昨日、シリーズ最新作「カーズ/クロスロード」の宣伝のため「カーズ」の続編の「カーズ2」がテレビ放送されました。
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カーズ2 (吹替版)
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私はこれも東京にいた頃一度観ているのですが、確かに子供向け映画としてはよくできている方でしょうが、ディズニー/ピクサー映画としては出来が悪い方の作品ではないかと思いました。特にあの「カーズ」の続編であることを考えると、ストーリーは散漫だし、メッセージも一貫しておらず、あってもなくてもどうでもいいようなシーンも多く、なんだかとっちらかった印象です。続編というより、同作の子供向け短編作品シリーズ「メーターの世界つくり話」の延長線上にあるような”スピンオフ”的存在というか。
「カーズ」の短編作品の日本語版は2014年にYoutubeで公開されています。
本作についてはライムスターの宇多丸さんがラジオ番組で非常に適格な批評をしています。私が思ったことはだいたい宇多丸さんが言ってくれた感じです。
宇多丸さんも指摘していますが、本作におけるディズニー・ヴィランズは「ペッパー」と呼ばれる車達です。日本では「故障(胡椒)」にかけて”ペッパー”になっていますが、本来の名称は「欠陥品」という意味もある「Lemons(レモン)」で、みな実在した世界の珍車、迷車、ダメ車がモデルになっています。例えば、ペッパーのメインキャラの一台である「ザンダップ教授」のモデルは旧西ドイツの自動車メーカーのツェンダップが1957年~1958年までの約半年間のみ生産していたバブルカー「ヤヌス」です。
ひん曲がった屋根のキャリヤーが”ハゲ散らかし感”を醸し出していて非常に秀逸なデザインです。
写真はWikipediaより。これの特長は車体の「前後」に扉が付いていること。定員は2人で、乗るとお互いが背中合わせになります。前に乗るときはハンドルがむき出しになり、ハンドルと車体の隙間から体を滑り込ませます。また後部座席に座ると後続車と常に顔を見合わせている状態となり気恥ずかしいったらありゃしない。そもそもこの設計だと縦列駐車したら車内から出られなくなりますよね。なぜこのようなデザインにしたのかまるで謎。約半年の間に6000台ちょっと生産されたそうですが、果たしてそのうち何台がまともに売れたのでしょうか?
また、ザンダップ教授の取り巻きの「グレム」のモデルはアメリカン・モーターズ(1987年にクライスラーに買収)が1970年にリリースした「AMCグレムリン」で、もう一台の取り巻き「エーサー」のモデルは先の「AMCグレムリン」の後継車で1975年リリースの「AMCペーサー」です。
写真はWikipediaより
写真はWIkipediaより
70年代といえばちょうどアメリカで日本車がよく売れるようになった頃で、当時のアメリカン・モーターズは日本車との競争とオイルショックで経営不振に陥り、その状況を打破するため前衛的なデザインの「グレムリン」「ペーサー」をリリースしました。当時としては斬新なデザインで、実際に女性に好評だったようですが、今見るとぶっちゃけダサく、「ダサい車ランキング」では必ずランクインするダメ車として知られています。
他にも、旧ソ連時代の自動車メーカーのザポリージャが生産していたフィアット600のパクリ車「ZAZザポロージェツ」がモデルのキャラクターやら、旧ユーゴスラビア時代の自動車メーカーのザスタバが生産していた激安車「ユーゴ45」がモデルのキャラクターやらが出てきたりと、ダメ車選びがやたらとマニアックなのです。っていうか絶対スタッフはジェレミー・クラークソン&リチャード・ハモンド&ジェームズ・メイ時代の「Top Gear」を見てただろ!なお、これらの珍車、迷車、ダメ車は全て番組内でボロクソにこきおろされており、物によってはジェレミー・クラークソンに物理的にボコボコにされています。劇中、タイヤが動きにくく、常に他の車にケツを押してもらわないと動けないザスタバ・ユーゴ45をモデルにしたキャラクターが出てきますが、彼がなぜそのように描かれていたかはこれを見れば分かります。
ガキ共のチャリに追い抜かれる程度の馬力しかないなら、確かにケツを押してもらわないと動けないw
宇多丸さんはペッパー達に何の救いも与えられず、ただ敵役として切り捨てた”塩対応”に憤っていましたが、これらに救いを与えるのはいかにディズニー/ピクサーといえども無理です。まあ実際にダメ車ばかりを集めた博物館があったら面白いかもしれませんが。私はこれらダメ車をヴィランズにし塩対応のままストーリーを進めたのは、むしろ車バカならではの発想だと思います。そもそもマニアじゃなかったらこんな車達を映画に出そうとは思わないだろうし、その前にこんな車があること自体知らないでしょう。むしろ世界のダメ車がディズニー・ヴィランズとして登場することで、「Top Gear」の黄金時代を知っているような人々は確実に喜びます。ジェレミーにぶっ壊された車がヴィランズだってwww…と。しかも上手いのは、既に無くなっているメーカーと国のダメ車をモデルにしていることです。ダメ車はいつの時代でも現れるものですが、今も実在するメーカーや国の車をモデルにしたら確実に大炎上するでしょう。しかしメーカーや国も消滅し、車バカなら絶対喜ぶマニアックなダメ車をヴィランズにすれば安心して面白がることができます。私は、むしろこのディズニー/ピクサーの判断は上手いさじ加減だったと思います。
先にも述べましたが、「カーズ2」はディズニー/ピクサー作品としてはビミョーですが、「Top Gear」を見た後に見るとまた違った角度から楽しめるのでオススメです。ちょうど「艦これ」をプレイした後に「バトルシップ」を見たり、「けものフレンズ」を見た後に「キングコング: 髑髏島の巨神」を見るとさらに楽しめるのと同じようなものです。
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TOPGEAR (トップギア シリーズ22)
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ジェレミー・クラークソン&リチャード・ハモンド&ジェームズ・メイ時代の「Top Gear」はシリーズ22が最後です。今は同じメンツでAmazonで同様の番組を持っています。
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ディズニー カーズ トミカ C-22 プロフェッサー ゼット(スタンダードタイプ)
864円
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ディズニー カーズ トミカ C-23 グレム(スタンダードタイプ)
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ディズニー カーズ トミカ C-24 エーサー(スタンダードタイプ)
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