仙台の新居の近所には「せんだいメディアテーク」という図書館とギャラリーとイベントスペースとシアターとカフェとギャラリーショップと、とにかくあらゆる文化施設が全部一つの建物にまとまった大型公共文化施設があるんですが、そこで偶然こんな本を見つけました。

 

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普通に市の図書館の蔵書にこれがあるって凄くないですか?もしかして司書の中にスチームパンカーがいるとか?仙台あたりならあり得なくもないですよね。
 
この「スチームパンク・バイブル」は、ただスチームパンク的な作品を羅列するのではなく、スチームパンクの創始者と言われているSF作家のジュール・ヴェルヌとH・G・ウェルズの経歴および作品録の解説に始まり、彼らのフォロワー的な作家たち、さらにそれらに影響された他ジャンルの作品やファッション、DIY作品と順を追って解説しているかなり読み応えのある書籍です。写真も多数掲載されていますが、あくまでもスチームパンク作品集ではなく、スチームパンクの歴史とルーツを読み解く「解説書」です。

 

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写真ページはこんな感じ↑

 

で、一通り読んでみて気付いたことがあります。それは各文章の展開と本書全体の構成がオライリーのDIY雑誌「Make:」に非常によく似ているということ。まあこれも洋書の翻訳なので、英文の、それもDIYを扱った文章が似た感じになるのはある程度はしょうがないのかもしれませんが。

 

 

ちなみにオライリーの「Make:」も日本語版が刊行されています。基本Tech系書籍なので電子工作やプログラミングなどに関する記事が多いですが、まったくのDIY&ハンドメイドの記事もあり非常に読み応えがあります。

 

ここでまた気付いたのは、スチームパンク・ムーブメントとDIY精神、それもTech系もの作りは密接につながっているということです。本書の中で紹介されているスチームパンクな手作り作品の多くは「ガジェット」をモチーフにしたもので、現代のガジェットを敢えて19世紀的なスチームパンク様式に改造したりしていますが、そもそもこうした改造はTech系の知識がなければできないもの。また建築や乗り物、オブジェなど大型の作品の写真には、明らかにアメリカ・ネバダ州で毎年開催されている奇祭「バーニングマン」で撮影されたと思しきものが多数あるのですが、この「バーニングマン」もまたTechギークと相性が良く、参加者は前述の「Make:」の読者層とかぶっています。というか「Make:」にバーニングマンのレポート記事が掲載されてるし。

そもそもスチームパンクは「SF」のサブジャンルの一つであり、「もし電気以上に蒸気機関が発達していたら?」というロストテクノロジーに着目したジャンル、はなからTechと無縁ではいられないのです。本書は全体的な構成が「Make:」的で少々理屈っぽく、Tech寄りな雰囲気ですが、その分この明確な事実に気付かせてくれます。

 

なお、文中で「スチームパンク的に優れた映画」が挙げられており、ここで日本映画がかなり高く評価されているのが印象的でした。宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」「ハウルの動く城」、大友克洋監督の「スチームボーイ」あたりは鉄板ですが、賛否両論ある紀里谷和明監督の「CASSHERN」まで挙げられていたにはちょっと驚いてしまいました。