「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を観て以降、”ディストピアSF映画”を改めて観ているんですが、数あるディストピア映画の中で突出して奇妙な雰囲気を持っているのがこの「未来惑星ザルドス」(原題:Zardoz)だと思います。なぜ奇妙なのか?それはテーマは高尚なのに画面はチープで、さらに主演のショーン・コネリーの衣装がどう見てもどうかしているのです。
ハゲ、ひげ、おさげ、ふんどし、ニーハイブーツってなにこれ?笑わそうとしてんのか。
本作の製作予算はわずか100万ドルで、金がなさ過ぎてロケ地が監督の家とその近所のみ、SF映画だというのに合成処理もなく、使用している主な小道具がビニールシートという有様。金がなかったから布面積が少ないんですかね?
ストーリーの舞台は、人類が金持ちや政治家、科学者、エリートらで構成された不老不死の「エターナル」と、生老病死のある普通の人間「ブルータルズ」という階級に完全に二極化した2293年の未来。劇中で明確には描かれていませんが、何らかの理由により文明は一度崩壊しており、「ブルータルズ」は汚染され荒廃した旧文明の廃墟に住み、エターナルのために農作物を作り献上しています。 2つのグループは決して交わることはありませんが、唯一の接点は「ザルドス」と呼ばれる巨大な空を飛ぶ石の頭。 エターナルはこの「ザルドス」を操りブルータルズたちにこれを神様だと信じ込ませ、農作物を受け取る代わりにブルータルズに様々な武器を渡します。 そして彼らの中から選ばれた少数の「エクスターミネイター」達が、ブルータルズ達の人口が増え過ぎず、また減り過ぎないように武器を使って殺したり、適宜女性のブルータルズをレイプしたりして管理しています。ところが、そのエクスターミネイターの中にたった一人だけ神であるザルドスの存在に疑問を抱いた者「ゼット」(ショーン・コネリー)が現れました。
ストーリーの設定は分かりやす過ぎるくらいに現代社会の風刺です。本作は1974年の作品ですが、むしろ現在の方がよりリアルに感じられるのではないでしょうか。しかし本作は「社会の二極化はよくない!」という明確な主張ではなく、「金持ちとインテリだけ集めてもユートピアにはならない」という人間社会の難しさと不老不死の問題点を描いています。もともとエターナル達は、環境破壊や戦争から人類の知恵や文化、文明を守るために作られたコミュニティでした。ところが、肝心のエターナル達はすっかり生きることに飽きていて生気がなく、何の欲望も持てず、終わりの無い人生に絶望した人は虚無に囚われた生ける屍となるか、ブチ切れてコミュニティの理念に反する言動をするかのどちらか。こうした異分子は厳しく罰せられ、その刑罰はなんと「加齢」。強制的に加齢された”悪”老人達は離れの洋館にまとめて隔離されているのですが、これがもう特別養護老人ホームそのもの。叫んだり暴れたりするクソジジイとクソババアしかいない特養ホームというまさに地獄絵図で、高齢化社会への痛烈な風刺を描いています。結局、選りすぐりのエリートを集めて理想的な社会を作ろうとしたところで体制が体制である限り腐敗からは逃れられず、平等なコミュニティを作ろうとしても最終的には全体主義に落ち着いてしまうということでしょうか。
そんな平和地獄に、エクスターミネイターの中で例外的に「疑問」に目覚めてしまったゼットがザルドスに潜み迷い込んできました。すると暴力欲と性欲にのみ従って生きているゼットにエターナルズ達が影響され、徐々にエロスとタナトスを取り戻していきます。一方ゼットもエターナルズ達と過ごすうちに教養を身に付けていくのですが、ある日旧文明の図書館の廃墟で「The Wonderful Wizard of Oz」(オズの魔法使い)を見つけ、「Zardoz(ザルドス)」という名の語源と、この世界が全て仕組まれた嘘だったということを知ってしまいます。
改めて本作を見て気付いたのですが、本作の設定と主題はピクサー映画「ウォーリー」とほぼ同じです。どちらもディストピア映画で、「ザルドス」に於けるブルータルズの世界が「ウォーリー」の地球に、エターナルズの世界が避難船に相当すると言えるでしょう。もっとも「ザルドス」のラストは大殺戮で「ウォーリー」のラストは大団円とまるっきり違いますが。その主題とは「無気力に囚われてはならない」。それをロボットで気付かせるあたりがピクサー流の皮肉でしょうか。ちなみに「ザルドス」は最低映画アワード「ゴールデンラスベリー賞」の創設者であるジョン・ウィルソンの著書「The 100 Most Enjoyably Bad Movies Ever」(最も面白いダメ映画100選)に選出されています。褒められてるの貶されてるのか分からん。
ハゲ、ひげ、おさげ、ふんどし、ニーハイブーツってなにこれ?笑わそうとしてんのか。
本作の製作予算はわずか100万ドルで、金がなさ過ぎてロケ地が監督の家とその近所のみ、SF映画だというのに合成処理もなく、使用している主な小道具がビニールシートという有様。金がなかったから布面積が少ないんですかね?
