つづき
「第8回横浜トリエンナーレ」
野草:いま、ここで生きてる
②横浜美術館
⚫︎マシュ―・ハリス
先住民族アボリジニを先祖にもつ作家の作品は
研究目的のために持ち去られた
アボリジニの人々の遺骨が
白い箱に入って博物館の所蔵庫に並んでいる風景。
一見するとなんの表情もない
無機質な平面作品から
静かな怒りと
先住民族としての誇りが
聞こえてくるよう。
世界中で今も鎮まらない
多くの差別、
そこから生まれる暴力と戦争。
パンデミックの中で
エッセンシャルワーカーとして働く
非正規移民たちが
正当な手当と市民権を求めて立ち上がる。
人種、移民、宗教、LGBT
その映像を収めた作品が多く見られた。
⚫︎尾竹永子
福島の放射能汚染立ち入り禁止地区の周辺を
作家が巡る映像作品。
草木に覆われた廃墟廃屋と同化するかのような
作家の姿。
まだ問題はなにも終わっていない。
⚫︎富山妙子
炭鉱や鉱山の過酷な環境下で
名もなき「野草」のように働く労働者たち。
そして中南米をはじめ
世界をめぐる中で目にした不平等と不公平。
社会の矛盾と向き合い続けた作家の
力強い作品たち。
⚫︎ジャオ・ウェンリアン 趙文量
毛沢東による文化大革命が
芸術家たちの表現活動を制限、
糾弾された不幸な時代の中で
静かに密やかに描かれた
風景画や人物画たち。
受容するしかない社会への諦念と
それでも描いていくしかない
芸術家として消すことのできない深い性のようなものが
抑制された色彩から感じずにはいられない。
つづく