…。これは映像を空中に浮かび上がらせて表示するホログラムシステム。この展覧会は何気に最新テクノロジーを使いまくっていて、その点でも非常に見ごたえがありました。
 
 
闇に浮かぶ喪黒さんのパチスロ機…魂どころか金まで吸い取られるやつだ。藤子A先生作品はパチスロに起用されまくるのも特徴です。
 
コントラストの強い描画が本当にスタイリッシュ。
 
 
展望台での展示ということで、展望台がモチーフになった作品を順路に従ってまるごと1本見ることができました。
 
 
 
こちらは喪黒さんのトリックアート。凹凸と陰影を利用したオブジェで、どの方向から見ても喪黒さんと目が合ってしまうというやつ。写真で見ると喪黒さんの部分が飛び出しているように見えますが、実は凹んでいます。
 
こちらはあえて喪黒さんが「下」になっている記念撮影スペース。ここに立っていかにも呪いを受けたかのようなポーズをして写真を撮影し、後から編集で上下を回転させると、シーンの一コマのようにちょうど喪黒さんの呪いを受けた直後のように見えるという仕掛け。写真編集されることをあらかじめ考えたブースセッティングになっているんですね。

 

 

展覧会ラストは、他のアーティストとのコラボや正式発表されていない藤子A先生の私的な作品の展示でした。

 
こちらは藤子A先生の初期の作品でド直球でヒーローものの「シルバークロス」。これを現代風にリファインしたのが…
 
 
 
 
神の手を持つ造型師こと竹谷隆之さん!縫製はJAP工房!なんだこの夢コラボは!せっかくここまで作ったのだから、これをそのまま使って実写化するのはどうでしょう?
 
あと魔太郎のあのシャツもありました。あのバラ柄のスクリーントーンって魔太郎で知られるようになりましたよね?
 
 
 
 
藤子A先生のイラストやラフスケッチ、模写など。いずれも公式発表されたことのない、あくまでも「練習作」ではありますが、それらの上手いこと上手いこと。
 
 
 
こちらは絵付けをして焼き付けた「陶画」。イラストがぐうかわ!これグッズ化して量産したら売れるんじゃないでしょうか?
 
あと作中にも登場した藤子A先生の「変コレクション」も展示されていました。
 
海外旅行のお土産にこれを選ぶセンス。藤子A先生は「仮面愛」も絶対ありますよね。
 
タイのパペット。
 
なぜ本革の一本鞭?それも2本。
 
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先の大人向けブラックユーモア作品の元ネタになったインドの舞姫人形。
 
これ良い!真鍮製のアンティークの手の大型クリップ。これも「魔太郎がくる!!」に登場しました。
 
 
こちらは藤子A先生の作品の資料の一部。どれが何の資料になったか、生原稿を見た後だとなんとなく分かるのが面白いですね。それにしても、コレクションにせよ資料にせよ藤子A先生は本当に良い趣味してます。
 
こちらは藤子A先生がデザインした富山県氷見市のマスコットキャラクターなんですが…
 
絶対狙って世間一般の「かわいい」を外してデザインしてるだろ。
自治体のマスコットキャラクターでこのデザインはアヴァンギャルド過ぎるw
 
…とまあ展覧会全体の内容はこんな感じでしたが、最後の最後までネタが仕込まれていました。
 
最後のお見送りは3Dスキャナと3Dプリンタで製作されたミニ藤子A先生フィギュア。ところがこれ、ただのフィギュアではなく…
 
ご覧のとおり、3Dホログラムで映像が重ねて表示されるという仕掛けが施されていたのでした。仕組みは横浜にあるDMMのVRシアターと同様で、映像を「反射」させて投影しているんですね。で、藤子A先生のメッセージ中に表示されるQRコードをスマホのカメラで認識すると、展覧会の特設ページに飛んで…
 
藤子A先生の3Dモデルをグリグリいじくることができる。
なんだこれ!
 
このポージングから察するに、どうも入り口に展示されていた等身大スタチューを作るにあたり、藤子A先生の全身を3Dスキャナでデータ化していたらしく、それを使用したスペシャルコンテンツのようでした。
 
 
 
先生のモデルの周囲にはキャラクターを表示させることもでき、ちょっとした疑似AR的なお遊びもできるようになっていたんですが、全身のデータ化が済んでいるということは、もう藤子A先生はいつでもVTuberデビューできるということ。こうなったら藤子A先生にVRに降臨してもらいましょう!
 
こちらは展覧会会場の外に設えられたグッズショップ。「魔太郎がくる!!」にちなんで「怪奇や」となっています。ここで必見なのは…
 
 
 
ハドソンのファミコン版「忍者ハットリくん」がグッズ化!これ凄いレアじゃないですか?ゲーマー的にも見逃せないアイテムですよ!
 
キャラクターと一緒に写れるプリ機。カメラアプリのフレーム機能とスタンプ機能をあらかじめセットしたような実物の写真を撮影できる非常に手の込んだオリジナル筐体です。この展覧会だけにするのはもったいない!一般展開したら結構ウケるんじゃないでしょうか。
 
夜に行ったため終了時間もあり2時間程しか鑑賞時間を割けなかったのですが、ゆっくり見るとしたら余裕を持って3時間くらい欲しい展示内容でした。一回順路通りに観賞しただけではもったいない内容で、出来れば2回くらい繰り返して全体を見たかったです。
 
あと六本木ヒルズのバーで喪黒さんをイメージしたカクテルが飲めるコラボが開催されていたのですが、こちらも時間がなくて行けず。「ドーン マティーニ」というネーミングが最高です。