42 ~世界を変えた男~ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産)/ワーナー・ホーム・ビデオ
¥4,093
Amazon.co.jp

この映画を初めて見たのは昨年フランス・パリに行った時の帰りの飛行機の中で、当時はまだ日本公開のスケジュールも公開されておらず当然字幕も吹き替えも無い状態だったのですが、それでもストーリーが全部分かるというどストレートな内容でした。
本作は、米メジャリーグ初の黒人選手であるジャッキー・ロビンソンの伝記映画で、彼が一番最初に出場した1947年のワンシーズンだけを描いています。当時のアメリカ野球界は、白人のみが出場するメジャーリーグと黒人のみが出場するニグロリーグとに分けられていました。それどころか学校や店、バス、公衆トイレ、公園のベンチなどありとあらゆるものが「人種隔離法」により分けられていました。ところがそんな中、ブルックリン・ドジャースのジェネラル・マネージャーであるブランチ・リッキーは「最近ブルックリンにも黒人が増えて彼らの所得も上がってるからチームに誰か黒人選手を入れろ。そうすれば話題になるし黒人の客が増えて儲かる」と言い出します。当然経営陣からもチームからもリーグからも大反対を喰らいますが、リッキーは強引にニグロリーグで活躍していたジャッキー・ロビンソンを入団させます。しかし当然チームメイトもファンも相手チームもブーイングの嵐で差別の少ない北部でさえ試合中何度もガチで殺されかけ、南部では試合中に保安官が銃を持って乱入する始末。ところがリッキーは「どんなことがあっても絶対キレない。反撃しない」とジャッキーに約束させ、ただ淡々と己のやるべきことをやるよう諭します。

この「ただ黙って理不尽に耐える」という描写こそが本作の要ではないかと思いました。もしジャッキーが差別に反撃したら、「ほらやっぱり黒人は野蛮だ」と言われ結局差別と偏見は続き、他の黒人選手や子供達の夢も全部潰えてしまう。だからジャッキーはどんなことがあっても一人で耐えると決心し、リッキーも彼を守り抜きます(後にリッキーはジャッキーを入団させた本当の理由を語りますがそれは本編を見てのお楽しみ)。すると、徐々にチームメイトの態度が変化していき、遂にセカンドの選手がジャッキーに汚いヤジを飛ばす相手チームの監督の正面に立ち「ジャッキーが何を言われても言い返せないのを知っててこんなこと言いやがって!てめえふざけんなこの卑怯者!」と怒鳴りつけます。これをきっかけに他の白人選手の心も一気にジャッキーに集まり、やがてそれが観客や相手チームにも”伝染”していきます。

本作の面白い点は「ジャッキー・ロビンソンはヒーローでした!ブランチ・リッキーは名GMでした!」という偉人を描いた作品ではないということです。ジャッキーもリッキーもただ耐えているだけだけれども、周囲の人々がそれを見て自分自身の行いを恥じ、どんどん変化していくという構図。おそらくジャッキーとリッキーはガンジーの「非暴力非服従」を実践したのではないでしょうか。両者がガンジーを知っていたかどうかは分かりませんが。後にキング牧師もガンジーの影響から非暴力不服従を掲げ公民権運動を行いますが、それは60年代に入ってから。なんと両者はキング牧師の活動を10年以上も先取りしていたことになる。ジャッキーとリッキーが成し遂げた偉業がいかに”早かったか”にとにかく驚かされます。


ジャッキー・ロビンソン―人種差別をのりこえたメジャーリーガー/汐文社
¥1,620
Amazon.co.jp