8月18日(金)に放送されたアニメ「ドラえもん」の最初のエピソード「がんばれ!おばけハウス」をご覧になりましたか?

 

(画像はドラえもん公式サイト「ドラえもんチャンネル」より拝借)

 

このお話は、カミナリオヤジの神成さんに謂れのない因縁を付けられたドラえもん達が、彼をギャフンを言わせるためにお化けをけしかけて驚かせようとするものの、酒で酔っ払っていた神成さんはお化けに驚くどころか彼らを一喝し、無理難題をふっかけた挙句ドラえもんを「青狸」呼ばわりし…というもの。もっと詳しいあらすじは先の「ドラえもんチャンネル」のページをご覧下さい。

 

私は当初このお話は、てんとう虫コミックス「ドラえもん」12巻に収録されている「ゆうれいの干物」のアレンジだと思っていました。これもまた「目論みに反してお化けが怖がられない」ストーリーで、古典落語「お化け長屋」のパロディ話でもあります。

 

 

しかしその後、Twitterにて「がんばれ!おばけハウス」は現在てんとう虫コミックス「ドラえもん カラー作品集」5巻に収録されている「弱いオバケ」のアレンジであることを教えて頂きました。

 

 

この「弱いオバケ」のあらすじは、スネ夫の弟「スネツグ」にびっくり箱で驚かされたのび太が、その復讐のためにドラえもんの道具「おばけ探知機」で古井戸に住んでいたお化けを見つけ、彼らにスネツグを脅かしてもらうよう企むというもの。ところがお化けたちは「現代の人間は全然お化けを怖がらないので出たくない」とゴネます。そこでドラえもんは「一目見ただけでゾッとした」とお世辞を言ってお化けたちをおだて、どうにかこうにかスネ夫の家に誘導するのですが、ガイコツはスネ夫の飼い犬に骨を奪われ、のっぺらぼうはスネ夫に「へのへのもへじ」と顔に落書きされ、お岩さんはスネツグを背に乗せ飛ぶことを強制され…とひどい目に遭ってしまいます。これ、スネ夫一家をカミナリさんに取り替えただけでプロットはほぼ同じです。 そしてこの「弱いオバケ」もまた古典落語「化け物使い」のパロディなのです。

 

いらすとや」より拝借。本当にいらすとやは何でもありますね。

 

「化け物使い」は、人使いが荒いと巷で評判のご隠居が化物屋敷に引っ越すも、毎晩現れる妖怪にあれやこれやと仕事を言いつけてこき使い、最後に化け狸が「こう化け物使いが荒くちゃ辛抱できない」と音を上げるという滑稽話です。

 

 

今回放送された「がんばれ!おばけハウス」のアレンジの秀逸な点は、お化けをけしかける対象をスネ夫一家からカミナリさんにしたことで、元ネタの「化け物使い」により近づけたことです。しかもカミナリさんはドラえもんのことを散々「青狸」と呼んでいましたが、これも「化け物使い」で妖怪に化けていた「化け狸」にちなんでのことでしょう。

 

 

なお、「弱いオバケ」では「おばけ探知機」という道具を使用して古井戸で”本物のお化け”を探していたのに対し、「がんばれ!おばけハウス」では「おばけハウス」という道具からお化け(おそらくロボットか何か)を呼び出していました。アニメ版のドラえもんがリブートされて以降、このようにドラえもんのひみつ道具そのものが描き替えられたことが結構ありました。大概はクスリ系やガス系などヤバい道具ですが、なぜ「おばけ探知機」が「おばけハウス」になったのか?これは私の想像ですが、”道具を使ってお化けを探す”のは「妖怪ウォッチ」とイメージがかぶるからではないしょうか?もちろん大人ならドラえもんの方が妖怪ウォッチよりもはるかに先だということは分かりますが、それでも現代の子供・若者は「妖怪ウォッチのパクリじゃねえか!」と思うでしょう。

 

そこで思い出しました。アニメ版「妖怪ウォッチ」にも「目論みに反してお化けが怖がられない」エピソードがあtったことを。それは28話「出たぞ古典妖怪!」です。奇しくもこのエピソードも、ケータがクマとカンチを”怖がらせるため”に妖怪ウォッチを使って怖そうな妖怪を探すという「弱いオバケ」に似た流れで、出てくる妖怪も「ろくろ首」「一つ目小僧」「から傘お化け」と「3人」なのです。でも、ケータが彼らをクマとカンチに差し向けても、ろくろ首は「首が伸びるだけ?つまんないね」と言われ、一つ目小僧は冷ややかな視線を向けられ、から傘お化けは「ボロい傘だな」と言われ、すっかり自信を失ってしまいます。この流れもまた「弱いオバケ」と同じ。おそらくアニメスタッフはドラえもんの「弱いオバケ」が古典落語の「化け物使い」のパロディであることも含めて知っていて、さらに妖怪ウォッチでパロディの元ネタにしたのではないでしょうか?妖怪ウォッチのパロディの多さ、さらに今ドラえもんと同様にコロコロコミックの看板の一つとなっていることを考えると、十分あり得ることだと思うのです。