日本盤がリリースされておらず、それどころかAmazonでもオリジナル盤が購入できず、日本からはiTunesでダウンロードすることもできないという入手困難っぷりですが、せっかくプロモ盤をもらったのでレビューしてみたいと思います。
1. 血ノ舞 - Chi No Odori
そう、フィンランドの侍メタルバンド「Whispered」の3rdアルバム「Metsutan - Songs Of The Void」です。Whisperedについてはもうこのブログでも何度も書いているので過去ログか以下のvsmediaの記事をご覧下さい。ちなみに先日来日公演が確定して以降、ありがたいことにこのライブレポ記事もPVがまた上がっております。
Whisperedは”侍メロディックデスメタル”を標榜していますが、「Metsutan - Songs Of The Void」に関しては”デス”部分がより強まり、さらに各曲ともやたらと壮大な構成が増え、メロディックデスメタルと言うより「”エピック”デスメタル」と言った方がしっくりくる作風となっています。前作、前々作と同様にクサメタル的フレーズもあるにはあるのですが、それも所々にちりばめられている程度に留まっており、とにかく本作は「暗く、重く、壮大」な印象が目立ちます。収録曲は以下のとおりですが…
2. Strike! (シングルカット)
3. Exile of the Floating World 4. Sakura Omen(シングルカット)
5. 劍聖 - Kensei
6. Our Voice Shall Be Heard
7. 月明 - Tsukiakari
8. Warriors of Yama
9. Victory Grounds Nothing
10. Bloodred Shores of Enoshima
Act 1. 五頭龍 - Gozuryu
Act 2. The Chord of a Goddess
Act 3. Divine Affection
Act 4. The Fury of the Five
Act 5. 龍口山 - Tatsu-no-kuchi yama
このうち、3曲目の「Exile of the Floating World」は月岡芳年の絵にインスパイアされた曲で、5曲目の「劍聖 - Kensei」のモチーフは宮本武蔵の決闘、7曲目の「月明 - Tsukiakari」は陰腹を切って悪逆君主を諌める家臣の曲だとか。ちなみにフロントマンでギター&ヴォーカルのヨウニさんは三池崇史監督版の「十三人の刺客」が好きだそうで、もしかしたらその冒頭をイメージしたのかもしれません。もうこのモチーフを見ただけでも、そりゃ暗く、重く、壮大になるだろうなあ…という気がします。中でも最も壮大な構成なのが最後に収録されている10分越えの大作「Bloodred Shores of Enoshima」。これはラインナップ上では1曲の扱いになっていますが実際は全5曲から成る組曲で、聖飢魔Ⅱに例えるなら悪魔組曲みたいなもんですが、これのモチーフは鎌倉の「五頭龍」。粗暴で村民を苦しめてばかりいた五つの頭を持つ龍が天から舞い降りてきた弁財天に一目惚れし、彼女に愛されるために善良な竜神になるも、そのためにどんどん弱っていき最後に死んで山に姿を変えるという悲恋の伝説です。これがもう力作中の力作でどこを切っても聴きどころ満載なんですが、なんでまた五頭龍伝説をテーマに選んだのか気になって仕方がありません。だってこの話を知ってる人なんて日本人だってせいぜい鎌倉・江ノ島の地元民か江ノ島弁財天に行ったことのある人ぐらいですよね?ぶっちゃけご当地昔話なんだから。ライブ観に行った時に聞いておけばよかった。
全体的に初期の頃にあった「侍」とか「武士道」とか”いかにも西洋人が好みそうな日本”はすっかり鳴りを潜め、テーマも楽曲も1曲ごとにより深く掘り下げ作り込んでいる印象です。というか前作のシングルが「Jikininki」(食人鬼)だったり本作のメインモチーフが五頭龍だったりと最近は侍メタルというより妖怪メタルな感じになってきましたね。楽曲に関しては確実に陰陽座より妖怪度が高いです。
ちなみにフロントマンのヨウニさんは根っからのゲーマーで個人でゲームBGMの楽曲製作も行っていたりします。もし彼らとコラボしたい、または彼らの楽曲を使用したいというゲーム業界の方がいらっしゃいましたら是非連絡を取ってあげて下さい。あと日本コロムビアは「Metsutan - Songs Of The Void」の日本盤も早くリリースして下さい。
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