ストーリーの舞台は、人類が金持ちや政治家、科学者、エリートらで構成された不老不死の「エターナル」と、生老病死のある普通の人間「ブルータルズ」という階級に完全に二極化した2293年の未来。劇中で明確には描かれていませんが、何らかの理由により文明は一度崩壊しており、「ブルータルズ」は汚染され荒廃した旧文明の廃墟に住み、エターナルのために農作物を作り献上しています。 2つのグループは決して交わることはありませんが、唯一の接点は「ザルドス」と呼ばれる巨大な空を飛ぶ石の頭。 エターナルはこの「ザルドス」を操りブルータルズたちにこれを神様だと信じ込ませ、農作物を受け取る代わりにブルータルズに様々な武器を渡します。 そして彼らの中から選ばれた少数の「エクスターミネイター」達が、ブルータルズ達の人口が増え過ぎず、また減り過ぎないように武器を使って殺したり、適宜女性のブルータルズをレイプしたりして管理しています。ところが、そのエクスターミネイターの中にたった一人だけ神であるザルドスの存在に疑問を抱いた者「ゼット」(ショーン・コネリー)が現れました。
ストーリーの設定は分かりやす過ぎるくらいに現代社会の風刺です。本作は1974年の作品ですが、むしろ現在の方がよりリアルに感じられるのではないでしょうか。しかし本作は「社会の二極化はよくない!」という明確な主張ではなく、「金持ちとインテリだけ集めてもユートピアにはならない」という人間社会の難しさと不老不死の問題点を描いています。もともとエターナル達は、環境破壊や戦争から人類の知恵や文化、文明を守るために作られたコミュニティでした。ところが、肝心のエターナル達はすっかり生きることに飽きていて生気がなく、何の欲望も持てず、終わりの無い人生に絶望した人は虚無に囚われた生ける屍となるか、ブチ切れてコミュニティの理念に反する言動をするかのどちらか。こうした異分子は厳しく罰せられ、その刑罰はなんと「加齢」。強制的に加齢された”悪”老人達は離れの洋館にまとめて隔離されているのですが、これがもう特別養護老人ホームそのもの。叫んだり暴れたりするクソジジイとクソババアしかいない特養ホームというまさに地獄絵図で、高齢化社会への痛烈な風刺を描いています。結局、選りすぐりのエリートを集めて理想的な社会を作ろうとしたところで体制が体制である限り腐敗からは逃れられず、平等なコミュニティを作ろうとしても最終的には全体主義に落ち着いてしまうということでしょうか。
そんな平和地獄に、エクスターミネイターの中で例外的に「疑問」に目覚めてしまったゼットがザルドスに潜み迷い込んできました。すると暴力欲と性欲にのみ従って生きているゼットにエターナルズ達が影響され、徐々にエロスとタナトスを取り戻していきます。一方ゼットもエターナルズ達と過ごすうちに教養を身に付けていくのですが、ある日旧文明の図書館の廃墟で「The Wonderful Wizard of Oz」(オズの魔法使い)を見つけ、「Zardoz(ザルドス)」という名の語源と、この世界が全て仕組まれた嘘だったということを知ってしまいます。
改めて本作を見て気付いたのですが、本作の設定と主題はピクサー映画「ウォーリー」とほぼ同じです。どちらもディストピア映画で、「ザルドス」に於けるブルータルズの世界が「ウォーリー」の地球に、エターナルズの世界が避難船に相当すると言えるでしょう。もっとも「ザルドス」のラストは大殺戮で「ウォーリー」のラストは大団円とまるっきり違いますが。その主題とは「無気力に囚われてはならない」。それをロボットで気付かせるあたりがピクサー流の皮肉でしょうか。ちなみに「ザルドス」は最低映画アワード「ゴールデンラスベリー賞」の創設者であるジョン・ウィルソンの著書「The 100 Most Enjoyably Bad Movies Ever」(最も面白いダメ映画100選)に選出されています。褒められてるの貶されてるのか分からん。
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