先日VRエヴァンジェリストのGOROmanさんの本を読み、ふと思い出して改めてこれを読んでみました。舘暲さん著「バーチャルリアリティ入門」です。
刊行は2002年10月20日。現在のVRムーブメントどころかARムーブメント、さらに仮想空間バブルよりも前に第一刷が発行されているという、新書としてはもはや古典レベルの本ですが、内容的には今読んでも十分面白く、またアーカイブ的にも貴重なんでオススメです。ビジネス新書って「これの半分くらいで済むことをムリヤリ伸ばしてこのページ数にしたんじゃないか」っていう水で薄めたような内容のもありますが、本書に関しては、もっと突っ込んで書けばハードカバー本一冊分に相当することをムリヤリ新書の文字数にしたんじゃないだろうかというくらい情報密度が濃く、もうVRクラスタの必読書といってもいいくらいです。ザックリ新書でVRを学ぼうとするなら、これと新清士さんの本、そしてGOROmanさんの本を読んでおけばOK!
本書はまず「VRって何?」「ARって何?」という初歩的な解説から始まり、VRの開発の歴史を辿るのですが、冒頭、そもそもVRを「仮想現実感」と訳すのが間違いで、西洋における「Virtual」の概念が東洋には存在しないことが示されます。むしろVirtualの和訳である「仮想」「虚構」は本来のVirtualという単語の持つ意味とは真逆で、「Virtual」は「みかけや形は原物そのものではないが、本質的あるいは効果としては現実であり現物であること」。それを念頭に置くと、ソーシャルVRサービスやバーチャルYoutuberも全て腑に落ちます。ソーシャルVRサービスは現実のコミュニティではありませんが、皆アバターを介して誰かと交流したり誰かと遊んだり、また誰かと一緒に何かを作ったりする。それは現実の世界ではないけれども、やっていることは現実の世界と同等です。同様に、バーチャルYoutuberも誰かが作った3Dアバターのデータを「中の人」がモーションキャプチャーで動かして喋っているので生身の人間ではありませんが、やっていることはリアルのYoutuberと変わりません。やっていることは「実質そう」なのです。ちなみに著者の館さんはVRを『バーチャルリアリティ、それは「抽出された現実」である』と解説しています。

Virtualの対義語はRealではなく「nominal(名目上/形式)」であり、Realの対義語は「Imaginary(虚実)」。もう翻訳段階から間違ってるんですが、その概念自体が無かったのだから仕方のないことではあります。
なお、館さんはVRの現在の翻訳語である「仮想現実感」よりも「人工現実感」という言葉が適切であると説きます。これも腑に落ちる表現!VRは誰かが作った現実であり、仮想空間は誰かが作った空間だし、バーチャルYoutuberも誰かが作ったYoutuber。もの凄くしっくりきます。
こうした解説の後に、国内外の企業や研究チームが開発してきたVR/ARに関するガジェットや事例が紹介されるのですが、これがもう刊行から16年経った今見ると面白いのなんのって。
ソニーのVR HMD。これが15年後にPSVRへと結実するのです。
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オリンパスのARスマートグラス。これは超えるのがなかなか難しいキモズム感…
90年代のクマちゃん社長!これはぬいぐるみではなくキャプションにあるように「ロボット・ホン」で、これに話しかけることで誰かと通話できます。その内容によって手を動かしたりとジェスチャーするんですが、これも現在既に商品化されてますからね。
東京大学の研究段階のVRHMD。ゴーグルではなく「ヘルメット」なのが興味深いですが、確かに安定した着け心地だったらゴーグルよりもヘルメットの方が良さそうですね。
ロボットとVRの組み合わせなんて今まさに滋賀県のロボティクス・スタートアップの人機一体がやってることだし。
今回改めて本書を読んで気付いたのは、「15年前に研究段階だったものが今製品として売られている」こと。言い換えると研究段階のものが商品になるまで15年かかるということなのでしょうが、今は不特定多数から資金調達できるクラウドファンディングがあるので、昔に比べ製品が世に出るスピードは3倍速くらいにはなったかもしれません。
…とまあとにかくオススメの一冊なのでVRに興味のある方、VRクラスタな方は是非読んでみて下さい。













