仙台市民図書館の蔵書のラインナップがすごいと以前から度々書いていますが、「玩具・人形」のカテゴリに四谷シモンさんの著書を置いているあたりも本当に最高ですね。司書の中に人形者がいるんでしょうか?でも仙台なら十分あり得ますよね。ある程度人形者がいなかったらそもそもドール系イベントなんて開催されていないし、それなりの人形者人口がいるなら当然市の施設の職員になっている可能性だってあるし。まあどのみち市民にとっては嬉しい話です。こうやって市民サービスに反映されているんですから。
今回借りたこの「四谷シモン 人形日記」は、四谷シモンさんの日々の日記(というかブログ記事)を書籍用に再編集した内容です。無論書籍なのでテキストは縦書きで写真のレイアウトも変更されています。スマホから画像を貼ったらうっかり天地逆になってしまいましたが。
読んでまず最初に思ったのは「かわいい」です。四谷シモンさんは1944年生まれの人形作家で、まあそれなりにお年を召している方なのですが、文章が全体的に「かわいい」のです。かわいいものを作る人は何から何までかわいいのか?
内容は氏の人形制作の過程だけではなく、むしろそれに関する記述は少なく、その日どこに行ったとか、何を見たとか、何を考えたとか、誰に会ったとか、または飲み過ぎて記憶がなくて二日酔いでダルいとか、過去の思い出とか他愛もないものばかりです。ところが、そんな日々の雑記の中から、氏の創作哲学や思想、アーティストとしての氏を形作ったもの、幅広い交友関係がにじみ出てきて、それが非常に面白いのです。他人の日常を覗き見てその人そのものを知る感じというか。これが誰かに読んでもらうことを前提とした「ブログ文学」の面白さなんですよね。
私が最も印象に残ったのは、四谷シモンさんの「江戸っ子っぷり」です。氏はお父さんがバイオリニスト、お母さんがダンサー(のちに小料理屋経営)という芸能一家で、幼少の頃から引っ越しをくりかえすもすべて東京の下町という生粋の江戸っ子。芸者さんやお祭り、その他下町ならではの文化や風情に生まれたときから馴染んでおり、それを今でも愛しています。それが文章の端々から伺え、かつその後の氏の活動(ロカビリー歌手、俳優、人形制作)や作風に影響を与えていることが分かり、そのなんとも言えない粋な空気がたまりません。
四谷シモンさんの書籍は既に何冊か出版されていますが(しかもそれも仙台市民図書館にある)、本書はがっつり読むエッセイや自伝ではなない、日記ならではの軽~い散文と何気ない写真群から氏の人となりを伺うことができるブログ本です。それはそれでファンにはたまらない一冊ではないかと思います。あと一応人形制作時の写真もあるので造型の参考にもなるんじゃないかと思います。
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